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17.ライバル

 


 おれの本業それはグウェンとのギアの研究。


 おれたちは現在のギアの問題点を4つにわけた。

 機動性。操作性。視認性。そして拡張性。

 ここで重要になってくるのは意外にも視認性。

 ギアのバイザーはガーゴイルの視覚装置(目玉)を研究し再現しているが、視野が狭い。そして、目まぐるしい戦況、高速化する戦闘、複雑な操作の中で、ただ視野が広くても情報量がかえって増えてしまう。


 そこで、視野を広げると同時におれの分析スキルを再現し、バイザーに組み込むことにした。

 これにはただガーゴイルの生態を模倣する以上の知識と技術が必要となる。

 だが、グウェンの知識、おれの技術があれば実現の障害が無かった。



「グリム君、お金持ってます? 私、バイトに行くんですけど一緒にどうですか?」



 金が無かった。

 秘密の研究だから学校からは貸してもらえてないし、生活だってある。

 いや生活費に関しては、ロイエン卿やクライトン家から援助してもらっているから困りはしない。でも研究費はさすがにせびれない。

 おれたちは研究の傍らバイトを始めた。


 ◇



 姫殿下のメイドと親衛隊に呼び出された。

 なんだ?

 またギアの機体調整だろうか?



「機体のスペックをこれ以上上げるな」



 姫殿下がいない間に、釘を刺された。

 いくらリザさんの言うことでも納得できない。


「なぜですか? プロテクトスーツで感応性が上がっていると思いますが」

「だからだ。グリム、お前の力は姫殿下を追い詰めているのだ」


 姫殿下は高度な技術を持つ。

 実習機を使いこなしているはずだ。



「姫様は努力家だ。お前が機体の性能を上げればそれに見合うだけの技量をと鍛錬に励まれる。だが、お前が機士に求める技量は果てしない。このままでは姫様は潰れてしまう」


 しまった。

 おれはつい、ゲーム内の彼女を想定してできるラインを決めていた。

 しかし、彼女は原作に登場するより3年も若い。

 今の彼女の限界を知らず、ギアだけ見ていた。

 それに、彼女が弱音を言わない性格ということを失念していた。



 どれだけギアの性能を高めても、機士がいなければ意味がない。



「姫殿下の実習に同行してもいいですか?」

「何のための徽章だ」



 彼女がギアをどう扱うのか、実習を見学することにした。


■状態検知

 ・適合率 89%

 ・出 力 A【1900/2400馬力】

 ・速 度 B【時速0-60km】

 ・耐 久 B【2780/3000HP】

 ・感 応 A【0.18秒】

 ・稼 働 A【240分】


 確かにすごいな。

 候補生のレベルじゃない。


「どう? 使いこなしているでしょう?」


 姫殿下のドヤ顔。

 これは調子がよさそうだ。


 彼女がおれの整備した機体で苦労していると思ったがそうじゃないな。


 所詮は実習機。ベースは『オーム』だ。

 彼女には物足りないんだ。

 ギアだけではない。

 周囲の候補生も。

 今年は彼女が抜きん出ていて、比較対象がいないんだ。



 要はライバル。

 だから、がむしゃらになる。

 親衛隊が心配しているのはそのことなのか?



「姫様」

「何だ?」

「姫様って友達いますか?」

「な、なによ急に……!! 友人ぐらい……」

「そうですか。友達とどんなこと話すんですか?」

「そうね……今考えるとくだらないことばかり。どうでもいい話ばかりね」


 それは友達なのか?



「そういうお前はどうなの!?」

「ぼくは結構いますよ」

「グウェンを入れないでよ。あれは恋人でしょう」

「……違います。ただの同居人です」

「は? 恋人でもないのになんで同棲してんのよ!!」


 いまさらそんな常識的なこと言われてもな。


「ウェールランドにちゃんといますよ」


 みんな軍人と整備士。同僚かあれは?


「本当に?」

「友達ってご飯を一緒に食べたらカウントしていいですよね」

「なによそれ。そういうものなの?」

「いや~、よくわかりませんね」

「……それで?」

「はい?」

「私の機体捌きはどうだった」



 さて、どう答えるか。

 正直に答えるべきか。

 親衛隊は自制して欲しいらしいが。



「―――実戦に出ても、一兵卒レベルですね」


 親衛隊にメイドの方々が睨んでくるのがわかる。

 けど、彼女はたぶんわかってる。




「やはりそう。お前の整備は完璧よ。なのに成長している実感がないわ」

「『オーム』でできることは限界があります。姫様、皇族専用『カスタムグロウ』持ってますよね」

「ん? ええ、でも私がそれを使うと、なおのこと相手がいないから」



 本来皇族はギアに乗って戦闘に参加するものではない。女性皇族ならなおさらだ。

 第二皇女ルージュ。彼女が特別なんだ。



「親衛隊は軍人ですよね」

「奴らは私の護衛よ。私が戦場に出る手伝いなどしないわ」



 そうか。

 彼らはこれ以上彼女に強くなってもらっては困るんだ。

 皇族が危険に身を投じる機会は少ないに越したことはない。



 でも、悪いがおれは知っている。

 彼女は将来、機士として前線に出る。

 そういう気質だ。



「姫様は戦場に出ることになりますよ。ルージュ殿下のように」

「ええ私もそうありたい」


 お、彼女の屈託のない笑顔を初めて見た。



「その顔していれば、すぐに友達ができるのに」

「な、なんだ、突然。どんな顔よ!」

「あ、また眉間にしわが」

「皇族を馬鹿にすると不敬罪で死刑にするわよ!!」

「友人としてのアドバイスです」

「フン、調子のいい奴」



「グリム」

「はい?」

「正直でいて。これからも」

「ご安心を。ぼくは嘘がつけないので」



 彼女にはライバルが必要だ。

 しかし、この兵学校でまともな相手がいないとなると誰だ?



 それは意外な場所で見つかった。



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