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99 優しさなんて持ち合わせておりません

 タマさんに拾われた剣が彼の手の中で形を変える。

 守護騎士さんが持っていた時は西洋剣の見た目だったのに、刀の形になって落ち着いた。


「ィー」(拾った者の職業によって武器の種類が変わるのであろうか? アロンダイトブレード、魅了付加能力のある刀のようでござるな。攻撃力も高いし、悪くない品でござる)


 へぇ。

 名前はダサいけど、面白い能力付きの武器だね。


「ドロップはそれだけか? それ、拾った奴にロックなわけではないのだろう? ならば、うちにも所有の権利があると思うんだが?」


 〈histoire〉(イストワール)のギルマスさんが言ってきた。


「ィー」(む。それもそうでござるな。ではどうする? ジャンケンでもするでござるか?)

「アプリでくじ引きするっていう手もあるぞ」

「ィー」(それも悪くないでござるな。どちらが良いかギルメンと話し合ってみるでござる。そちらも後々もめぬよう、話し合って欲しいでござる)


 お互いのギルドの代表者間での話し合いは終わりかな?


「ィー?」(で、どちらが良いでござるか?)


 タマさんが訊ねてくる。

 けどさ、それより、タマさんが剣を拾って暗黒騎士オリヴィエの討伐にチェックが付いたら、クエストが更新されたんだけど。

 歪みがさ、もわもわ~って広がり始めてるんだけど。



【魔族の陰謀阻止】

 守護騎士を倒しても歪みの拡大は止まらない。ここまで拡大した歪みは自己防衛しながら拡大スピードを加速させる。

 歪みを消滅させ、魔族の陰謀を阻止しろ!



 ドロップアイテムをどうするかの話は、後からにした方がいいんじゃないかな?

 って、さっき倒したばかりの守護騎士さんが歪みからまた出てきたんだけど!?

 〈histoire〉さんも驚いてるよ!


「ィー」(おい〈histoire〉。お前たち、【暗黒騎士オリヴィエ】ってクエクリアになってるか? 守護騎士討伐しろって奴)

「何を馬鹿なことを。今さっき倒したばかりだろ。もちろんクリアに――」

「なってないぞ!?」

「いやいや。その後ろの歪みまで潰せっていう流れでクエストもらったんだから、歪みを潰してクリアになるんじゃ?」

「ィー」(残念ながら、うちのギルドの【暗黒騎士オリヴィエ】クエはクリアになってる。ついでに、次のクエストが発生してる)

「……」

「ィー」(さっきのドロップはうちのだな。ついでに、その守護騎士、たぶんお前たちのクエ用の奴だ。頑張れ。今度は邪魔しない)


 しれっと、さっきは邪魔をしたと自白したような気がするんですが、お姉ちゃん。


「ィー」(こうして同じフィールドで同じタイミングで戦うことになったのも縁だろう。餞別だ!)


 お姉ちゃんがインベントリからうっすら輝く珠を出した。

 それを放り投げて撃ち抜くと、フィールド一面が優しい光に包まれる。

 ギルド関係なく、このフィールドにいるプレイヤーキャラ全員のHPMP全快状態異常オールクリアされた。


 結構貴重でお高いアイテムだと思うんだけど、あのドケチなお姉ちゃんがよく奮発したなぁ。

 初めて調合したアイテムの試し使いなんてして迷惑をかけたお詫び?

 あたし達もさっきの戦闘でかなり消耗してボロボロだったから、その回復がてら、気まぐれで〈histoire〉さんも回復した?


『ゴールド。ついに損得関係なしに人に優しくすることを覚えたんだっぺか?』

『アホいえ。これは、あんだけ頑張ったのに守護騎士を倒したってカウントされなかったあいつらから、うちが報復されるのを防ぐために決まってるだろーが。そこそこ大きな施しを受けると、不満はあっても呑み込みがちなのが日本人だからな』

『えぐぃぃ』

『鬼ですわね』

『ツンデレで冷たく言ってるんじゃなくて、本音で言ってるっぽいのがまた』

『お主、いつか背後から刺されるやもしれぬぞ? 気を付けた方がいいのでは?』

『うるさいぞお前ら! それに、ゲーム内で背後から刺されたって大して被害ないわ! むしろし返して訴訟して、相手の持ってる貴重品やら金やら巻き上げてやるわ!!』

『鬼を超えた何かでしたわ』


 まぁね。

 お姉ちゃんがアイテム大奮発してくれたお陰であたし達は全快できたわけだし、これで〈histoire〉さんから絡まれる率が下がるっていうんだったら、文句はないわけで。


 〈histoire〉さん、非常に微妙な空気を醸し出してるよ。

 本当はうちに八つ当たりしたいんだろうけど、全快させてもらったのが効いてるのか、大々的にうちに攻撃や口撃はしてこないし。


「ィー」(まぁ、細かいことは今は忘れるでござる。他のギルドまでここに到達してしまうと、事態がさらにややこしくなるかもしれぬし。早いところ歪みを潰すでござるか)


 拾ったばかりの刀を手にしたままタマさんが歪みに斬りつけた。

 ただの空間かと思いきや、黒いもやもやに攻撃すればダメージ入るんだ。

 データの不思議!


 一方の〈histoire〉さんは、タマさんの発言が聞こえたのか、真剣な顔になって守護騎士さんの相手を始めたわけです。

 そりゃ、他のギルドが増えて守護騎士も増えて、さっきのぐだぐだの再現とかなったら地獄どころじゃないもんね。

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i396991
― 新着の感想 ―
[一言] さすが鬼ww あちらは文句いってもクエスト進まないもんね。がんばれー(棒)
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