Episode9 それぞれの想い
という訳で長内を自宅に連れて来た。
今は治療が完了して帰るところである。
「治療ありがとね、悠一君」
「もう歩いて大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ。それに、これ以上は悠一君に「そんなこと気にするなよ。いつでも頼って良いんだぞ。長内は少し遠慮し過ぎだって」そっかぁ……うん、ありがとね。じゃあ、今度何かあったらまた頼るね」
「あぁ、分かった。それじゃ」
「うん、バイバイ」
そう言って長内は帰った。アルカナムの事を知られたのは痛い。そして、コネクターの事も。
『……気丈に振る舞っていたな』
『あぁ、かなり無理していたな。まだ痛いはずなのに………それに怖いはずなのに。ちゃんと俺が支えないと………』
『そう悲観的になる必要はない。それにもう一人のコネクターも現れたことだ。今はそちらを考えるべきだ』
『あの子は俺や長内を助けてくれたけど、仲間になれるのか?』
『難しいところだな。だが、彼女はアルカナムとの闘いに一般人を巻き込まないように闘っていた。それだけは断言できる』
『そうだな。………俺もあんな風に闘えるようにならないと……』
(そうだ、こんな事にあいつらを巻き込む必要ない。俺がやらなきゃいけないんだ。もっと……もっと強くならないと………誰も傷つかなくて良いように……俺が……皆を護れるくらい………)
所変わって廃工場内。
「逃げられちゃったか………」
ポツリと一人の少女が呟く。周囲は闘った痕跡が残っているが、今は静寂。その空間に少女とは別の声が響く。
「良かったの?あのコネクターを助けちゃったけど」
母というよりは妹を心配する姉のような大人びた声色だった。
「良いの。あの娘は無関係だよ、そんな娘を巻き込んじゃ駄目でしょ。私達の目的はアルカナムの封印とコネクターを倒すだけよ」
「そう………なら良いんだけど。確かにNo.3・The Empressの正位置は実り、貴女の選んだ行動が幸運に繋がることを願うだけね」
「えぇ、間違っても逆位置の解釈である停滞による失敗にならないようにしないとね」
「任せなさい。その為に他のカードもあるでしょ」
「ありがとね。これからもよろしくね、Empress」
「こちらこそ頼むわ、美咲」
会話が終わり辺りは再び静寂に包まれる。だが、少女−−美咲は虚空を見つめて動こうとしない。
「悠一………ね。あの娘にとって大事な人みたい。でも………私は………」
そう呟きながら苦悩する。あの人を倒すということはコネクターとは無関係なあの娘を悲しませることになってしまう。
が、自分にも譲れないモノがある。
自分の為か、それとも無関係な娘の為か。
「全く、馬鹿げている……。答えなんて最初から決まっているわ」
ふと浮かんだ邪念を消して、彼女は廃工場から消えた。
「私は迷ってる暇なんて無いんだ。全ては……美穂の為、それ以外のことを私が望んで良い訳がない。だからこそ………悠一、今度は……………」
自分が闘う理由を再確認しながら。




