97 守護騎士さんの攻撃1発で泡になった人いるんですけど
「ィー」(死ぬなよスカイ)
「ィー」(もちろんだっぺ)
見ているこっちがハラハラするようなHPの動きをする空さんの横をお姉ちゃんが駆け抜けていった。
って、見てる場合じゃないや。あたしも攻撃しなきゃ。
先に走っていってるタマさんにあたしも続く。
って、ひゃあ。
守護騎士さんの剣から放たれた真空波に当たりそうになった。
ギリギリで回避できたからセーフ。
あたしの後ろを走っていたらしい〈histoire〉のアタッカーさんはモロに食らって……瀕死になった人が1人とお陀仏したらしき泡が1つ。
攻撃力UPバフの効果がエグ過ぎて怖いよー!!
これ、当たってたらあたしも危なかったんじゃない!?
「ィー!」(スカイが盾をしている時は彼の回復で手いっぱいですから、回復飛ばせませんわよ! 被弾したら自分で回復するか、彼が盾から離れるタイミングまで回復をお待ちなさい)
「ィー」(はぁ~い)
「ィー」(了解でござる)
「ィー」(……って、今は私もか。了解だ)
新生守護騎士さんの攻撃、ほんと危険。
攻撃より回避に重点おいとこ。
タマさんも同じスタンスみたいだし。
〈histoire〉のアタッカーさん達も同じような動きしてるし。
守護騎士さんのHP、もう完全に回復しちゃってる状態で、空さんが攻撃して与えたダメージもすぐ回復しちゃってるんだよね。
正直、お姉ちゃんがHP持続回復薬の効果を消してくれるまではお手上げ状態っていうか。
「1分だ! スイッチするぞ〈ジャスティスゼロ〉の!」
「ィー」(助かったっぺ~。けれど勘違いしないで欲しいっぺ。うちは〈ジャスティスゼロ〉じゃないっぺ。怪人戦隊ンジャメナEXっぺから、きっちり覚え――)
「ィー!」(余計なお喋りはやめてさっさとタゲを〈histoire〉にお渡しなさい!!)
「ィー」(は、はいっぺ~)
「はいっ!!」
〈histoire〉の騎士さんが守護騎士さんに〈挑発〉を使ってタゲを強制奪取。空さんはその場を離れて少し後ろに下がった。
「ィー」(きついっぺコレ。朱石歴長いつもりだったけど、今までの中でもベスト3に入るきつさだっぺ)
「ィー」(1人を支えるのにこれだけ本気になるのも久しぶりですわ)
この2人が本気できつそうに言うのって珍しい。
んまぁ、空さんのHPの動き見ていると、たまにガクンと半分以上削られたりしてるんだよね。
多分、空さんや姫様は、相手の動きから大きい攻撃がくるってわかってて、防御スキルとか回復のタイミングを合わせてると思うんだけど。
その状態で、HPお化けの空さんでアレとか、ほんと恐怖だよ。
あ、守護騎士さんのマントの下からお姉ちゃんが出てきた。
前線から少し離れて、空さんの近くまで下がる。
『中和剤使えたの?』
『まだだ。攻撃に当たれないから、鎧の隙間探しに手間取った。しかもやっぱりマントの下のすんげぇ狭い部分しか隙間ないし』
お姉ちゃんがインベントリから注射器を取り出す。
『それが中和剤?』
『ゴールドぉ、それぇ、HP持続回復薬って名前ついてるけどぉ』
『うほっ!? ああ、マジだわ。手が滑ったわ。攻撃避けるのに気を使いすぎて疲れてるのかもしれん』
慌てた様子でお姉ちゃんが注射器をしまう。今度は中身の色が違う注射器が取りだされた。
うん、こっちはHP持続回復停止薬ってなってる。
『はあ。これを打ちこむためにまた前線に居座らないといけないのか。しかもあいつ、後ろにいるとそれはそれで後方攻撃飛ばしてくるんだよな』
ゲンナリしながらお姉ちゃんが守護騎士さんを見る。
その気持ち私もわかる。
今は攻撃の意味がないからって理由で攻撃手抜きできる、っていうか傍観してるだけのあたしだけど、HPの持続回復が無くなったら攻撃しにいかなきゃいけないんだよね。
あの恐怖の攻撃を避けながら。泣きそう。
お姉ちゃんが守護騎士さんの背後に回った。
お姉ちゃんが背後を取ったとたんに、彼は回転して周囲に範囲ダメージをバラまく。
それを避けたお姉ちゃんが守護騎士さんのマントの下にもぐりこんだ。
でもさ、守護騎士さん、空さんや〈histoire〉の騎士さんを攻撃するのにガンガン動いてるから、お姉ちゃんも同じ場所にへばりついてるのが難しいっぽい。
たまに後方も含んだ範囲攻撃くるし。
あれ、再使用のタイミングがあるんだろうね。
後方攻撃が来るちょっと前にはお姉ちゃんがマントの下から離れてるから、時間を計りながら作業してるのかもしれない。
そんなこんなで守護騎士さんとお姉ちゃんが格闘すること数分。
「ィー!」(っしゃ打ち込めたぁあああ!)
マントの下から出てきたお姉ちゃんが叫んだ。そのまま一目散に後方に逃げてった姿は見なかったことにしておいてあげるね。
「ィー」(でもHPの回復止まってないんだけどー!?)
「ィー」(効果が出てくるまでに少し時間がかかるんだと思うぞ)
『持続回復薬の時も、回復が始まるまで少し時間があいたし』
あ、そうなんだ?
なんて喋っているうちに、じわっと守護騎士さんのHPが減りだした。
盾役の人が攻撃している分だけしかダメージ入ってないから、ほんとにちょっとしか削れてないんだけど、そこから回復はしてない。
これ、ようやく普通の戦闘に戻れたんじゃない?
「ィー」(よし。ここからは私も攻撃に回るわ。長引くと盾と回復組が持たないから、まぁ頑張ろう)