Episode11 vs Justice
「ここに………奴が…………」
「あぁ、奴はすぐ近くに潜んでいるだろう。油断することになよ、悠一」
「分かってる、そっちこそサポート頼むぞ」
放課後、アルカナムを封印する為に廃工場へ来た紅崎とEmperor。
ここは既に戦場である。戦場では僅かな油断が死に直結する。
「当然、あの娘も来てるだろうな………」
ふと思い出すのは自分達を救った少女。おそらく、自分と同じコネクターだろう。そう簡単に分かり合えるとは想っていないが、同じ境遇の者同士協力したいのが本心だ。
「同じコネクターならもしかしたら……」
Emperorも同じ心情なのだろう。普段のように断言しない。
「だが、今考えるべきことは奴−No.11・Justiceについてだろうな。意味は正位置が公正や善意、逆位置が一方通行だ。強さで言えば中間に位置する。そう簡単に倒せる相手ではないぞ」
「そうだな………確かに、面倒みたいだなっ!?」
会話中にいきなり横へ跳ぶ紅崎。つい先程まで彼が居たところは−−−
「Emperorのコネクター、確認。消去」
−−−ズガァン!!という轟音と共にメイスによって完全に砕かれた。よく見れば直径4メートル程の大きさのクレーターが出来ていた。
そして、塵や埃などが立ち込める中には追い求める者−No.11・Justiceが居た。
「あれが…………」
「あぁ、No.11・Justiceだ」
「じゃあ、封印するとしますか」
そう言って紅崎は相棒(Emperor)を取り出す。同時に左腕にカードリーダーが装着され、No.4・The Emperorをスキャンする。
「Break through」
という音声と共に紅崎は光に包まれる。光が収まると鎧を纏い、剣を構える。その姿はさながら騎士のようだった。
互いに向き合い、飛び込むタイミングを探り合う。
先に動いたのはJusticeだった。あっという間に距離を縮めると紅崎をメイスで叩き潰そうとする。それに対し、紅崎は冷静に対処する。剣でメイスを弾き、逆に斬りかかる。
が、相手が悪かった。いくら帝の力で強化されているとは言え、相手は人外の怪物であるアルカナムだ。剣で斬ったところで大したダメージが入る訳でもない。それに相手の強さは中級クラス。
(ダメージが全く与えられない。ちょいとショックだな)
当然、紅崎だってMagicianの時とは違って簡単に勝てると思っている訳ではない。頭では分かっていても、こうやって現実を見ると精神的に来るモノがある。
ガキィン!!という音が鳴り響く。
「ヤバッ!?」
そんな風に弱気になっていた時、メイスの一振りで剣を弾き飛ばされる。弾き飛ばされた得物を拾おうとするが、その隙をJusticeが見逃す訳なく胴打ちで剣とは反対の方向へ飛ばされる。
「がっ、ぁぁぁぁぁぁぁ」
痛みに耐えられず、紅崎は絶叫しながら地面を転がる。
起き上がろうとすると脇腹に鋭い痛みが走る。痛みで動けない紅崎をJusticeは首に手をかけて持ち上げる。
かなりの怪力で紅崎の力ではどうしようもない。
その時−。
パァン!!という乾いた音が響いた。
すると、首を締める力が一瞬弱まった。すかさず紅崎はJusticeから離れて、弾き飛ばされたままの剣を拾う。音がした方向には件と少女が立っていた。少女は二丁の拳銃を構えるとJusticeが持つメイスを正確に撃ち抜き、弾き飛ばす。Justiceは突然の乱入者と自分の得物を失った事で僅かに怯む。その隙を紅崎は見逃さず、
「さっきのお返しだ!!」
「Approve Magician・Strength」
封印してある二枚のカードをスキャンし、炎を纏った剣でJusticeを一閃する。その後も何度か斬るとMagicianを封印した時と同じような刻印が現れる。すかさず紅崎は無地のカードを投げて封印する。戻ってきたカードにはNo.11・Justiceと記されていた。
封印が完了して振り向くと、乱入してきた少女はまだ立っていた。
紅崎は礼を言う為に近づく。
「さっきは助けてくれてありがとう。君のお陰で封印出来た」
「……別にあなたを助ける為に撃った訳じゃない。…………言いたい事はそれだけ?」
「あ〜、そうだ。君も俺と同じコネクターなら一緒に協力してアルカナムを封印出来ないかな?」
紅崎の申し出に少女の答えは−−−
「……………………ごめんなさい」
−−−銃弾による拒絶だった。