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21.逆転

 一週間。

 新聞にもロイエン伯領の実情が取り上げられた。

 ロイエン伯領へは列車を乗り継いで二日。


 おれはマクベスと意外な人と共に渦中の戦場へとやってきた。

 グウェンは単位が足りないので来られない。

 テスタロッサは先んじて現地入りしている。



 帯同したのはリザさんだ。


 姫殿下の厚意。

 それから異人の子供二人だけではいろいろまずい。

 彼女は貴族出身で自身も騎士爵かつ機士として戦力にもなる。彼女には彼女のお付きのメイドさんや護衛がいる。結構な大所帯となった。



 リザさんとの列車旅をたのしみつつ、おれたちは戦場へと急いだ。



 ◇


「増援がギア二機だけだと!! そんなものでどうにかなると思っているのか!! 戦況もわからんのか!!」


 着いて早々、感じの悪い貴族に絡まれた。

 後衛の守備部隊を統括するオズマン男爵。


 もちろん事前に戦況は把握済みだ。

 ロイエン卿が苦戦していたのは相手の模造ギア使ったゲリラ戦法で後手後手に回ってしまうためだ。


 そしてその最大の要因は敵の通信網だ。

 無線通信は存在するが、ガーゴイルとの戦闘時は役に立たないとされた。ノイズが入るからだ。

 それはガーゴイルも無線通信のようなやり取りを常にしていてそれが干渉するためだと言われている。

 戦場で無線通信をするとガーゴイルを呼び寄せてしまう。


「解決策を持ってきました」

「黙れ、ウェール人ごときがしゃしゃり出るな!!」


 怖い。帰りたくなってきた。


「勘違いしないでいただきたい」



 リザさんがオズマン男爵を見下ろした。すさまじい圧だ。おれは彼女の背に隠れた。いいぞ。もっと言ってやって!



「これはスカーレット皇女殿下のご意向です。皇室に逆らうつもりですか」

「い、いや……しかしですね、ハーネット卿。戦況は深刻だ。そこのウェール人が何を持ってきたか知らないが、そんな簡単な問題ではないのだ」

「問題は敵の無線通信による緻密な連携。そこからくるゲリラ戦法、耐久作戦。そして、解決策は一つ」



 おれは持ってきた信号増幅通信機を見せた。



「情報量を増やして流します。さらに信号を秘匿化してガーゴイルに探知できないようにしてあります」

「ま、まさか……それは」

「はい、ギアで無線通信が可能になります」



 これは増幅した信号を暗号化、それをキャッチして解読し、音声出力するというもの。

 暗号化はグウェンに何とかしてもらった。ガーゴイルには自然のノイズにしか聞こえず、こちらの通信には気が付かない。



「では、時間がないので手早く作業に移れ」

「あ、待て。勝手に」



 半信半疑のオズマン男爵をよそに急ピッチで信号増幅装置の組み込みを行った。



 待機しているギアは15機。

 一般的な量産型『グロウ』だ。


「誰だお前!」

「ギアに勝手に触るな!」

「いいんですか、オズマン男爵!?」



 もってきたのは20基。


 うち二つはリザさんの『オーバーグロウ』とマクベスの『カスタムグロウ特式』に接続済み。



《こちら、ベネディクト・ロイエンだ》




 ごねる現場もその声と戦況を聞いて黙った。

 予めテスタロッサに数基渡していたのだ。



《グリム、はじめろ》

「仰せのままに」


 取り付けは小一時間で完了した。



 通信成功により、戦況は一気に逆転した。


 まず敵の奇襲、待ち伏せに対し、効果的な連携でことごとく返り討ちにした。


 さらにこの無線通信には副産物があった。

 強力な信号による敵通信のジャミング。

 優位性を失った敵組織はすぐに瓦解。地力で勝る伯爵の討伐部隊に次々と駆逐されていった。



「今回は出番無かったな」

「そう毎回でしゃばるものではない。手柄を上げ過ぎてもにらまれるだけだぞ」



 リザさんとマクベスの出番は無かったが、初めから二人は保険。

 伯爵の顔を立てられたので結果オーライだ。



《グリム、また、大きな借りができてしまったな》

「いえ、貸しだなんて思っていません。ぼくをあの廃屋から二度も連れ出してくれたのはロイエン家ですから。これからも御恩は返し続けます」

《ふん、殊勝なことだ》



 損害はあったものの、大きな組織を壊滅させたことで、ロイエン家の名は一段と大きくなった。



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