表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/20

第10話 違和感(没クエスト発生中)

 俺の主人公オクラ主人公オデンさんはメルディ魔導学院に踏み込んでいた。街中にも沸いていた没モンスターが廊下や教室を徘徊していたが。


 ※※※機動星兵デストロイを倒した※※※


 ※※※機動星兵デストロイを倒した※※※


 ※※※機動星兵長マスター・デストロイを倒した※※※


 格上らしいのも混じっていたが雑魚には違いない。


 そもそもここは主人公キャラ1人で進む前提のダンジョン。そこを俺達は主人公キャラ×2の変則パーティで進んでいるのだから尚更。


「オデンさん。この学院、何か変だと思わないか?」


「そうですか? 教室っぽい小部屋がいくつもあって至る所に本棚が並んでいて。学院らしい学院だと思いますけど」


「そこだよ、そこ。変なのは」


「えっ?」


「没データにしてはちゃんと出来過ぎている。没の定番、適当なダンジョンマップを使い回してもよさそうなものだが」


「あっ! なるほど~~」


 このゲームに学院の様な施設は他に出てこない。それが全く違和感ないほどに学院らしいものがあるという事は。


 わざわざこのクエストの為に手間暇かけて作った。


 それにも関わらず没データにした。


 どうして?


 とか思いたくなるところだがそこは没データ。クリエイターの気まぐれ、なんて事もあるから深く考えても意味はない。


 ただ、疑問は疑問として感じてもおかしくはないものだが。


 そんなわけで、聞くべきか少し迷ったが…。


「ところで、オデンさんは発掘プレイヤーでいいんだよね?」


「えっ!?、そ、そうですけど」


「本当に?」


「だからこうしてここにいるじゃないですか! どうして急にそんな事を?」


「いや、ごめん。特に意味はないんだ」


 ほとんどゲームなんかやった事がないような初心者?わずかにそう思ったが…。


 現にこうして過去のプレイデータを使って見つけづらい没データ内に入り込んでいる。


 気のせいか。


 パーティメンバーを疑い過ぎるといざという時にアレだしな。



 いくつもの廊下と教室を経由して一際広い部屋に辿り着いた。前の方で何かがパッと弾けた。この光は魔法攻撃か。


「このっ! ネーブラの手先め! 底無き我が魔力の泉を味わうがよいっ!」


 見れば、オルド魔導学院長という名の老人が杖を振るって自身に迫るモブの老婆(中身『機動星兵デストロイ』)に魔法を放っている。


 稲妻がモブ老婆の脳天を直撃し黒焦げに。老人が老人を…、没モンスターにモブ人間の姿をあてがう事で起きる相変わらずな光景だが…。何度見ても慣れないものだ…。


 急に目の前に文字が湧いた。


【マリカは? マリカはどこに!?】


 これはアレだ。古代遺跡群アナザー・ダイヴ・リワールド特有の、この台詞言って下さい的なシステムからの指示。


 レトロゲームをフルダイヴに焼き直した為、本来なら文字で進んでいた会話をプレイヤーにお願いしなければならない局面があるらしい。


 仕方ないので、プロンプターに映し出された台本を読むかの様にそれを。


「マリカは? マリカはどこに!?」


 わざとらしい…。


「おぉ! そなたがマリカの言っていた未来から連れて来た仲間だな。未来のマリカはこの奥、『星封じの間』に向かった。あの娘をどうか、学院の希望を助けてやってくれ!」


 未来? そうか、あまり気にしていなかったが言われてみればそうだ。


 ゲーム開始時の段階で既に廃墟となっている『魔塞都市ベルナダウン』。それが今滅ぼされようとしているのだからこれは過去の話。


「オデンさん、聞いたな?」


「はい。仲間として加わるマリカは17歳、確か9歳の時に故郷が滅ぼされた過去を持つ。そんな設定でしたね」


「過去を変えて未来も変える。これはそんな結果をもたらすクエストだったとしたら?」


「なるほど! オルド学院長、この奥にどんな敵が? マリカさんは誰と戦う為に?」


「おぉ! そなたがマリカの言っていた~~。助けてやってくれ!」


 あっ…、オデンさん。きっとそれは無駄な質問…。


「あれ? 学院長がまた同じ事を……。そうじゃなくて聞いた事を教えてもらえませんか?」


「おぉ! そなたがマリカの言っていた~~。助けてやってくれ!」


 何度聞いても同じ事…。


「むむむっ……」


「オデンさん、この人はそもそもレトロゲームのNPCなんだ。今時の完全新作フルダイヴのNPCと違って会話出来るわけじゃない。決められた台詞を繰り返すだけだ」


「あぁ……。そういう事で」


【マリカは任せて下さい! 学院長もどうかご無事で】


 では、例によってわざとらしい台詞を…。


 この程度ならまだいいが、場合によってはとんでもなく恥ずかしい台詞を言わされる局面もあるって事だよな?


 今、主人公キャラの台詞をいちいち思い出すのは…、やめておくか。


「マリカの仲間よ、ここまで辿り着くのに苦労されたであろう。ゲホッ、ゲホッ……。これはワシからのせめてもの贈り物じゃ! 『スターヒール』」


 ※※※HP/MPが全快した※※※


 ※※※全ての状態異常が解除された※※※


「じゃ、オデンさん行こうか」


「はい!」


 さて、こんな回復魔法は存在しなかったはず。きっと没魔法というわけでもないだろうな。


「あっ、オデンさん。振り返らない方がいいと……」


 遅かったか…。

 

 咳き込んだのは最後の魔力を振り絞って的な状況描写だったはずなので。


 オルド魔導学院長にモブ人間(中身『機動星兵デストロイ』)たちが群がり、学院長はズタボロでエグい事に…。


 死体はすぐに消えた。その辺りの床から急に青白い光が湧き出して輝き始める。


 オデンさん、全く気付かなかった様だが今のはレトロゲームらしいセーブポイントの出現パターンなんだよね~。


 さて、全回復されたという事はこの奥に。

最後までお読み頂きありがとうございます。

よろしければ↓☆☆☆☆☆での評価やブクマ、感想など頂けましたら幸いです。

また、他にも短編や長編を掲載しておりますのでよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ