Episode13 Emperor vs Empress
うーん、どうも戦闘描写があっさりしているような………。
さて、悠一と美咲の戦闘回、お楽しみ下さい。
廃工場内に金属音と発砲音が鳴り響く。辺りは三日連続で戦闘があったのでめちゃくちゃな状態である。そんな場で紅崎は物陰に飛び込む。
(マズいな…………相性が悪すぎる………)
先程から美咲の射撃は的確で紅崎はうまく近づけないでいた。近づけない為に攻撃出来ず、ただ撃たれるだけだった。
「このまま隠れていてもいずれやられるぞ」
「分かっているさ。だけど、対処法がそう簡単に浮かばないだろ」
「……………いや、一つだけ打開策がある」
「本当か?」
「強攻策だがJusticeの力を使え」
「…………確かに、それしか無さそうだな」
気がつけば先程から鳴り響いていた射撃音も止んでいる。チャンスは今しかない。そう判断し、紅崎はカードをスキャンした。
同時刻、美咲も打開策を探っていた。
(物陰に飛び込む、か。面倒な事をしてくれるわね)
そんな風に考えているとEmpressが話しかけてきた。
「まったく、男なら正面から正々堂々と闘いなさいよ」
「あのねぇ、そんなバカな闘い方をする訳ないでしょ」
「分からないわよ。アイツ、あなたと違って結構まっすぐな子だからするかもしれないわよ」
「……………ちょっと待ちなさい。それじゃ、まるで私がひねくれ者って言ってるみたいじゃない」
「あら、口で言わなきゃ分からないかしら。まったく、美咲は素直じゃないんだから」
「うっさい。それより、これ以上撃っていても無駄みたいだし、一気に決めさせてもらうわよ」
「了解、派手にぶっ放すわけね」
作戦も決まり美咲もまた、カードをスキャンした。
「Approve Justice」
「Approve The Chariot」
同時にカードをスキャンし、その音声が廃工場内に鳴り響く。
お互いに一撃で相手を倒す為に神経を尖らせ、己の得物を握る。
が。
突如、紅崎に異変が起きた。
「うっ、ぐっ、あああああああ!!」
全身に走る激痛と痺れ。それが紅崎の身体を蝕む。当然、紅崎と繋がっているEmperorにもダメージはある。
(やはり………まだ完全に使いこなせぬか)
いくらコネクターだから一般人よりも丈夫であるとはいえ、人間であるということに変わりない。先程からの連戦で疲労している身体と疲弊しきった精神状態ではアルカナムの強すぎる力を制御するのは難しい。
強すぎる力は制御出来なければ、いずれその身を滅ぼす。
まさしく今の紅崎がその状態だった。とはいえ、今は戦闘中。この絶好のチャンスを見過ごすほどEmpressは甘くない。
が、美咲は違った。突如現れた紅崎の異変に戸惑う。
『ねぇ、アレ何が起きているの?』
『ただの力の暴走よ。あなたが気にする事ではないわ』
『そんな………暴走だなんて…………』
『何を戸惑っているの。絶好のチャンスなんだから早く撃ちなさい』
美咲も頭では分かっている。お互いに譲れないモノがあるから、こうして闘うことになった。
だからこそ、今も苦しみ動けないままの紅崎を撃つことにした。
「……………………………ゴメン、ね」
そう呟かれた謝罪の言葉と共に二丁の拳銃から放たれた多数の銃弾は真っ直ぐに紅崎を撃ち抜いた。
「がっ、はっ」
胸部に衝撃が走り、紅崎の肺から空気が押し出されて呼吸出来なくなる。
「ちくしょ、うっ」
紅崎はそんな悔しさを噛み締めながら吹き飛んだ。
壁の崩れる音が止まると、廃工場にはいつも通りの静寂が広がっていた。