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恋愛ゲームの友人ポジションの男が、ある日突然女になった話

作者: MOZUKU

「たく、しょうがねぇな。美代みよちゃんは水族館が好きみたいだぜ。」

「おぉ、流石は友則とものり。ありがとう♪恩に着るよ♪」

「やれやれ、今度昼飯おごれよ。」

「分かってるって♪じゃあまた明日学校でな♪」

「おう、おやすみ。」

俺の名前は岡崎おかざき 友則とものり。高校3年生で受験生なのだが、友達の恋の応援という訳の分からない御節介を焼いている。

高校に入って今まで、自分に彼女が出来たことなく、持ち前の情報収集能力の全てを使い、情報を友達である天野あまの 浩介こうすけに捧げている。自分でも何でこんな割りに合わないことをしているのか意味が分からないが、浩介に頼まれると不思議と断れん。

さてさて、今日集めた情報をノートにまとめておくか。

いやぁ、本当に俺は友達思いな男だぜ。

・・・はぁ、本当に何でこんなことしてるんだろうな。



"ジリリリン!!"

目覚ましの音とともにベッドから起きる。俺の朝のいつものルーティンは洗面所に行き顔を洗うところから始める・・・ん?なんかおかしいな。

気になって鏡を見てみると、明らかに異常な事態が発生していた。だって鏡にはピンク色のロングヘアーの美少女が居た。

俺が自分の顔に右手で触ると、鏡の美少女も自分の顔に右手で触る。俺が右手の人差し指を右の鼻の中に突っ込むと、鏡の美少女も指を鼻に穴に突っ込む。

なるほどな。これはおそらく俺だ。美少女が鼻をほじるわけ無いからだ。あと鏡の前に立っているんだから俺の姿が鏡に映るのが道理である。問題なのは何故俺がピンク髪の美少女になってしまったかである。

「とうとう、この日が来たのね。」

「お、お袋!?」

気が付くとお袋が後ろに立っていた。意味ありげなことを言っているので、どうやら俺がこうなった理由も知っているのだろう。てか、今の俺、声も女性声優並みにキレイになっとるな。

というわけで居間でちゃぶ台を挟んで母と話すことにした。

「で、どういうことなの?見た目は置いといて、ある筈の物が無くなり、無い筈の物が付いてるんだが。」

前者は言うのは憚れるが、後者はおっぱいのことである。さっき触ってみたがDカップはあるとみた。

「落ち着いて友則。とりあえず落ち着くの。落ち着きなさい!!」

「いやいや、お袋が落ち着けよ。俺は落ち着いてるからさ。」

とにかく早く教えてほしい。情報通の俺が自分のことを知らないなんて恥である。いつまでもこんな状況は耐えられんな。

「オホン、そうね。じゃあ、説明するわね。我々岡崎家の人間は16〜18歳の間に体に異変が起こり、男女の性別が逆転してしまうの。」

「えっ?・・・そんなスラスラと重大なこと言っちゃうの?証拠とかある?」

「実は私も元は男の子。ほら私が男の子の頃の写真。」

古びた一枚の写真がちゃぶ台の上に出された。そこに写っていたのは筋肉ムキムキの学ランを着た、男塾に出てきそうな髭面の男だった。

「こ、これがお袋?これお袋なの?」

「そうよ♪ほら泣きぼくろが一緒♪」

あっ、本当だ♪泣きぼくろが一緒だ♪・・・って、それだけで同一人物ってことにはなるまいよ!!

こんなゴリゴリの漢が、こんな華奢な女になるなんて信じられん。が、現実的に俺の体が女になってるんだから理解するしかあるまい。

「分かった。もう信じるよ。ムチャクチャだがここでゴタゴタ言っても仕方ない。」

「流石私の息子、順応性が凄いわね。」

「だけどよ。俺は女子の制服なんて持ってねぇよ。学校どうしよう?」

「こんなこともあろうかと、母は女子の制服と女子の下着を買ってあります。高校にも事情を話しておいたから。」

「グッジョブ♪マイマザー♪」

高校にこの事情を説明したところで飲み込んでくれるか甚だ疑問だが、やはり俺の母、やり手である。

女子の下着も、女子の制服も着ることに何の抵抗も無かった。どうやら身も心も女子になってしまったようである。

「いってきまーす。」

「食パンはくわえて行かなくて良いのー?」

「そんなテンプレはしねぇよ。」

さてさて登校である。人々の主に男子からの視線を感じる。分かる、分かるぞ男子諸君。こんな美少女が歩いてたら見ちゃうよね。

美少女のことは散々調べた俺だが、まさか自分が美少女になるとはな。まぁ、見た目や性別が変わっても、やることは変わらない。俺の調べた情報を浩介に伝えるだけである。

だが一つ懸念があるとすれば、この姿を見て浩介が俺だと気が付かないかもしれない、というか絶対に気が付かないんじゃ無いだろうか?容姿も顔も骨格もガラリと変わってるんだ。こりゃ信じさせるのは骨だな。

と、そうこう考えてたら、前を歩く見知った男子生徒の後ろ姿、あの冴えない感じ、あれは浩介だ。問題を先延ばしにしても意味はない。とりあえず話しかけてみよう。

「よぉ、浩介。おはよう。」

「えっ、アンタ誰?」

おうおう予想通りすぎて、面白みが何一つねぇな。

「俺だよ俺。友則だよ。」

「いやいやいや、そんなわけないじゃん。だってアイツ男だぞ。」

あー、どうしよう。何か浩介の弱みの情報でも言ったら信じるかな?

「浩介の右のお尻には青い蒙古斑がある。」

「えっ?」

「浩介は中学の修学旅行の時、ジュースを飲みすぎてお腹を壊して・・・。」

「ちょ、ちょっと待て!!どうしてそんなことを君が知ってるんだ!?」

「だから俺が友則だからだよ。」

「いやいやいやいやいやいや。」

「えーっと、浩介は小学生の頃にジュースを飲みすぎて・・・。」

「や、やめてぇ・・・公衆の面前だからここ。」

このあと、二週間に渡り、何度も何度も説明をして、何とか俺が友則だと分かってもらった。

これで一件落着かに思えたのだが、ここで別の問題が生じた。

「な、なぁ、友則。今度遊園地に行かないか?」

何と俺が浩介からデートに誘われ始めてしまったのである。おいおい、これって俺が卒業式に伝説の樹の下で告白されるパターンじゃねぇだろうな。

まぁ、俺ばっかりに構って、今まで仲良くしてた女の子達の頭の上の爆弾が爆発しないことを祈るのみだ。





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