第10話 オーダー(order)
「殿下。ご報告があります」
「どうした急に?」
「はい。レイユ・バルサードのことについて何ですが」
「ほう、ガリ勉が何だって」
「数日前にバルサード家から消え、行方不明になりました」
「ほほう。行方不明ねぇ」
ざまぁみろって。家でも居心地が悪くて、逃げたんだろう。まったくガリ勉は面白いヤツだな。
「それともう一つご報告が」
「何だ?」
「同日。トワール家からテレーザ嬢も突如消え、行方不明になりました」
「はっ?」
どういうことだ。確かにテレーザは学園に来ていなかったが――あっ、あのアマやりやがったな。俺の顔に泥を塗りやがって。俺のことを無視してガリ勉と駆け落ちしたな。パーティーで婚約者だって俺が宣言しただろ。ふざけやがって、今度あったら嬲ってやる。
「おい」
「はっ!」
「今すぐその二人を指名手配しろ」
「わかりました。罪状はどのように?」
「そんなの適当でいい。とにかく捕まえて俺の所まで持ってこい」
「……、それでは陛下が」
「親父には俺から言うから問題ない」
「わかりました」
「おう、よろしくな」
「失礼いたします」
いけ好かねぇ。ガリ勉のヤツ、捕まえたらタダじゃおかないぞ。誰が偉いのか体に教え込んでやる。テレーザもだ。
俺はアイツらをどうしてやろうかと廊下を歩いていると、バカ兄貴を見つけた。
「おう、魔法が使えない兄貴じゃん」
「――お前か。何の用だ?」
「兄貴は騎士学校からいつ戻ってきたんだ?」
「先週だな」
「へぇー。それで学校では上位陣に名を連ねることができたの?」
「……」
「まさか、王になる男が真ん中の成績なんてことはないよな?」
「そういうお前はどうなんだ?」
「かろうじて上位ってとこかな。まあ、俺が本気出せばトップなんて余裕だよ」
「そうか」
「兄貴は卒業したら王国騎士団に入るのかぁ――いや、入る実力が無いか。冒険者にでもなって修行すれば?」
「お前、そういう所だぞ」
「何が?」
「そんな態度じゃ。誰もついて来ないぞ」
「実力の無い兄貴の方が誰もついて来ないんじゃないの?」
「……、そうかもしれんな」
「じゃ、せいぜい素振りでもして頑張って」
兄貴は悔しそうな表情しているな。あっ、拳も握っているじゃん。ホント、魔法も使えない無能はいらないんだよ。
さてと、アイツらどうしてくれようかな。ガリ勉にテレーザ、覚悟しとけよ。