87 資源枯渇は進むよどこまでも
空さんとお姉ちゃんが木を切り倒して、あたしと腐ちゃんが枝を落とす。
タマさんが角材に加工。
姫様は出来上がってきたものや副産物を仕分けして、それぞれがインベントリに持つ分を分けている。
うん。
これは確かに2手に分かれるよりみんなで動いた方が早い。
荷物も平等に分担できるし。
6人でやれば、角材・太めの枝150個なんてすぐに製作できる。
本当にあっという間に集め終わったんだよ。
なんだけど、空さんとお姉ちゃんの伐採は止まらない。
「ィー」(木材の数足りたよー?)
「ィー」(珍しいアイテムがあったら収集してくのもこのイベントの目的の1つだって、イベント始まる前に言ったろ)
「ィー」(この木集めてくの?)
「ィー」(ああ。1時間くらい全員で伐採すれば、いい量の丸太が手に入るだろ)
本当はこの林に生えてる木、全部持っていきたいんだけどな。お姉ちゃんがそうつぶやいてたのは聞かなかったことにしておくよ。
ギルド倉庫が拡張されてから、アイテム収集の限度のタガが外れてる気がするのは気のせいですか。
まぁ、ここで入手しておいたアイテムは、回り回ってあたしにも恩恵をくれるわけで。
今までノータッチだった採取能力系のレベルも上げられるし。
お姉ちゃんの指示に全力で従うのがあたしの利益!
割り切ったあたしはキコリになった。
ひたすらに斧を振るった。
回りのみんなも黙々と伐採してる。
そうして1時間後。
あたし達の本気に曝された林は、1/3くらいハゲ地になった。
「ィー」(1/3も木採っちゃったら、他のギルドさん困るような?)
「ィー」(弱肉強食の世界は辛いな。遅かったやつらが悪いってことで)
しれっとお姉ちゃんに流された。
切りだした木材を各々インベントリに収納してしまえば、あたし達がここで何をしたのかは全くわからない。
あたしは、ここに来る予定の後ろのギルドさん達に手を合わせておいた。
まぁまだ木残ってるから、何ギルドかは採れるから。
一仕事終えたあたし達は次の仕事場所に移動。
今度は、稲みたいな植物が一面に生えている場所に着いた。
姫様が稲らしきものの穂を1房回収してマジマジと見ている。
「ィー」(脱穀と同じ操作をしてやれば米になりそうですわね。とりあえず穂の部分だけ別回収していただけます? 藁は縄にどうぞ)
「ィー」(稲刈りは俺に任せるだっぺ。農業で鍛えた鎌使いが輝くっぺ!)
「ィー」(藁と穂の切断は拙者がやろう)
「ィー」(切断された稲藁ぁ、魔法で枯れさせるねぇ)
「ィー」(んじゃ、私とピンクで縄をよるか。ホワイト、仕分けよろしくな~)
「ィー」(任されましたわ)
ささっと仕事分担が終わって刈り取り開始。
って言っても最初はみんなで刈り取りから始めたんだけど。
もちろんあたしは鎌なんて持ってなくて、お姉ちゃんが持っていたやつをいただきました。やったね、鎌ゲット。
ある程度稲の量が貯まってきたらタマさんが穂先を切断。
腐ちゃんは魔法で藁を枯れさせた。
水分が抜けてクタクタになった藁の横にあたしとお姉ちゃんは腰を下ろす。
お姉ちゃんが靴と靴下まで脱いだ。
「ィー?」(なんで裸足になってるの?)
「ィー」(縄よりといえば足指に挟んでスタイルだろ?)
お姉ちゃんは足の親指と人差し指の間に藁を何本かを挟んで、両手に藁を挟んで、手のひらをすり合わせるような動きをした。
あれ?
それだけで何センチか縄ができてるんですけど?
お姉ちゃんが手をすり合わせるたびに縄が伸びる。最初に持った藁の端っこあたりになってきたら次の藁を足して同じ操作をして縄が伸びていく。
何その操作?
「ィー」(藁を2つに分けるだろ? で、藁の片方ずつをぐりぐりとねじって、そのねじった2本をよって1本の縄にするんだよ)
操作をしながらお姉ちゃんが教えてくれるんだけど。
あたしにはお姉ちゃんが手のひらをすり合わせているようにしか見えない。
ううう。
今のあたしに、お姉ちゃんと同じことはできません。
とりあえず藁を数本掴んでぐりぐりねじった。それをもう1本作って。できた2本をよりよりさせてみたら、見た目だけはお姉ちゃんの作ってる縄に近い感じ。
めっちゃ作業遅いけど、これで許してください。
「ィー」(スカイ。米はいくらあっても困りませんから、多めに収穫しておいてくださる?)
「ィー」(藁もだなー。ああドドメ。全部は枯れさせないでくれ。シャキっとした状態の藁じゃないと困ることもあるかもしれん)
「ィー」(枯れた状態の藁もある程度欲しいっぺ~。畑で、野菜の根元に置くのに使いたいっぺよ~)
なんだなんだ。このアイテム大人気だね!
利用範囲が広そう&あたしの縄よりが遅いのもあって、クエストクリアに必要な縄が完成した頃には、稲田の半分くらいが刈り取られちゃってたよ。
アハ……w