71 戦隊には口上と名乗りが必要です
腐ちゃんが超遠距離から攻撃魔法をぶっぱしたものだから、被害を被ったギルドの人達は状況をのみ込めていないみたい。
15、6人くらいの集団だったと思うんだけど、残ってるのは10人。
その残った人も、お姉ちゃんが追い打ちをかけてどんどん倒していっている。
「ィー」(遠距離から一方的に虐殺って卑怯じゃない?)
「ィー」(そんなことはないでござるよピンク殿。初手で遠距離からきつい攻撃をかまして相手をビビらせるのは、喧嘩の基本でござる)
さようでございますか。
「ィー」(ま、このイベントが始まった時点で、ギルメン以外は敵だっぺしね~)
「ィー」(世の中無情だよねぇ)
腐ちゃんの魔法2発目がさく裂。
一方的にやられまくった〈風の谷のナウ〉ギルドさん、残り1人になっちゃったよ。
この人Lv100あったから、腐ちゃんの攻撃にも2発耐えられたのかもね。
「ィー」(本来ならあいつも遠距離で抹殺したいところだが。ンジャメナEXとして初対戦だ。名乗ってから殺そう)
お姉ちゃんが攻撃を止めた。そうして〈風の谷のナウ〉の生き残りさんの方に歩いていく。
他のみんなも続くし。
露出欲そこそこ高いよね。このギルドの人達。
「か、怪人!?」
あたし達が近付けば近付くだけ、生き残りさんのうろたえっぷりが加速してる気がします。
「ィー」(怪人とは失礼でござるな)
タマさんが否定した。そうしてポーズをとる(ポーズはご自由にご想像ください)。
「ィー!」(1つ! 不当な扱いを憎み!)
どぱーん。なにゆえかタマさんの背景で地雷が爆発した。
「ィー!」(2つ! 女体の神秘を追うっぺよ!)
どぱーん。空さんの背景でも地雷爆発。
ちょっと待って。
これ、1人1人、ポーズをとりながらひとこと言わないといけない流れ?
やばいんですけど何も考えてないんですけど!
てか、君らいつの間にそんなポーズやセリフ考えてたの?
「ィー!」(3つ! 金儲けのためなら努力は惜しまず!)
どぱーん。お姉ちゃんの背景でも地雷爆発。
「ィー!」(4つ! わたくしのために働く奴隷には優しくしてもよろしくてよ?)
どぱーん。姫様の背景では地雷爆発と同時に花弁が舞った。差別反対。
「ィー!」(5つぅ! とりあえず同性でひっつこうぅ?)
どぱーん。腐ちゃんの背景で地雷爆発。
やばい、次あたしだ!
「ィー!」(6つ! こんな感じでみんな好き勝手やってます!)
どぱーん。あたしの背景でも地雷が爆発した音がした。
良かった。なんとかセリフ思いついた。
「ィー」(怪人戦隊! ンジャメナEX!)
シャキーン!
あたし達6人が華麗にポーズをきめる。後ろで、これまでになく大きな爆発音がしたよ。
なんか、きっちりキマッタ気がする!
快感だ!
生き残りさんはパニックの絶頂みたいだけど。
「正義の要素っぽいのが最初だけしかなかったんだけど!? てか、ンジャメナEXって何!?」
「ィー」(それをお主が気にする必要はないでござる。では、さらばでござる)
タマさんがさくっと生き残りさんにトドメをさす。生き残りさん、昇天。
「ィー」(珠持ち、いませんでしたわね)
「ィー」(世の中そんなに上手くはいかないね~)
「ィー」(けど、名乗りの練習はできたっぺ。悪くない感じだったっぺな)
ぐふふと空さんが笑う。
他のみんなも、倒したばかりのギルドのことなんて屁とも思っていない感じ。
憐れ。
〈風の谷のナウ〉さんは、あたし達の戦隊活動の練習の犠牲になったのだ。
「ィー」(出だしは上々だったということで。クエストに戻るでござるよ)
タマさんが空さんをつつく。空さんが走りだした。あたし達も続く。
あっという間に祈祷師さんのもとに戻ってきて、頼まれ物の水で満たした瓶を渡した。
「ご苦労。次は、ゲトズオミカオの心臓を取ってきてくれないか?」
水回収クエストがクリアになって、ゲトズオミカオの心臓を取ってこいっていうクエストを受注しました!
「ィー?」(ゲトズオミカオって何?)
「水場の近くに水トカゲが生息している。その中でも巨大な個体がゲトズオミカオと呼ばれているな。見ればわかる」
見ればわかるのは確かに。
だってあたし達、データとして敵の名前は見えるし。
「ィー」(まぁ行くっぺよ。イベント初のプチボス戦じゃん? タギルっぺね~)
空さんが走りだした。
今度の目的地は、さっきの水場よりちょっとだけ先みたい。
水場を越えたらオオトカゲの群れみたいなのが見えてきたよ。
オオトカゲのレベルは20。
群れの中でひときわ大きいゲトズオミカオは30。
「ィー」(ドドメぇ、いっきまぁ~すぅ)
ゲトズオミカオが確認できてすぐくらいのタイミングで、腐ちゃんが範囲魔法をぶっ放した。
彼女以外何をするでもなく、ゲトズオミカオの心臓ゲット。
イベント初のプチボス戦は、腐ちゃん以外何もできずに幕を閉じた。