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「全員乗り込んだか?」
「「はい!」」
潜水艦『光明』のブリーフィングルームで、六人の男達が集合していた。
室内の照明は全ておとされているため、薄暗い。その中で、男達は唯一の照明であるモニターを凝視していた。
モニターには日本の箱船周辺海域の地図が映し出されていた。
「今回の任務は、“テロリスト”の殲滅だ」
“テロリスト”。その言葉にブリーフィングルームがざわついた。
「場所は?」
一人が問う。
「ベースキャンプだ」
リーダー格は厳しい顔で答えた。
画面上に赤い点が点滅する。
「え? そこって……」
「うん? 何だ?」
「小柴中佐の教え子が――」
最後まで言い終わらない内に――
「それは嘘だ」
リーダーが遮る。
「先程、小柴中佐は国家反逆罪で逮捕された。ベースキャンプには彼の仲間が潜んでいると本人が自白している」
部屋がざわめきで埋め尽くされた。
兵士達は皆一様に驚いた顔をしている。それも仕方のないことだろう。叩き上げの軍人である小柴がまさか国に対して反乱を目論むとは思ってもみなかったことだろうから。
「では、行くぞ。全員、持ち場につけ!」
リーダーが告げる。
「はっ!!」
憮然とした表情のまま、兵士達は部屋から出て行った。
後には一人、リーダーだけが残される。
全員が出て行き、扉が閉まったのをのを確認すると、その口元に、
「ふ、くふふ……あは……あはははははは!!」
残忍ともいえる笑みが浮かぶ。
その笑みはやがて、嘲笑へと変わる。
声を押し殺して笑うリーダーの姿をモニターの光が冷たく照らす。
「さて、アイツの愛弟子達をどうやって殺してやろうか……」
残忍な笑みを顔に張り付けたまま、リーダーが呟いた時だった。
『敵艦接近! 総員緊急戦闘配備につけ!』
部屋に警告を表すアラームが鳴り響いた。それと同時に各部屋に取り付けられた赤色灯がけたたましい音とともに部屋を染め上げる。
「なに……?」
予想外の事態に顔をしかめるリーダー。
慌てて兵士が飛び込んできた。
「隊長! 敵艦です!! 数十!!」
「何!?」
リーダーは驚きに目を見開いた。
「どこの国だ!」
「国ではありません! 海賊です!」
(小柴の愛弟子達を襲ったヤツらか……。しかし、何故ここに……?)
リーダーは心の中で悪態をついた。
だが、すぐに顔を上げると、
「戦闘準備!」
「はい!」
来た時と同じスピードで飛び出していく兵士。それを見送った後、
「総理! 海賊に攻撃されています!」
傍らの机の上に置いてあった無線機をひっつかんで怒鳴り、
「くそっ!」
悪態をついて部屋を飛び出した。
その頃、総理官邸――
「総理! 東アジアの海賊集団が、日本に対して宣戦布告してきました!!」
「何だと!?」
タイムリミットは刻々と近づいていた。