表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/36

第14話 この男やりおるな

 王都のギルドを出て、僕らは隣接する国、ザビンツ帝国を目指すことにした。元々の目的はミムの呪いを解くことだが、僕とテレーザが指名手配されたとなれば、いち早くこの国を出る必要があると思ったからだ。


「ザビンツですか、旦那」

「そう。ちょっとね、この国に滞在するのは都合が悪くてね」

「ふーん、そうですか。あっしはよく分かりませんけれど、何かあるんですね」


 旅は問題なく進む。そんな中、とある町で女の子が男三人に囲まれているところを見つけた。


「いいじゃん。俺達と遊ぼうぜ」

「そんな困ります」

「一緒に楽しんで、気持ちよくなろう。ね?」

「やめてください!」


 男が女の子の手首を掴む。


「旦那。あっし、ちょっと行ってきます。カッコいいところを見せつけてやりますぜ」


 そう言って、ロサルは男達の所へ。


「おう、てめぇら」

「何だ?」

「その子嫌がっているだろ、手を離せ!」

「はあ? てめぇには関係ないだろ」

「お前らみたいのがムカつくんだよ」


 ロサルは女の子を掴んでいた男を殴る。


「てめぇ! やりやがったな!」


 男三人とロサルが喧嘩をし始めた。


「お嬢さん。今のうちに逃げな(ふっ、決まったぜ。これで心をバッチリ掴んだぜ)」


「ありがとうございます。これから彼氏とデートなんで失礼します」


 ロサルは喧嘩している際中、顔を殴られてもいないのに泣いていた。


(どんまい。ロサル)


「レイユ君、行かなくていいの?」

「下手に揉め事を起こして目立ったら、いろいろマズいでしょ、テレトワ」

「あっ、そうだね」

「まあ、あとでアクアヒールをかけるよ」


 喧嘩については、男三人相手にロサルが勝った。王都ギルドで四対一で喧嘩したと聞いたときにも思ったが、複数人相手でも平気なのだろう。


「終わりました、旦那」

「こっち来て。アクアヒールをかけるから」

「すみません旦那。あいつらの拳思いのほか痛くて、涙が出ましたよ」


(違うよね? 女の子の方だよね?)


 ◇


 その後の旅も順調で、僕らはようやくザビンツ帝国と隣接する町に入った。


「うーん」

「どうしたの? レイユ君」

「国境の検問をどう抜けようか――どうしよう」

「ん?」

「ミムとロサルは指名手配されていないだろうから大丈夫だと思うけど」

「えっ、指名手配って何なの?」

「ああ、テレトワには言っていなかったね。王都を出るときに僕とテレトワは指名手配されていたんだよ」

「はい? うち達、国賊として指名手配されたの?」


「あっし、初めてそのこと聞きましたぜ。どうするんですか?」

「うーん」

「それなら旦那、あっしにいい考えがありますぜ」


 ◇


 僕らはこのあとの旅にも必要なものを買い足し、そして国境の検問所の前まで来た。


「レイユ様。男性に見えますかね?」

「見える見える。カッコいいよ」


「レイユ君、うちはどうかな?」

「可愛い少年に見えるよ」


 ミムとテレーザには男装をしてもらっている。男装をする際に「レイユ様、胸のさらしを巻くのを手伝ってください」とミムが言い、「あっしがやりますぜ」とロサルが口を挟むと、ミムはロサルに思いっきりビンタをした。「あたしはレイユ様にお願いしたんです!」という場面を見て、僕は思わず苦笑いをした。


 ◇


「次」

「はい」

「ギョク、キョウ、ケイ、フ。誰がギョクだ?」

「僕です」

「キョウは?」

「あ――オレです」

「ケイとやらは?」

「う――ボクです」

「問題ないな。じゃあ、お前ら行っていいぞ」


(ロサルはいいんかい?)


 検問所で身分証として渡したギルドカードは、ロサルのことを囮にした男達のギルドカードだ。ロサルが彼らと喧嘩したあと、お金の入ったギルドカードを彼らから奪ってきたみたいだ。


「お兄さん、すんまそん。あっしがフなんですが」

「おお、悪かった悪かった、行っていいぞ」

「お疲れのようですね。お兄さん頑張ってください」


 ロサルいわく、「あっしも姐御も足が付かない方がいい」と。そういったこともあり、四人とも他人のギルドカードで検問所を通り抜けたというわけだ。


「上手くいきましたね、旦那」

「そうだね。でもこのギルドカードどうするの?」

「男物の服も買って、もう金が入っていないんで、そこら辺に捨てましょうや」

「そうだね。そうしよう」


 こうして僕らは故郷である王国をあとにし、ザビンツ帝国に入国した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ