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学級委員会

 ま、しかし、落ち着いて考えてみれば、相棒との相性なんて小さなことだ、と、千紗は思い直した。要は、学級委員会に出られればよいのだから。

 そんな事を思いながら、会議室に入ると、千紗は、改めて自分が最上級生になったことを、実感した。何しろ、上級生が一人もいないのだ。これはかなり、すがすがしい光景だった。


 迷わず、三年三組のカードが置かれた席に座る。四組の菊池たちは、千紗の後ろの席だ。かなり近いな、と思った。この距離だと、下らないおしゃべりなんぞも、出来そうだ。

 千紗は、早くも気の利いたジョークを菊池にかまし、盛り上がる自分を想像して、一人で、だらしのない笑みを浮かべた。そこへ、遅れて藤原新平が、会議室に入ってきた。

 新しい生徒会長である山崎と知り合いらしく、なにやら陽気に声を掛け合ってから、案外すんなりと隣に座った。


「山崎君と知り合い?」

千紗は、尋ねた。

「うん。去年、同じクラスだった。つっても、俺がここに転校してきたの、1月の終わりだったけどな」

「そっか、藤原君って、転校生だったのか」


 それで合点がいく、と、千紗は思った。どうりで、あんまり見かけない顔だったわけだ。

「と言うことはさ、藤原君って、転校してたった数ヶ月で、学級委員に選ばれたってこと?」

「まあね」

「へぇ、そりゃすごいね」

千紗が感心すると、藤原は馬鹿にしたように、鼻を鳴らした。

「別に、すごくなんかないだろ。三年生にもなって、学級委員になりたがるやつなんているか、受験もあるのに。まさか、人望があって選ばれたとか、思ってるわけ? 俺たち、おっつけられただけだぜ」

「まぁ…、それはそうだね」


 千紗は、なんだかしょんぼりしながら、返事をした。あまり知りたくない真実を突きつけられたことより、彼の口調の鋭さに、正直凹んだ。とにかくコンビを組んだんだから、それなりに仲良くやって行きたいと思う、千紗なのだ。


 藤原君は、あたしが嫌いなのかな。だとしたら、この半年は、お互い大変なことだ。嫌いなやつと一緒に学級委員をやるくらい、うんざりすることはないし、自分を嫌っている相手と、一緒に学級委員をやるのも、これまた、かなり気の重いことだ。




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