94 推定無罪
※あたし達側の守護騎士を守護騎士1、〈histoire〉さん側の守護騎士を守護騎士2と呼んでいます。
守護騎士2さんの方に颯爽と走っていくお姉ちゃん。
その彼女を〈histoire〉さんの攻撃から守る&守護騎士2さんにアイテムを使うことを感付かれないように、あたしと空さんとタマさんも、お姉ちゃんを囲むように陣取りながら〈histoire〉さんの塊の方に突っ込む。
あははは。
あたし達、〈histoire〉さんからめっちゃ攻撃されまくるんですけど。
単体攻撃は全部空さんに行くんだけど、範囲攻撃があたしにまで飛んできまくり。
普段なら回避して被ダメを減らすんだけど、今の状態で避けて立ち位置がずれると、お姉ちゃんが〈histoire〉さんから丸見えになってよろしくないしな~。
ま、姫様がイライラしながら回復してくれるだろうから、あたしは何も考えずにお姉ちゃんの傍で踊ってよ。
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( ・ω・ )( ( つ ヽ ( ・ω・ ) )
( つ ヽ 〉 とノ ) ( つ ヽ
〉とノ ))__ノ^(_) 〉 とノ ))
(__ノ^(_) (__ノ^(_)
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ノ つ つ ● )
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し′
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Y ̄∥y/∥ ̄`Φ
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乂/ ノハ ヽ ̄
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「舐めてんのか貴様らぁあああ!」
「ィー」(いえいえそんな。気持ちよく踊っているだけです!)
「即刻その首よこせ!! そしてどけ! 守護騎士を攻撃できんだろうがぁあああ!!」
「ィー」(ここが、舞うには良い足場なのでござるよ)
「足場なんてどこも変わらんだろうが!」
「ィー」(この、足裏から伝わる微妙な感覚の違いがわからないだなんて、ニブチンっぺね~)
「ムキー!」
わかりやすく〈histoire〉さんの怒りのボルテージが上がってる。
これ、煽り続けたら、バーサクの状態異常でもつくんじゃなかろうか。
攻撃対象を自分で選択できなくなるけど、攻撃力がすんごい上がるっていう状態異常なんだけどさ。
『ゴールド、守護騎士さんへの仕込みまだー?』
『もうちょっとだ。あと10秒たったら後退していいぞ』
『あいよ~。レッド、カウントよろしくっぺ~』
『了解した』
踊りもあと10秒でお終いかぁ~。
〈histoire〉さんの方にお尻向けて尻尾振っとけばいいかな。
回れ右したら守護騎士2さんの姿が見えた。
そんな彼のマントの下からお姉ちゃんが出てくる。
いや、あんた、マントの下から出てくるって、何してたんですか?
『ゴールド、その、エフェクトやアイコン表示無しで敵のHPを持続回復させるアイテムって、どんなやつなの?』
『どんなやつって?』
『見た目というか分類というか。水とか、機械とかって括りのよーな』
『ああ、そういうこと。液体だよ。対象に注入すると効果を発揮するっていう不思議液体』
『ほえー』
『対象に注入しないと効果を発揮しないって、また、扱いにくいアイテムですわね』
『だよな~。まぁ、サン=ジェルマンのクエで材料が揃うようなアイテムだからな。色々変でも納得っちゅーか』
『あの人自体がおかしいもんねぇ』
だから、そのアイテムを使うお姉ちゃんも、守護騎士2さんのマントの下にもぐりこむなんておかしな行動をしていたと。
『ピンクがおかしな妄想をしているような気がするんだが』
『してないよ? おかしな人関連で完成したアイテムだから、使う時にもおかしな儀式でもしなきゃならないのかなって思っただけ』
『例えば』
『対象のマントの中にもぐりこむとか』
『あーれーはー。守護騎士のやつ全身鎧に覆われていて、注射器をさせる場所がマントの下の肩甲骨の間しかなかったんだよ。それも、鎧と鎧の隙間のすんごい狭いところしかなかったんだぞ。見つけた私凄くね?』
変態の儀式じゃなかったんだ。
『10秒たったでござるよ』
『こっちの作業も完了だ。撤収!』
あたし、空さん、タマさん、お姉ちゃんの4人は、〈histoire〉さんから距離をとった。
実は、うちの守護騎士1さんも空さんにくっついて守護騎士2さんの近くに移動していたものだから、カオス状態もいいところでさ。
その状態がようやく解消だよ。
いや~。
よそのギルドとごちゃごちゃしながらじゃない戦闘っていいですね。
自分達のターゲットを倒すことに集中すればいいだけなんで!
うーん、解放感!
戦闘中だけどちょっと背伸びさせてね。
ついでに守護騎士2さんの方を見てみたら――。
『あのさ、あっちの守護騎士さん、たまに微妙にHPが回復してるように見えるんだけど』
『俺にもそう見えるっぺ~』
『あれさぁ、私達が何かしたって思われるよねぇ。かなりの確率で』
『けれど証拠は無い。推定無罪だ』
そりゃそうなんだろうけど。
凄い罵りの言葉が飛んできそうだなぁ。
なんとなくあたしは虚空を眺めた。