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第44話

 純花の言葉をそのまま受け取ると、純花は今幸せではないということになる。

 確かに高宮先輩が女癖の悪いクソ人間だとわかった時点で幸せではないのかもしれない。


 それでも純花は俺に『悪いところが無いのが悪い』と言い放ったくらいなので、悪いところだらけの高宮先輩とは別れずになんだかんだ仲良くやっていて、俺の心配は無意味だったのだろうと思っていたのだが、高宮先輩との関係が悪化しているのだろうか。


「純花も高宮先輩と付き合えて幸せなんじゃないのか? 俺みたいな悪いところが無い面白みのない男よりも、女癖が悪いっていう欠点がある高宮先輩と付き合ってる方がよっぽど幸せだろ」


「高宮先輩の女癖の悪さは度を越してたし、どれだけ嫌だって言ってもすぐに手を出そうとしてくるからもう別れたわよ!」


 ……あらあら。


 純花の雰囲気からそんな気はしていたが、まさか本当に別れていたとは……。

 純花がもう高宮先輩と別れているという話を聞いた俺は、やはり自分は間違っていなかったのだと確信した。


 それにしても悪いところが無いなら無いでスパイスが足りないと嘆き、悪いところがあったらあったで度を越していると嘆くなんて無い物ねだりも甚だしい。


 そんなことを考え呆れている俺の前で、純花は涙を流し始めた。

 女の子の涙がこれ程汚いと思ったのは初めてのことである。


「なんで私はこんなに不幸なのにアンタだけそんな可愛い子と付き合って幸せそうにやってるのよ! そんな幸せそうなところ見たら瑛太と別れなければよかったって、後悔しちゃうじゃない……」


 純花が涙を流しても同情を一切感じないのは、純花にされてきた仕打ちがあまりにも酷いものだったからだろう。

 純花が涙を流している姿を見て同情するどころか、心姫のことを可愛いと言われたことを喜んでしまった。


 そんな気持ちは一旦置いておいて、なぜ今俺と純花の状況が真逆になっているのか、純花に説明してやらなければならない。

 どうせ純花にはには自分が不幸になった理由なんてわかっていないのだから。


「俺は純花と付き合ってる時さ、ずっと純花を大切に思って純花のことだけを考えて行動してたよ。それなのに純花は俺を裏切って他の男を好きになって俺を振ったんだ。しかも俺からの忠告を無視して、俺を悪者扱いしてな。そりゃ不幸になって当たり前だろ。まあ百パーセント純花が悪かったとは言わないけど--」


「そうよ! 瑛太が私に瑛太のことを好きで居させなかったのが悪いんじゃない! 私は悪く無いわ!」


 ……もうため息を吐く以外、俺にできることはなさそうだ。

 少し隙を見せただけでこの反論とは、こいつは心底腐り切っている。


「……はぁ。少しくらいは変わったんじゃ無いかと思って期待してたんだが相変わらずだな」


「何よ! 自分は悪く無いみたいな顔して偉そうに!」


 いや、ちゃんと俺は純花が百パーセント悪いわけではないって伝えたからな?

 相変わらずこいつは感情的になると人の話を聞かないし理解しようともしない。


 そんな純花に俺は無言で呆れた表情を見せた。


「……」


「何よ呆れた目で私を見て! わかってるわよ! 本当は自分が悪いってわかってるに決まってるじゃない。私もそこまで馬鹿じゃ無いわよぉぉぉぉ……」


 そう言って純花は再び涙を流した。 


 純花は理解はしていても感情が追いつかない人間だ。

 まだ高校生なので感情が未熟なのは仕方がないことだと思うが、それで他人に迷惑をかけてはいけない。


 せめて自分の中で感情を整理できる人間になってもらわなくては。


「泣いたってもうどうにもならないからな。純花のやったことは無かったことにならないし、これからの行動に気をつけてもらうしかない」


「何よ偉そうに説教垂れて! そんなのわかってるわよ! これから気をつければいいんでしょ⁉︎  じゃあこれから気をつけるから私と付き合いなさいよ! どうせあんたの後ろに隠れてる女だって外見がいいだけのクズ女なんでしょ⁉︎」


 純花にそう言われて頭に血が上った俺が反論しようとしたその時、俺ではない人間が純花に対して鋭い視線を向けながら声をかけた。


「クズはそっちなんじゃないの?」


「えっ--」


 俺に代わって純花に声をかけたのは、純花の親友であるはずの星野麻衣だった。

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