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20.情報革新

 ガーゴイルもどき騒動は新聞で大きく報じられた。

 かなり大規模な人身売買組織とも関連があり、捜査のメスが入るとのことだ。


 一方のおれは順調に単位を取り、自分の研究とバイトに時間を割いていた。



 おれの一日の始まりは早い。

 目覚めてすぐ、床でくたばっている女の処理をする。



「どこに埋めようか。舗装前の道路の下かな」

「いや~、生きてますから~」


 グウェンを洗面所に引きずり、頭に水をぶっかける。



「ぎゃ~冷たい!! 起きてます~! 起きてますから~!!」



 こうでもしないとこいつは簡単に落第する。



「失礼します」

「お任せします」



 部屋にやってくる姫殿下のメイドさんに引き渡す。

 おれは支度を済ませ、実習に向かう。


「おはよう、グリム君」

「おはよう、マクベス君」



 最初はいろいろ振り回されて困惑していたマクベスもすっかりギア中毒者に。

 いつもギアの傍にいて、用が無くても着装している。

 大丈夫?



「試しに他のギアに乗ってみたけど、やっぱり君のギアでないとしっくりこないな」

「それはそれは。天才のお眼鏡にかなって光栄だよ」



 おれの実習では教官がほとんど課題を出し尽くしていて、自分の『カスタムグロウ特式』を整備するだけで単位がもらえるようになっている。


 新装備の分析型バイザーの調子もいい。

 敵のおおよその攻撃範囲と戦闘タイプ、攻撃手段、さらには自身の耐久値、稼働残り時間などが記号と文字として表示される。


 まだ情報量は少ないが、使ったマクベスの評価は上々だ。


 なので今度はこれを姫殿下の皇族専用『カスタムグロウ』に組み込む。


 昼、皇族専用ラウンジに行く。


 今日もリザさんは素っ気ない。



「グリム、いつもそうやって遠目にリザを眺めるのはやめなさい。好きなら話しかければいいでしょう」

「嫌ですよ。ぼくにとってリザさんはそういう対象じゃありません。推しってだけです」



『悪逆皇女』の名も最近はあまり聞かない。

 おれのような異人をこうして気さくに受け入れているからだろうか。

 毎日お昼も一緒に食べている。

 今はマクベスも一緒だ。



「出たよ、グリム語」

「その推しとはなに?」

「好きとは違うのか?」

「広い意味では好きなんですが、付き合いたいとかそういうのではなく、眺めていたいという感じです」

「リザはギアではないわよ。大体、あの愛想のない女っ気も無い女の何が良いのかしら?」

「いや、そういう人が実は弟の誕生日にお菓子を手作りしてあげてるとか、そういうギャップがいいんですよ」

「―――っ!!! おい、なぜ!!?」

「え? リザ、あなたそうなの?」



 日々明かされるリザさんの秘密。

 ごめんなさい。



 午後から夕方はバイトだ。

 と言ってもガーゴイル解体はもうやめた。

 規制が強化され、解体にも資格が必要になった。


 今はテスタロッサさんの下で働いている。



「優雅だね。こんな美人と毎日お茶してお金がもらえるんだから」

「いっそ結婚してくださいよ」

「ぶふっ!! げほっ、げほっ……大人をからかわないでよ」

「いや、幼気な子供をたぶらかした責任を取って欲しいものです」

「やめなさい。公共の場で。私を社会的に殺す気?」



 いい加減この人の扱いにも慣れた。

 こうしていつもお茶して街をぶらぶらしているのはもちろん『状態検知』で犯罪者を炙り出すためだ。


 もっとも、彼女が欲しいのは第二のマクベスなのだろうが。

 あれは『分析』ではなく、おれが『ギア×マジック』を知っているからで……

 原作登場キャラはそう簡単に現れない。


 まぁ、本当のことを言う必要はない。

 本当に美人とお茶してお金がもらえるし。



「そういえば知ってるかな、ロイエン家」

「え? ベネディクト伯爵ですか?」

「あちらにもガーゴイルの違法改造業者が居たらしくて。派遣された機士が何人か亡くなったらしいわ」

「機士が?」

「それもギア持ちのね」


 ギアを所有ということは貴族階級。

 ベネディクトは伯爵だからその下に傘下の貴族がいる。死んだのは寄子ってことか。



「ロイエン家は大丈夫でしょうか」

「心配するのは立場ではないわ。違法ギアには未だ解明されていないガーゴイルの生態がそのまま利用されていることもある。情報が少ない中、スペック的に一世代、二世代上の機体性能の敵と戦えば、全滅、家の断絶もありえる」


 またこの人は、おれを試しているな。



「もろもろの支度は情報部でして下さいますか?」

「いいよ。見返りは君の隠している技術だ」

「隠してるなんて、人聞きが悪い」

「私に嘘は通用しないよ」



 夜。

 おれは自分の研究を進める。


 ギアの基本的な搭載機能の中で、目下の課題に取り組むためだ。



「グリム君、聞いてよ~。今日ランチに誘われたのに、話してたらまた帰られちゃったんですよ~!」

「何話したの?」

「装甲の流線加工による空気抵抗差とか、シフト調整用トランスミッターの連動についてとか、魔法応用における信号増幅器のリセットアンドアクトについてタイムラグを減らす波長形の―――」

「それは相手が悪いね。そんなおもしろい話だったらぼくは席を立てない」

「ですよねー!!」



 グウェンはメイドさんたちのおかげで見た目は大分女性らしくなったが、中身は同じなので毎回振られる。グウェン、そのままでいろよな。


「信号増幅機、トランスミッターで調整できないかな」

「なんですか、それ、おもしろそうですね!」



 グウェンが乗ってきた。

 朝までコースだな。


 ずっと気になっていたことがある。

 おれはロイエン家を原作でもゲームでも聞いた覚えがない。

 たまたまかもしれないが、もう一つの可能性がある。

 アニメ開始時点でロイエン家が没落していたら。


 機士が討たれたとテスタロッサは言っていた。

 それは貴族が率いた部隊ごと敗北したと言うこと。それが複数なら戦力は大幅に削られているはず。


 伯爵領は都市や街を含む。

 広い分防衛には十分な戦力が必要だ。

 それが崩れれば、この世界では呆気なく家名も無に帰すだろう。


「グウェン、ガーゴイルの無線通信。基礎理論は知ってるね」

「え? はい……まさか」

「機体に通信システムを搭載させよう」



 技術で戦況をひっくり返す。

 それにもっとも有効なのは情報革新だ。


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ガーゴイル無線通信出来んのかよ
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