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6.名誉市民


 帝国の本国から役人が来た。

 基地内はかなりピリついた。



「なんだろね?」

「ビビる必要はねぇだろ。おれたちは仕事してる」

「えぇ、戦果から考えれば表彰ものですよ」


 あの大戦線からしばらく。

 その後も援軍要請がある度に三人の部隊は大きな戦果を挙げていた。


 役人は直属の兵士を伴ってきた。物々しいのは仕方ない。


「うわぁ、私の『グロウ・デルタ』を見てるよ!」

「くっそ、なんだよ。おれの『三式』もだ」

「……発言の許可を求めます!!」


 クラウスが挙手する。



「許可する」

「この調査の目的は何なのでしょうか? 我々の部隊は戦果を挙げており、不正には手を染めておりません。この調査はそんな我々の忠誠心と誇りを損なうものであります!!」


「その通りだ」


「え?」



 活躍しているこの基地が面白くない他の地区の貴族が嫌がらせ目的で派遣させたという、つまらない理由だった。


「悪いとは思っているがこっちも正式な要請だ。とはいえ、無視もできた。来たのは実際興味があったからだ」

「と、いいますと?」



 役人は紙を見せてきた。



「ここ最近、ガーゴイルの動きが活発化している。しかし、前線が維持されている。増援していないのに、損耗率はむしろ下がっている。これが意味することは何か?」

「実績の改ざん、または、エース級のギアがいる?」

「ああ、それも考えた。君はどう思う?」



 突然話を振られた。

 隅っこで大人しくしていたのに。



「この基地の軍人が優秀だからでは?」



 みんなが拍手した。




「確かに、それもあるだろう。しかし、ここに来てこの事象の原因が分かった。それは君だ、グリム・フィリオン」

「え?」

「『分析』が自分にしか使えないと思ってたのかい?」


 ギクリとした。



「『分析』ってなんのことだ?」

「確か、一部の知識人が持つ、物質鑑定スキルの一種だったかと」

「グリム君、闇魔法以外にもスキルが使えたんだ!?」

「い、いやー」

「君の整備した機体は軒並みカスタム機になっている。そして、君の整備士としての能力も相当高いな。つまり、君がギアを改造したんだろう」


 しまった。完全に油断していた。

 分析型スキルを持っている人は当然おれ以外にもいる。しかし、ここまで判別できる人間が唐突に現れるとは想定していなかった。



「ギアの勝手な改造は軍規に反する」

「はい、ですが、改造ではなく、機士に合わせて調整をしただけです。マニュアル外の追加部品は使ってません」

「そうだ、坊主は――」

「まぁ、待て。ここに改造の申請書がある」



 高官は書類をおれに渡した。

 サインがしてある。基地の司令官にたぶん、この高官テスタロッサ、それに……ひと際大きいサインがある。


「……ジェラル?……ジェラルドリー・デウス・ガイナ? どっかで聞いた気が」

「馬鹿! 皇帝陛下の御名だ!!」


 ガイナ皇帝だった。



「そこの空欄に君の名を書き給え。それで、君はギアの改造を正式にしたことになり、前線で多くの軍人の命と街を救ったことになる」

「えっと?」

「迷わないの!」

「坊主!!」

「即書くんですよ!!」



 司令官がペンを手渡した。

 おれはサインした。



「それから、これにもサインを。そう、そこ」


 またもや、皇帝のサインが先にしてある。

 金縁で彩られ、複数の家紋が描かれていた。その中に見覚えのある家紋があった。ロイエン家だ。

 断れる雰囲気ではないのでサインした。



「では正式に、君はウェールランド原住民から帝国名誉市民となった。よって、納税の義務が発生する。移動、職選択、発言の制限はなくなり、その権利と財産、生命は帝国法の下、護られる」



 いつの間にか、おれは市民権を得ていた。



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