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一時間が経って、廃墟となったかつての陸地の残り物の向こうにようやくベースキャンプが見えてきた。
燃料もまだ充分残っている。
「何とか行けそうね……」
「今の所はな……」
潜水艦のコクピットで二人はそんな会話を交わした。
その時、
『片桐、西澤、調子はどうだ?』
無線から小柴の声が聞こえてきた。
「「大丈夫です」」
『そうか……ま、お前ら二人に大した怪我がなさそうで本当によかった』
「ですね」
小柴に刻也が笑って返す。
『本当によかった。……さて、あとどれくらいでベースキャンプだ?』
「一応視認はできてますよ。ただ、進行速度がかなりノロいんで、あとどれくらいかかるかは……ま、一時間はかからないと思いますけど」
『そうか、じゃあ、ベースキャンプに着きそうになったら連絡してくれ。ドッキングの方法を教えるから』
「了解です」
『じゃあ、健闘を祈る』
そう言って無線は切れた。
無線が切れると、一気にコクピットの中は静まり返った。
聞こえてくるのはエンジン音と二人の息づかいだけである。その二つが混じり合って、ハーモニーを奏でている。