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転入生は3分聖女。

※パロディです。細かいことは気にせずお楽しみください。

 やっほい学園――どうにも気が抜ける名前だが、語源はとても神聖な言葉なのである。『やっほい』とは創世記時代に文明を作った異世界人が神を讃える時に使っていたという諸説があるのだ。


 まぁ、そんなうんちく話はともかく。

 そのやっほい学園には、一つの噂話があった。


「ちょっとリュナン聞いてよ~。僕、ほんとに『3分聖女』見たんだよ! 髪が真っ白の女の子でさ~、すんげぇ小さくて可愛いの!」

「はいはい。どうせ夢の中でだろ? それよりバルサ、試験余裕だな」


 その朝。教室内ではいつもより緊張感が走っていた。

 試験直前特有のあれだ。暗記カードと睨めっこしている者もいれば、諦めて寝ている者もいる。こうして「僕、聖女さまにちゃんとお菓子あげたから」と友人の邪魔に勤しむ者もいる。


 3分聖女とは、いわゆる学校の七不思議みたいな与太話である。

 どうやらやっほい学園には齢十八歳の事務員がいて。彼女ひとりが学園の運営にまつわる事務をこなしているらしい。どんな仕事も3分で処理してしまうのだとか。そのため、彼女は昼夜を問わず働きづめであり、ごくたまに食事を求めて学園内を徘徊することがあるという。そんなくたびれた彼女にお菓子をあげると、彼女が奇跡をかけてくれて試験でいい点数が取れるのだという。


 だけど、あくまで噂である。都市伝説だ。

 そんな非現実的なことを一切信じないリュナンは暗記カードから目を離さない。


 そんなこんなしていると、担任が教室に入ってくる。

 リュナンたちの担任はセバスという名の初老の紳士だ。今でこそにこやかだが、若かりし頃は『鮮血の教師ブラッド・ティーチャー』なんて恐ろしい異名が付くほど怖くも優秀な先生だったらしい。


 生徒らがパタパタと席に戻った後で、セバス先生が今日もにこやかに話し出す。


「えー、今日は皆さん承知の通り定期試験の日ですが、転入生がいます――さぁ、ノイシャさん」


 教室の外からてくてくと。

 入ってきた少女は、まるで小学生のように小柄だった。肌は白く、手足は枝のように細い。おどおどとした様子もまた彼女の幼さを増長させていた。そして、何よりも目を引くのが彼女の髪色。一部分を除いて真っ白なのだ。


 リュナンが黙ったまま驚いていると、前の席に戻ったバルサが「聖女さま!」と声をあげている。


 ――あれが、噂の……?


 ガヤガヤしだした生徒らをセバス先生が咳払いで黙らせると、先生のいつも以上ににこやかな笑みに圧されて、ノイシャという少女が話し出す。


「ノイシャ=アードラといいます。先日まで……事務員として働いてましたが、今日から学生することが私の仕事になりました。学生って何をしたらいいのか、よくわからないんですけど……一生懸命に学生しますので、どうぞよろしくお願いいたしますっ!」


 とりあえず、健気だった。

 学生を頑張るとか、ちょっと意味わからないけど……とりあえず可愛かった。


 リュナンが唖然としながらそんな感想を抱いていると、セバス先生が涙をだらだら流して拍手をしていた。


「とても素晴らしい挨拶でしたな……。ノイシャたんは元理事長の養女として働かされていたのですが、この度理事長が急遽逮捕……ごほん、退任することになりまして。これを機に生徒として入学させることになりました」


 途中、喉の調子が悪くなったようだが……気にしないでおこう。

 元より横領など悪い噂が絶えなかった理事長である。セバス先生曰く、今後の経営は国に委託されることになったとのことで、私立から国立に名称も変更になるらしい。深く考えちゃいけない。セバス先生のノイシャへの呼称を含めて、聞き流さなければいけない部分である。


「さぁ、それではあなたの席はあちらですぞ。いきなりの試験で大変でしょうが、できる限りでいいですからね」

「はい、試験は学生の大切な仕事ですもんね! 全力で頑張りますっ!」


 両手こぶしを握ってやる気を見せる転入生、可愛い――はともかく、ようやく試験が始まるようだ。リュナンは気合を入れる。この試験では、学年一位七連覇がかかっているのだ。生徒会長でもあるリュナンとしては、その威厳のためにも手を抜くわけにはいかない。


「それでは問題用紙は行き渡りましたかな……それでは、試験開始っ!」


 リュナンはペンを取り、問題用紙を睨み始めた。

 まずは数学の試験だ。最初に基礎の計算問題があり、その後文章問題。最後の証明問題が難問……と見せかけて、中盤にかなり高難易度の問題がある。解く順番に工夫が必要だな、と、リュナンが計算問題に取り掛かり始めた時だった。


「あ、あの~……」


 白髪の転入生がそろりと挙手をしている。

 まだ試験が開始して三分程度である。トイレにしても早すぎるだろう。筆記用具でも忘れたのだろうか――誰もがそう予想した時、彼女が言った。


「全部解き終わったのですが、残る時間は何をしたらいいのでしょう?」


 ――は?




 一日三科目。試験期間は三日。

 その全ての教科で、転入生ノイシャは開始三分で解答用紙を置いて、退席していったのだった。

 

まずお知らせから。

書籍1巻、2月1日にアース・スタールナさんから発売します!

Amazonなどの予約も始まっているようなので、ご興味ある方は検索してみてください。

書影の公開許可がでましたら、こちらでも公開しますね。

ノイシャ、可愛いよ!!

ちゃんとみんなピンクのジャージを着ています!!


そして、なぜこんなパロディ始めたかと言えば……。

書籍のラスト付近で変更した点がありまして。

そのため純粋に続きの「結婚式編」をなろうに載せることになると、細かいところで書き分ける必要が出てきそうになりました。

今後続巻となった時、書籍となろう版で同じストーリーの書き分けできるほど器用じゃない! ……ということで、なろう版では今後、不定期更新でこんなお気楽な『学園編』を書いていくことにしました。どうかご理解の程、宜しくお願いいたします。


『結婚式編』は、(出せたら)2巻で書きますので!!

ひとまず1巻の購入を検討していただきましたら幸いです。


また、そのため前2ページ部分は週明けに削除させていただきます。

ブクマの位置など変わるかもしれませんが、ご容赦いただけましたら幸いです。


学園編の続きはまた来週末にでもあげますねー!



あとあと、新作長編も投稿しております。

『ど底辺令嬢に憑依した800年前の悪女はひっそり青春を楽しんでいる~猫系天才魔術師さま、惚れても無駄よ。1年後に私は消滅してしまうから~』

https://ncode.syosetu.com/n9868hy/

(↓にリンクも貼ってあります)


こちらも良ければ読んでみてくださいね!

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