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77 sincostan

 あたし達が遭遇したのは〈ルイーダの酒場〉っていうギルドさんなんだけど。

 あちらさん、まだこっちに気付いていないのかな?

 モンスターが出るからそれなりの臨戦態勢ではあるけれど、めっちゃ緊張してるっていう感じはしない。

 のんきにお喋りしてるし。


 そこに腐ちゃんが攻撃魔法をぶっぱした。


「な、なんだ!?」


 とたんに慌てだす〈ルイーダの酒場〉のみなさん。

 事態把握される前にガシガシ打ち込まれていくお姉ちゃんの凶弾と、腐ちゃんの追い打ち。

 恐慌状態の〈ルイーダの酒場〉さんPTにあたしと空さんは肉薄して、空さんはタウント発動。あたしは彼らの祈祷師さんを葬った。


 不意打ちしてごめんね。

 でもさ。PK可能フィールド、それもギルド戦してる状態で、気を抜いてる方が悪いよね。

 え? あたし達のPTだって気を抜きまくりだろって?

 それはそれ。これはこれ。


「新手のモンスターか!? っていうか、レベル150!? 急にモンスターのレベル上がりすぎだろ!」

「待って勇者! こいつら明らかにおかしいわ。ここを徘徊してるネームドで、本来はよけながら攻略しないとならないマップなのか――」


 お話中の所すみません。お命ちょうだいさせてもらいますね。

 賢者さんなんて賢そうな人を残してたらこっちがピンチになりそうだから、早めに潰さなきゃ。


 遊び人、商人、武闘家、他もろもろ。〈ルイーダの酒場〉に集っていた人達20人くらいいたけど、ほとんどがレベル100以下だったから、あっけなく命を刈り取れるわけです。


 残ったのはレベル130くらいの戦士さんと勇者さん。


「俺がこいつらを引きつける。お前は逃げろ勇者」

「待て戦士。逃げるならお前も一緒だ!」


 暑苦しい会話が繰り広げられている中申し訳ありませんが。

 回復魔法を持ってそうな勇者さんを集中的に攻撃して撃破。


「ィー」


 とどめをさした空さんが嬉しそうに雄たけびをあげた。


「くそ、なんなんだお前ら」


 よくぞ聞いてくれました!


「ィー!」(女体の神秘を追うっぺよ!)

「ィー!」(金儲けのためなら努力は惜しまず!)

「ィー!」(とりあえず同性でひっつこうぅ?)

「ィー!」(こんな感じでみんな好き勝手やってます!)


 名乗りあげながらポーズを取るあたし達。4人でもなんとかなるもんだね。


「ィー」(怪人戦隊! ンジャメナEX!)


 ドドーン!

 で、名乗りとポージングが終わったんで、戦士さんもぬっ殺しますね。

 ぽかぽか、えい。

 びくとりー。


「ィー」(この神殿くらいだと、遭遇率が高いのはまだまだ弱小ギルドだから気が楽だっぺな~)

「ィー」(ついでに珠持ちだったらなお良かったんだが)

「ィー」(そこまではぜいたくだよねぇ)

「ィー」(それにさ、そんなにどこのギルドも珠持って動いてるようだと、後で他のギルドの珠取りに行く時が面倒だよね)

「ィー」(それもそうだな)


 気分を切り替えて神殿のギミックを動かす作業に戻る。

 1階のギミックちょっと難しいな。

 広いフロア全体を使って、小さな仕掛けがあっちこっちに仕込まれてるんだよね。

 順番がおかしいと動いてくれない仕掛けもあるし。

 床は三重ですか~。


 1階の中を縦横無尽に走った光は、最終的に下の階へと降りていく。

 それじゃ、あたし達も地下1階に行こうか~。


 って地下への階段を降りようとしたら、あたしの体が勝手に動いた。

 もといた場所には剣が振り下ろされている。

 剣の持ち主はささっと体制を立て直して、あたしに追撃をしてくる。

 攻撃は体が自動で回避してくれている。

 常々思うんだけど、ある程度の攻撃なら自動で回避してくれる武闘家の特性って便利だよね。


 あたしがひょいひょい攻撃を避けている間に、剣を持った冒険者君をお姉ちゃんが攻撃。撃破。

 そんなお姉ちゃんめがけて銃弾が飛んでくる。

 弾の飛んできた方に目を向けると、さっきのギルドとは違うギルドさんが神殿に乗りこんでくる所だった。


 階段を降りようとしてたところを、今度はあたし達が奇襲された形だね。

 こんどのギルドさんの名前は〈sincostan〉。

 えとー? シンコスタン?


 その、〈sincostan〉さんとうち、共に認識した状態になったので、そこからは普通に削り合いが始まるわけです。


 さっきのギルド(名前忘れた)より手ごわい感じ。人数もちょっと多いな。30人くらい?

 タゲは空さんが集めてくれてる。

 その彼をお姉ちゃんが回復してるから、やっぱりこれまでのギルドより強いんだと思う。

 シンコスタンとかいう意味不明な名前なのに。


「ィー?」(ピンクちゃん、相手のギルド、なんて読むかわかるだっぺか?)


 あちらさんと剣を交えながら空さんが訊いてきた。


「ィー?」(シンコスタンじゃないの?)


 ていうか、それ以外に読み方あるの? 素直に読むんじゃないから訊いてきてるような気もするけど。


「ィー」(あれはずばり、サインコサインタンジェントって読むんだっぺよ!)


 空さんから全く予想外の答えが返ってきた。

 言われてみてみれば、あれはたしかに、sin=サイン、cos=コサイン、tan=タンジェント。


「そこの怪人、間違ってるぞ!」


 主戦場から随分と離れた所から声が聞こえてきた。


「sincostanと書いて三角関数と読む!」


 ズガーン。

 これが漫画だったら背景に雷が描かれる場面。

 読めるかあほー!

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i396991
― 新着の感想 ―
[一言] サインコサインタンジェント?って思ったらw まさかの三角関数だったwww 数学苦手だからそこまで連想しただけでも頑張ったのに~( ;∀;)ww
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