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ぼくたちの理解者  作者: 凪司工房
第三章 「チョコミントの理解者」
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2

「あれ我慢した時に羽根が舞うの草だよね」

「でもアニメーションにした時の表現方法としては面白いと思う」


 放課後になった二年三組の教室で、他に生徒がいないことにかこつけて、わたしと三枝成実は昨夜見たBLアニメの話をしていた。一応漫画研究会という居場所があるのだけれど、成実と一緒になるとつい場所に構わず話し込んでしまう。


「ところで成実氏はさ、リアル系のBLってどう思う?」

「リアル系とは?」


 成実は丸眼鏡を掛け直して、わたしを見る。


「いや、久美子や朝美は高橋君かける冴島先生とか、そういうのでもご飯がイケるタイプじゃない? でもわたしはそういうの、なんか受け付けられなくて」


 アニメや漫画は完全に自分の世界と切り離されているから楽しめるのだけれど、それが肉体を持って目の前に現れた瞬間に、とても生々しく思えてしまう。漫研で話す時は一緒に盛り上がるようにしていたけれど、実際はどう思っているんだろうというのはずっと気になっていた。


「桃川氏は三次元を二次元で捉えていないということじゃない? 我らが後輩たちだって、別に本当に付き合っていたらいいなとか、そこまでは考えてないのよ。あれもあくまで妄想の範疇(はんちゅう)

「でも想像したらリアルになるじゃん。舌が絡み合ったり……ああ、言ってて気持ち悪くなってきた」

「逆に百合はどう? 女同士も駄目?」

「成実氏とわたし?」

「またあんたはどうしてそういうご近所から持ってくる」


 それでも目の前にいる成実に告白されたことを妄想してみる。


「眉毛が曲がっとるぞ」

「友達以上、友達未満だ」

「それもう友達であらへんよ」


 成実も同じように眉毛を曲げたので、わたしたちは一秒ほど見つめ合った後に笑い合った。



 実際、周囲でそんなことがあったりなかったというのは、噂程度だけど耳にしたことはある。そもそも周りがわたしと柊紅男の関係をどんな風に見ているかは、小学生の頃よりずっと高校生の今の方が気になり始めていた。


「あ、紅男だ」


 自室で頭を乾かしていたところに、LINEではなくいきなり電話を掛けてきた。


「どう、したの?」


 耳元にスマートフォンを持っていたところで、聞こえてきたのは紅男の鼻水混じりの声だったから、わたしは驚いてしまう。


「なんかね……突然、言われて」

「何を? というか、誰に?」

「桜庭。女ってバレたっていうか、好きだって告白された」


 桜庭が告白。その言葉だけでわたしは目の前が急に暗くなった。


「え? 告白されたから泣いてるの?」


 平静を装いつつ、とにかくまずは事情を聞いてみる。


「わかんないけど、とにかく男だと思ってたのにって言われて抱き締められたんだよ!」

「だ、だだ、抱かれたの!?」


 わかんないのはこっちの方よ。

 思い切り口から心臓まで飛び出そうになったけれど、


「美亜。ボクどうしたらいいんだよ。明日学校休む」


 まずは泣いている幼馴染を何とかするのが先だと思った。


「とにかく落ち着いて。もう一度、最初から話してくれない?」

「だからぁ……今日放課後突然話したいことがあるって誘われて、それでカラオケ行ったら、連れションしようって」

「で?」

「やけに真面目に言うから、ひょっとしてって思って。問い詰めたら誰かに聞いたみたいで、ボクが女だって知ってて」


 わたしじゃない。他の候補を必死に考えようとしたけれど、紅男以上にわたしの頭の方がパニクっていた。


「それで女だから好きだって?」

「ううん。男だと思ってたから好きだったって」


 意味が分からない。


「男だから好きってこと?」

「よく分かんないよ。とにかく、ボク、どうすればいい?」

「それさ、桜庭君にもう一度会ってちゃんと説明した上で、気持ちを確認した方がいいよ。そうしないと紅男、きっと後悔する」


 そもそも紅男の前に、わたしも桜庭くんに対して確かめたいことがあった。


「わかった。けど、どうやって説明すればいいと思う?」

「任せて。わたしにね、考えがある」


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