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「うわっ! 何だコレ!」
「嘘でしょ……」
ほうほうの体で何とかベースキャンプに辿り着いた刻也と麻奈を待っていたのは、散々たる風景だった。
白い骨、骨、骨……
白骨化した遺体が十体ほど司令室の床の上に散らばっていた。
全員、軍服を着ている所を見ると、どうやら“元”軍人らしい。
ただ、軍服のデザインは大分古いもの――五年前にデザインが変更されるまで使われていたもの――を着ている。
全員胸に四個か五個勲章を付けているので、かなり軍の中でも上位階級――大佐か少将、あるいは中将あたりの階級の人間だとうかがえる。
どういうことだ?
ショックから立ち直った頭で考える。
普通、軍人がこんなところに来るはずがない。軍には軍専用のベースキャンプがあるのだから、そっちを使えばいいはずなのだ。
それに、ベースキャンプの接艦場に他の潜水艦の姿はなかった。
不自然なことばかりだった。
「どうしてこんなトコにこんなものがあるのよ……!」
青ざめた顔で麻奈が喚く。
――!
その時、刻也の頭を、ある不安がよぎった。
その不安に突き動かされるように、刻也は食料倉庫に走る。
「ちょ、刻也! どうしたの?」
驚いた顔で麻奈が後を着いてくる。
「…………」
麻奈の問いには答えず、
バンッ!
食料倉庫の扉を開いて、
「やっぱりか……」
刻也は天を仰いだ。
空っぽだった。
いや、正確には空っぽではない。携帯食料のカスやゴミが床に散らばっている。
「嘘……」
その光景に麻奈も絶句する。
食料がない!
先程司令室にいた遺体達も、恐らく餓死してしまったのだろう。
「しゃーないな……」
刻也は息を吐いた。
「他ん所に食料があるか探しに行くぞ。もしなかったら海で魚でも捕ってやる」
「そうね……」
麻奈もため息をつきながら同意した。
「じゃあ行くぞ!」
バンッ! と食料倉庫の扉を力任せに閉め、二人は別々の方向に走り出した。
…………カサッ。
扉を思い切り閉めた衝撃で扉に貼られていたらしい紙が剥がれ落ちた。
日付と文字が書いてある所を見ると、新聞らしい。
暗がりの中でその記事のタイトルはこう読めた。
『反乱軍ベースキャンプに立てこもる!』
日付は五年前になっていた。
遅くなりました。まだまだ続くのでこれからもよろしくです。