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第30話 解散

 師匠と会ってからどのくらい時間が経ったのだろう。エルフの王子を王のもとへ送り届ける今回の旅で、師匠と組んだパーティーは解散となる。私は一冒険者として様々な経験をさせてもらった。旅先での風景。メンバーと共に過ごした日々と魔獣との戦い。父である陛下に冒険者を辞めるよう言われたときには、師匠に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。師匠は私の事情、メンバーの一人であるエルフの王子の事情、全てを察してミーティングで解散の話をしたのだ。できることならもう少しこのメンバーで活動したい。だが私には国を背負う責務がある。戦場の現場に似た状況を体験できたのは今後の人生に大いに役立つのであろう。


「――まあ、森の近くに来たら顔を出すよ。じゃあ、アベルそろそろ行こうか」


 エルフの森からの帰り道。いつものように奴隷会館のある町に立ち寄り、魔法に適性のある有能な者を探した。ただ、この日は想定外のことが起こったのだ。


「マジかぁ、――――(この子魔族じゃん)


 奴隷会館のソファーで最後のグループの奴隷を見ていたときに、師匠はそう言って天井を仰ぎ見る。


「なあ、お前ら。オレは買いたいヤツはいないんだが、もういいか?」

「えーっと、おいら、あの子が気になる」

……(よりにもよって)、そうか。じゃあ話をしてみるか?」

「うん。ねえねえ、お姉さん――」


 師匠は会話を俯いたまま聞いている。私はその様子を見つつ「本当にこの子は魔族なのか?」と、そんな疑問を持った。

 結局、メンバーが買い取り、その少女を奴隷として王都へ持ち帰ることになったのだ。


 ◇


「お疲れ。報告終わったぞ」


 師匠が受付でマチルダさんと会話をしているのを見て、「本当に解散してしまったのか」と寂しい気持ちになる。


「師匠、今までありがとうございます。師匠はこれからどうするんですか?」

「そうだなぁ。どうすっかなぁ。とりあえずアイツの面倒をしばらくみると思うぞ」

「そうですか……」

「もう会えなくなるわけじゃないんだから、そんな顔をすんなって」

「そうですね。王になったら師匠を呼び出しますよ」

「職権乱用だな」


 師匠は私の頭を掴み、髪の毛が乱れるくらいにぐりぐりと撫でる。


「じゃ、アベルまたな」


 私はギルドを立ち去る師匠の後ろ姿を見て「ありがとうございます」と感謝の言葉を呟いた。


 ◇


「アベル殿下!」


 城に帰ると、家来の者にそう言われる。その慌て方から、ただ事ではない様に思えた。


「どうした?」

「謁見の間に魔族が現れました」

「えっ、陛下は?」

「今、魔族と話し合いをしています」

「わかった、ありがとう。今すぐ行く」


 私は謁見の間へと急いだ。謁見の間に着くと、禍々しく威圧的なオーラを発する魔族がいて、陛下は毅然とした態度で魔族と相対峙していた。


「本当に知らぬのか? 人間の王よ」

「知らぬな」

「この国に娘がいたのは間違いない。もし仮に娘に何かあったなら、この国がどうなるかわかっているだろうな」

「儂に娘を探せと言うのか?」

「ああ、そうだ。すぐに見つけろ」


 そのやりとりを聞き「もしかしたらあの子が」と、言葉が自然と出た。


「国王陛下。私に発言する機会を与えてください」

「よいぞ、アベル」


「私はこの国の王子、アベルと申します。娘さんをお探しと言うことで、一つ心当たりがございます」


 その言葉を聞いた魔族の男は私を睨む。凄い威圧感だ。


「私が所属していたパーティーのかつてのメンバーが、魔族の少女を保護しています。もしかしたらその子があなたの娘さんかもしれません」

「違ったらどうする?」

「その時は国王陛下の命で、国中いたるところを探すことになるかと考えます」

「わかった。今すぐその娘をここに連れてこい」

「はっ」


 私は師匠達の住む宿屋へと急いだ。メンバーに事情を話し、奴隷会館で少女を奴隷解放したあと、彼女に言う。


「今、君のお父さんが城にいる。一緒に来て」


 私はその少女と共に王城へと走った。


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