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『片桐、西澤。そこに何かあるか?』
いきなり司令室のインカムから小柴の声が聞こえた。
いきなりの通信に戸惑ったものの、ちょうど話しておきたかったことがあったので刻也が返事をした。
麻奈は今いない。彼女は別の部屋で食料を探している。司令室には何か残っていないのかと司令室に来た時に通信が入ったのである。
「元軍人の骨みたいなものがたくさん散らばってますけど……」
『……』
返事が返ってこない。
「?」
訝しむ刻也の耳に争うような物音。
『かた……ざわ……頼んだ……!』
その後途切れ途切れに小柴の怒鳴るような声が聞こえて、
『…………………………』
何も聞こえなくなった。
「ちょ、ちょっと小柴教官?」
何度呼びかけても答えは返ってこない。故障のランプがついていないから、故障ではないらしい。通信中のランプもついているから、通信が途切れたわけでもない。
――何があったんだ?
心配になり始めた刻也の耳にやっと返事が届いた。
『小柴教官が反乱罪で連行されたわ。これからは私があなた達の指揮をとります。いいわね』
ただ、聞こえてきたのは小柴の声ではなく、副教官の渡辺綾のものだった。
まあ、この時刻也が気になったのは、通信相手ではなく、渡辺が語った内容だったのだが。
「渡辺先生。小柴教官が捕まったって、どういうことですか?」
『私もよく分からないの。いきなり軍人が来て、反乱罪で小柴教官を逮捕するって……』
「はぁ? どういうことですか?」
『だからわたしにも分からないのよ。ただ、ベースキャンプがどうとか言う話を聞いたんだけど……今あなた達がいる所ってベースキャンプでしょ? そこに何かあるの?』
「……ありますよ。骨が」
その言葉に渡辺は一瞬、息を呑んだ。
『……要するに、誰かの死体があるってこと?』
「そうです」
『何か特徴は?』
「全員、軍服を着てます」
もう一度息を呑む音。
渡辺も信じられないのだろう。
『何かの陰謀に巻き込まれたのかしら……?』
「分かりません。でも軍服はデザインの変わる前のヤツだから……」
『そう、じゃあ、それはコッチでも調べてみるわ。あなた達はそこで待機。そっちでももう少し調べて』
「了解です」
『じゃあまた何かあったら連絡して。こっちからも連絡はするけど』
それを最後に通信は切れた。
「大変なことになりそうだぞ……」
ぼやきながら、ひとまず麻奈にも伝えようと刻也は席を立った。