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幕間1
「で……? 一体どうしてそんなことになっとるんだ!?」
男が電話口に向かって喚いていた。
年は六十代の半ばあたりだろう。オーダーメイドの高級スーツに身を包み、よく言えば恰幅のいい、悪く言えば太った男だった。
「だから、あそこに民間人を入れるなと言っておるだろうが!」
『し、しかし……海賊に襲撃されたらしく……』
「だったら撃沈させておけ!」
『え……』
男の為政者としてはあまりに身勝手な言葉に電話の向こうの声は言葉を失う。
「……まったく。今そいつらの指揮を執ってるのは誰だ?」
『あ、教務部の小柴中佐です』
「あぁ、あのバカか。分かった。もういい。後はこっちで何とかしておく」
『あ、はい……』
電話を切る。
「ふっ……これでアイツを消すことができる」
男の口には冷笑が浮かんでいた。