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短いお話

霊のメカニズム

作者: 夕部空波 


 昼休みだ。学校の中で一番自由で、誰もが、授業の終わりに歓喜に沸きあがる時間――――は、言い過ぎか…。でも、それほど、うれしい時間だというのには変わりない。


 階段を駆け上がり、扉を開ける。昼や休みになると僕はいつも、屋上へ行くのだ。何故か

どんなタイミングに行っても、ほかの客がいないのだ。だから、屋上は僕と飛翔(つばさ)の貸切なのだ。


 勢い良く、扉を開け、屋上へ転がるようにして、上がる。


 ギラギラと太陽の光が身体にあたる。青い空に眩しい白い雲。引いたと思った汗が再び、吹き出す。もうすぐで夏が来る。まだまだ、湿気を含んだ生暖かい風が、僕の背中をぐぅっと押す。


 髪を抑え、飛翔を探す。もう一つの出入り口の陰に、地毛にしては有り得ない、白髪に近い銀色の髪が風になびき、太陽の光で輝く髪が目に入った。


どうやら、日陰に座っているようだ。


「オッス」


公売で買ったであろう、焼きそばパンを口に含んだまま飛翔がもごもごといった。


 クウォーターで、ロシア人の血を引く飛翔。白に近い銀色に若干青交じりの瞳。白い肌。パッと見女の子に近いかなり美形の男子生徒。だが、以外にも、霊感が強く、霊が見える、触れる、取りつかれる、えるれるれるの超ハイスペックの体だ。

 

 ちなみに僕も、幼いころから霊が見えていた。しかし、昔は水にぬれたくもりガラス越しから見る人のようにぼんやりとその実態しか見えなかったのだが、飛翔の影響か結構霊が見えるようになってしまっている。それはそれでいいのだが…


『遅いな、(れん)。どういう神経してるんだよ』


別にどうもしてないよ、と言い返したいところだがぐっと我慢してその言葉を飲み込む。

 

 今のは、飛翔に取り付いている、霊の一人で最近ではやたら僕に興味を示し、触れないのに(僕の霊感があまり強くないから、かな)つんつんしてくる。(霊は男だ)そして、僕の昼ご飯を横から食べようとしてくる。手とかお構いなしに、バクリとかみついてくるので、毎回驚いてしまい、それを笑われる。それが悔しくて、ムカついて、この霊(因みに名前はユウスケとかなんとか。名前で呼んだことなど一度もない)がいるときは、近くで昼ご飯を食べないようにしているのだ。


 無言で、急いでカレーパンを食べる。ついでに、このカレーパンは公売で買うなどしないで昼休みになったら2丁目の裏通り・函体通り(かんたいどおり)(意味がよくわからない名前だ)の『こんがり・BAKERI』の限定100個発売のカレーパンだ。これがまた美味しかったりする。


 味わいながら、しかし、急ぎながらカレーパンを食べる。パリッと上がったパンにほんのり辛いカレーがぴったりのカレーパン。みんなに教えてあげたいが、限定100個なので教えてなど、いない。


 最後の一口を口に放り込み、やっとの思いで、飛翔に近寄った。


「よぉっ。やっと食べ終わったか。それ」


「それとか言うな。限定100個だぞ。毎回買いに行くの大変なんだ」


「じゃ、公売でいいじゃん。安いし。一個280円。」


「宣伝どうも、ありがとう。でも、500円払っても、僕はあそこのカレーパンがいいんだ」


「あっそ」


 飛翔はモテル。まず、クウォーター、てだけでも女の子が寄ってくるしそれプラスこの容姿だ。普通に、カッコいい。成績も悪いってわけではないし、運動神経など、天才だ。どんなものでも、ルールと構え、道具の使い方など覚えれば一瞬のうちにコーチになっている。それほど、運動神経はよく、カッコいい。おまけに料理上手だ。


 幼いのころに母親を亡くした父子家庭。(父親は普通の日本人だ。)そのためか、飛翔は異常なファザコンにたまになってしまう(たまに、というのは,しょっちゅうでは無く父親の話などが上がったり重大な決断をしたりする場合だけだから)。そこが、玉に瑕なのだ。(と、女子から話しを聞いた)


「でさぁ、こいつ、早く成仏させてよ」


僕が言った。もちろん、こいつとはユウスケとかいう霊だ。


「できたらやってるよ。俺も迷惑してるんだぜ?こいつ、俺が風呂に入ってるときとか、行き成り窓から入ってくるんだ。こいつが女じゃなくてよかった、て、何度思ったことか…」


と言いながら、肩をすくめる。僕は苦笑しながら飛翔を眺める。


「でもできるでしょ。この前、憑いてたちっさな女の子。いつの間にか成仏したジャン」


「あれは、俺も知らない間に成仏してたんだ。何かな?親が迎えにでも来たのか?あいつの親、同じ交通事故で死んだって言ってたから」


そういい、飛翔が苺・オレを飲み干す。クチャッと紙パックがつぶれた。


「ふーん。…飛翔。こんな時言うのもあれだけどまた新しい人憑いてるよ。」


 僕が言った。新しく憑いているのは、白いワンピースを着た、髪の長い(色は黒)パッと見16歳ぐらいの女の子。


「ホントだ。…ねぇ、君。名前は?」


結構きれいな女の子。というのは、つらいか。女の子ではなく、女性と言い直す。


 一応言っておくが、僕も、飛翔も16歳。高校2年生だ。


『あ、あたしのこと?あたしは、真美。しばらく、ごちになりまーす』


そういい、空手の構えのオッスという風に手を動かす。お淑やかの顔と正反対に性格は結構はじけているようだ。


「ごちになるって、どういう意味?」


飛翔が言った。


『え、自分の体のことなのに知らないの?あたしたち、幽霊はね。簡単に成仏できるのと、時間がかかる、霊がいるの。ま、時間がかかるっていうのは大方、自地縛霊とか、未練があるとか…。そんな霊ね。んで、時間がかかる霊は未練みたいのが達成されると簡単に天国に行けるってわけじゃないの。実はね…』


「ストップ!!」


僕が止めにかかった。急にぺらぺらと話し出されても意味が分からない。つまり、霊には2種類いて、死んですぐ天国に行く霊と死んでも、未練とかなんとかある霊。で、この未練のある霊の未練が達成?されると、すぐに天国に行けるんじゃなくて…。ということだ。うん。いいぞ。どんと来い!


「いいよ。続き」


『自分勝手ね。ま、いいや。で、実はね、霊はこの世にいていい時間って決まっているの。小さければ小さいほど、時間は伸びるけど、年取ればその分時間が縮むの。例えば、生まれてすぐ死んじゃった子っていうのは、大人の霊と一緒にあの世に行くの。一人では動けないから。それに引き換えて、年寄りはすぐに行くの。未練がない人が多いから。でも、たまに未練がある人がいるのね。そういう人には、あの世に行く前に未練を達成させなくちゃいけないの。しかも、一年で。基本的に60歳以上の人が一年の猶予が与えられるの。60歳以上の人は、ていうか、霊っていうのはこの世にいちゃいけない存在なの。この世から拒絶されている存在。生きていない。血も流さないし、脈も打っていない。生きている世界からは、拒絶される。なるべく早く、霊っていうのはあの世にいかなくてはいけない存在なのよ。ここまでは、オケー?』


うん、と二人でうなずく。


『だから、未練を達成させるためには、その時間内にやらなくちゃいけないの。さっきも言ったけど、60歳以上は1年以内。そっから、10歳単位で50代は2年。40代は3年。と言って風に伸びていくの。20歳未満は15年ぐらい、あるわ。つまり、子どものうちに死んじゃったら5年から15年の間で未練を達成しなくちゃいけない。ま、霊になったら、体の成長とか全部止まっちゃうんだけどね。一応、子供の時に死んだら、20歳になるまで時間はある。因みにあたしは16歳の時に死んだの。3年前。』


ふーんと言った。予想通りだな。


『あたしの時間は残り1年。でもね、3年で未練、達成されたの。それでね!!もうすぐ迎えが来るけど、それまで、使い果たした霊の力を修復するために霊感の強い人に憑くの。それで、その人の霊感をね、じわじわと体の中に取り込んで、満腹になったら、あの世に行けるの!!』


ああ、つまり、未練を達成するには霊の力を使う、てことか。ん?待てよ。


 霊の力?


「ちょっと、ストップ!」


『また?今度は何?』


「今度は質問。霊の力って、何?」


「あ、確かに」


いや気づけよ、飛翔。


『まんまよ。霊の力。つまり、霊力。こうやってね、手にぐっと力入れると…』


ぼんやり、青いボールみたいのが見えてきた。薄らと光を発している。


『ほら、霊力弾(れいりょくだん。これをね、身体に纏うと』


纏うっていうのは、霊力弾を頭に当てることらしい。


 当てた瞬間から、頭、目、鼻、口。徐々に、半透明の体が本物の体に変わっていった。


「えっ!」


「すごっ…」


「じゃーん!!これをやって、未練を達成させるのよ。ま、死んでいる人間が生き返っているわけではなく、この姿が見えるのも、霊感を持つ人間のみ。普通の人には見えないのよ。触れないしね。」


そういわれたので、僕と飛翔は手を伸ばした。しかし、手が触れる前に、上に飛ばれ触れることはできなかった。


「霊感がある人には触ることできるわよ!!無闇に乙女の体に触らないでね!!」


そう言われたが、触れっていう雰囲気だった気がするのは気のせいなのだろうか。


「で?」


飛翔が言った。


「そうしてどうなんの?」


一瞬の沈黙。


「この姿で未練を達成するの。でも、これをすると霊力が減って倒れそうになるの。んで、これがひどくなったら、悪霊になっちゃうのよ。人に取り付いて、是が非でもあの世に行こうとしてね。ま、そうならないためには霊感が強い人に取り付くっていうのだ、一番いい方法なのよ。」


トンっと手をたたく。いつの間にか実態になっていた体ではなく本当の霊の体になっていた。


『さっきの姿では、この世のものに触れることができて身体能力がぐんっと上がる。あと、人一人に取り憑いていることができる霊の数は決まって1人。さっきの男はもう、あの世に行ったのよ。んで、あたしが貴方に取り憑いているの…ま、こんなもんよ。霊のメカニズムは』


ほぉっ、と感心した。いや、安心したってほうがいいのかもしれない。ユウスケが居なくなったことにか、今までどうして飛翔に取り憑いた霊が変わりばんこに変わる理由を知ってか。


 つまり、霊は霊感が強い人に取り付くってことだ。納得した。じゃ、この女の人もいつか消えて、また新しい人が飛翔に取り憑く。そう思うと、飛翔が少しかわいそうだが、別に、嫌がっている様子でもない。ならそれでいい。このままの日々が続けばいいのだ。


 横目で飛翔を見ると、納得の表情をしていた。これで、ユウスケの前に取り憑いていた幼い女の子が消えた理由というのが分かったからだろうか。安心したのか。溜息をついて、真美という女の霊を見た。


「教えてくれてサンキュウ―!」


飛び切りの笑顔だ。この笑顔に女の子は全員、落とされる。


『べ、別に。隠す必要もないし。』


 プイッと顔をそらす。耳がほんのりと赤かった。どうやら、飛翔の笑顔に落とされるのは霊とて例外ではなかったようだ。


 僕も、笑った。飛び切りの笑顔で。


*****


 今日が終わって。明日が来る。それも終わって、明後日が来る。日常は回っていく。飛翔の霊感はさらに強まり、霊が取り憑いた。日常は、いつもと変わらない。


どうでしたか~?


結構思いついてそのまま使ったのでつじつまが合ってないかもしれないです…。


感想・誤文字・変な表現などなど、お待ちしています。

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