表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: イソジン
3/3

余白

部屋の中は、静かだった。

時計の音が、一定の速度で続いている。

蛍光灯の白い光が、壁に淡い影を落としていた。

机の上にはノートが一冊。

ページの端がわずかに波打ち、紙の繊維が柔らかくほどけている。


カーテンの隙間から、風が入る。

その流れに合わせて、ページが一枚だけめくれた。

音は小さく、けれど確かに響いた。

誰もいないはずの部屋の中で、

空気だけが、何かを覚えているようだった。


外では光が動いている。

雲の形が変わり、道を歩く人の影が伸びていく。

遠くから笑い声が聞こえ、

それが窓の隙間をすり抜けて、部屋に届いた。


その音に反応するように、

机の上のマグカップがわずかに揺れた。

中には何も入っていない。

けれど、その底に残る輪の跡が、

時間の形を残していた。


風が止む。

ページも、影も、音も、静かになる。

それでも光だけは動いていた。

壁の上を、床の上を、ゆっくりと移動していく。


やがて、

光は部屋の中央を抜けて、

誰もいない椅子の脚を照らした。

そこにはもう、形も声もない。

けれど、確かに“いた”という記憶だけが、

空気の中に、淡く残っていた。


そしてまた、静寂が戻る。

時計の音が、一定の速度で続いている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ