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93 一番の大根役者は誰だ

「ィー」(そろそろDotが切れるねぇ。上書きしなきゃぁ)


 棒読みの腐ちゃんが暗雲を呼び出す。

 主に〈histoire〉(イストワール)さんの上に継続ダメージ(Dot)を与える雨が降り注いだ。


「おい、今魔法撃ったお前! せっかく停戦してやったのに、こっちに攻撃してくるとは何考えてるんだ!?」

「ィー?」(えぇ? 守護騎士に攻撃しただけだよぉ。でもぉ、そっちにもちょっと雨がかかっちゃったねぇ。ごめんねぇ)

「こっちにもかかったどころか、うちを中心に雨降ってるだろ!」

「ィー」(違うよぉ。守護騎士へのDotを維持するための魔法だもん~。証拠にほらぁ、守護騎士ぃ、きちんと雨に降られてるもん~)

「そいつ、範囲ギリギリに引っ掛かってるだけじゃねーか!)


 意見、ごもっとも! 〈histoire〉さんよく見てる。

 そして、あたし達が口論してる間も守護騎士さんとの戦闘は続いてるんだよね。

 うちの守護騎士さんが大きく剣をふるう。

 剣が横なぎにされて、風の刃がプレイヤーを襲う。守護騎士さんを中心に、扇型状にダメージゾーンが生成されたよ。


 うちの守護騎士さん……ああ、なんかうちとかあっちとか言うの面倒くさいな!

 ここから先では、あたし達の守護騎士を守護騎士1、〈histoire〉さんの守護騎士を守護騎士2って呼ぶね。


 で、守護騎士1さんのタゲを持っている空さんは、守護騎士1さんの攻撃にはもちろん被弾するでしょ?

 空さんってば、〈histoire〉さんや守護騎士2さんの至近距離にいるものだから、〈histoire〉の前衛さんもこの攻撃に被弾。


「おいぃいいい!? そこの直結、変な位置に立ってるんじゃねぇ!」

「ィー?」(変な立ち位置? 俺は、範囲攻撃が来てもPTメンバに攻撃が届かないように、守護騎士の向きを調整してるだけっぺよ)

「その向きで戦うのはわかるとしてもだ、うちともうちょっと離れてくんない!?」

「ィー」(あ? ああ。いつの間にか随分近付いてたっぺね。こりゃすまんっぺ)


 棒読みで謝りながら空さんは〈histoire〉さんから離れる。

 けど、「うわっ」「わぁ」なんて棒読みの焦り声をあげながら、また近くに戻るし。

 〈histoire〉さんの方が空さんから離れようとしても、じりじり近付いて離れない粘着性。

 この人にストーキングされたら色々と辛そう。


 それはそれとして、あたしとタマさんも〈histoire〉さんの近くで戦ってるの、わざとじゃないからね。

 守護騎士1さんが〈histoire〉さんの近くにいるせいで、あたし達が守護騎士1さんに範囲攻撃したら〈histoire〉を巻き込んじゃうのも事故ダヨ。


「ィー」(あ、足が滑った~)


 あたしは下手な芝居をしながら〈histoire〉さんの前線部分にトットットと移動。


「ィー」(わ、わ、目の前に守護騎士!? 攻撃されちゃう!? 怖いよ~!)


 大根役者なのは認識しながらも芝居は続行。

 〈histoire〉の前衛さん達を巻き込みながら、守護騎士2さん相手に旋風脚を放つ。


「ィー」(えいえい! 硬いナー)


 旋風脚旋風脚旋風脚。

 あ、くそ、〈histoire〉の前衛さん達、あたしから距離をとっちゃった。

 〈histoire〉さんの守護騎士2さんへの攻撃の勢いを殺ぐっていう意味では成功してるような気もするけど、向けられる冷たい視線が痛いです。


「ィー」(うちの守護騎士と勘違いして、そちらの守護騎士さん殴ってました。ごめんなさい)


 ぺこりと頭をさげて、あたし、そそくさとその場から撤収。

 そんなこんなで、あたし達の失礼な攻撃はあちらにご迷惑をおかけしているはずなんだけど。

 〈histoire〉さん達は口論と範囲魔法にあたし達を巻き込むくらいで、前衛職がこっちまで出張ってきて乱戦とかはしてくれない。


『あいつら理性強いな。楽に乱戦に持ちこめるかと思ってたんだが』

『乱戦のどさくさに紛れるより、事故を装ってわたくし達があちらに行く方が早くて楽かもしれませんわね。ピンクやレッドが先にやってますし、後衛のわたくし達がやっても「またか」で軽く流して貰える可能性が高いと思いますわ』

『だなぁ。よし、ホワイトの意見を採用だ。私も前に出る。仕事を気取られたくないから、誰か近くにいて私の眼隠しになってくれ』

『はぁ~い、はぁ~い、あたしやるよ~』

『拙者も』

『俺も。どうせなら、前衛まるごとあっちの守護騎士に突っ込もうっぺ』

『ゴールド殿が事故であちらに行ってしまう。それを守るために、拙者ら前衛が流れ込むという筋書きはどうでござるか?』

『三文芝居にしかならなさそうだが、まぁいいだろう。採用だ』


 三文芝居って酷いなぁ。でも、あたし含め、みんなの芝居が酷いのは否定できない。


『じゃ、いくぞ』

「ィー」(足が滑ったぁ!)


 滑ったなんて言いながら、お姉ちゃんは勢いよく守護騎士2さんの方に走っていく。

 足取りに危なげ一つもないんですけど。

 これは、お姉ちゃんが一番大根役者なんじゃ。


 何はともかく、あたしと空さんとタマさんも〈histoire〉さんの方へと突っ込んだわけです。

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i396991
― 新着の感想 ―
[良い点] この回めっちゃ面白いです。 まず「うちの守護騎士さん」というワードがまるで味方みたいで面白いし、そう考えると「敵の敵は味方」の理屈で守護騎士2も味方で、みんな味方というカオス状態(笑)。 …
[一言] やだーーーwwこのギルドとは絶対に関り合いになりたくないーーーwww
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