75 神秘の泉
「ィー」(それで、どこから回るんだっぺ?)
「ィー」(順当に、一気に一番上の階まで行って、そこから階をローラーしながら下りようか。神秘の泉があるのは地下っぽいから、そうすれば無駄なく祈祷師達の所で合流できるだろうし)
「ィー」(りょうかぁあいぃ)
ちゃちゃっと話し合ってお宝探し班の行動指針は決定。
あたし達は神殿の最上階を目指した。
神殿は、上方向には3階建ての建物。
それでね、辿りついた3階、めっちゃ天井高いの!
ヨーロッパの古い教会の天井みたいな感じ?
「ィー」(これさ~、あの梁? の上とかに宝箱置かれてたりとかしないのかな? たまにあるよね」
「ィー」(あるっぺねぇ。梁の上に通じる梯子や隠し通路がこっそりあって、そこから上に登れるタイプ)
「ィー」(探してみるか)
「ィー」(うぃ~)
それぞれに分かれて隠し通路や仕掛けがないか探す。
いやね。仕掛けがあるのは比較的丸わかりなんだよね。あからさまなレバーとかあるし。
罠も覚悟でいじってみたら、ゴゴゴって天井の一部が開いたりしてさ。
でも、天井を動かしたら梁部分の足場が狭くなったりしたから、これじゃないわって元に戻したり。
柱に梯子がある場所もあったんだけど、仕掛けが動いてると建物の装飾が邪魔になっちゃって、途中から登れなくなったり。
「ィー」(あれだ。仕掛けは一度全部戻そう。下手に動かすとわけわからん。つか、通行の邪魔)
「ィー」(賛成ぃ)
ガチャン、ごごごご、ガチャン、ごごごご
あっちこっちいじっていた場所を元に戻す。ていうか、順番を考えて動かさないと元に戻らない場所もあったりで、意外と難しいぞコレ。
で、仕掛けを全部戻したあたし達は、見つけた梯子のもとに集結したのです。
「ィー」(こういう、身軽さが必要な系統はピンクちゃんっぺかねぇ)
「ィー」(だなー)
「ィー」(ピンクちゃんがんばぁ)
「ィー」(お任せ~)
みんなの希望を受けてあたしは梯子にしがみついた。
ひょいひょいと梯子を登って梁の上に到着。
ぉーぉー、まっすぐ行った先の飾り柱の影に宝箱発見。
1つあったってことは、他にもあるんじゃないかな?
きょろきょろ。
あったあった!
違う梁の上にあるじゃん!
あそこに行くには、普通の人なら一度梁を下りて他の梯子を探さないといけないんだろうけど――。
あたし獣人なんで!
今だけ怪人ゴッコ解除!
そんでもって、狼に変身~! ドロン!!
狼に変身したあたしは身軽に梁と梁の間を飛びまわる。
新しく見つけた宝箱を回収して、またまたぴょんぴょんして次の宝箱へ。
「ィー」(こはるちゃん~。そこから11時の方向にも宝箱あるかもぉ)
ダウジングロッドを手に腐ちゃんが言ってきた。
あたしからは見えないけど、腐ちゃんのダウジングロッドは信憑性高いから行ってみるのが正解だよね。
11時、11時。
真っすぐなようでちょびっと左の方向。
おぉおおお!
あったよぉ!
柱の影どころか柱の中に埋め込まれてる!
「アオーン!」(あったよぉ! 柱の中に埋まってた!)
「ィー」(やったねぇ。えとねぇ、あとねぇ、2カ所反応があるよぉ)
腐ちゃんが方向を指示してくれるから、あたしはそれに従う。
途中で指示以外の場所に見えてる宝箱があったりもしたから、ついでにそれも回収。
腐ちゃんのダウジングロッドは隠れてるものだけ探し出してる感じ。
そんなこんなで、3階でのあたし達の宝探しは終了しました。
クエストレベルが低いからそれほどいいアイテムは無かったんだけど、ここでしか手に入らなさそうなレアなアクセサリもあったから、それは、プレミア的な意味でコレクター心をそそるアイテムだよね。
梁から降りたあたしはまた怪人の姿に戻る。
ここに、他のギルドの人達がいなくてよかった。
イベントは怪人の格好で参加っていうのはあたし達が勝手に決めたルールだから、特例的に変身解除するのはぜんぜん問題ないんだけど。
他のギルドの人に見られてるとさ、自分達で決めたルールを破っちゃいけない気分になるから。
これ以上、自分達ルールに違反することがありませんように。
3秒だけ祈って、あたし達は2階と1階も探索する。
めぼしいアイテムがあったの、3階の梁部分だけだったのがちょっと悲しい。
中級の回復アイテムとかがあったんだけどさ、あたし達レベルだとあんまり役に立たないアイテムでさ。
お姉ちゃんに「インベントリの空きの邪魔。捨てろ」と言われて終了しました。はい。
めぼしい物を手に入れられないまま地下に降りる。
地下の各階もローラーしていったんだけど、めぼしいアイテムが無いのは同じ。
あっさりと、地下2階の神秘の泉に着いたよ。
祈祷師さんと姫様とタマさんが暇そうにしてる。
彼らがたたずんでいる場所の横のくぼみが神秘の泉のはずなんだけど。
めっちゃ枯れてるね。