59 変身能力獲得クエ見つかったかも?
さぁてと。
お手伝いしてくれる人もできたし、クエスト消化にレッツゴー。
左手にタブレット(色んなクエストの在り場所とクリア方法のカンペ)を持って、目の前には始まりの街のMAPを広げて、いざいかん。
あたしってさ、クエストぜんぜんやらないでレベルばっかり上がっちゃった系の人だから、MAPには「ここにクエストあるよ!」っていうQマークが出まくりなんだよね。
どうせいつかはやるクエストだし、近場にあるものを片っ端から拾っていきたいところだけど……。
このゲーム、一度に保持できるクエストの数、8個が上限なんだよね。
効率を考えるなら、同じレベル帯のクエストをまとめて受注していくべきだよねぇ。
同じレベル帯のクエストなら同じ狩り場にうろちょろしてる敵を倒せばいいし。(違うクエストのくせに同じモンスターを倒せっていう場合もあるし)
アイテム採取なんかも、クエストレベルの敵さんがいるあたりにアイテムがあることが多いし。
とりあえず、Lv1で受けられるものを中心に8個のクエストをゲット。
始まりの街周辺に出るモンスター退治とアイテム収集と、誰それにこれ届けてっていうおつかいクエストだね。
「懐かしいでござるな。拙者はオープンβから始めた口であるから、今よりプレイヤー人口は多いしレベルが団子で、クエモンスターの取り合いが激しかった思い出があるでござるよ」
銀さんが笑いながら討伐対象モンスターを倒していってくれる。
その間にあたしはアイテム採取してっと。
手持ちのクエストのクリア条件を全部満たしたら、街に戻って一括で報告。
次の低レベル帯クエストをまた8個受けて……クリア条件満たして報告して、受けて報告して。ひたすらにその繰り返し。
そんなこんなで何度目かの報告祭りが終わった時。
クルッポーと鳴き声をあげながら鳩さんが飛んできたよ。
そこら辺を飛んでるただの鳩かと思いきや、どうにもあたしに用があるみたい。
あたしの目の前でホバリングして、足につけてる手紙を取れとでもいうかのように主張してくるから。
あたしが手紙を取ったら、鳩さんはどこかに飛んでいった。
「拙者、この街で鳩に手紙を届けられたことは無いでござるな」
「そうなんだ?」
それじゃ、種族限定のクエストなのかな?
狼獣人ってあたししかいないから、種族限定クエストに何があるのか全くわからないんだよね。
とりあえず、手紙に何が書いてあるか見てみよ。
【Lv5】森の魔女からの招待状
始まりの街近くの森に住む魔女が狼の因子を持つ人間を探している。
会って話を聞いてみよう。
あ、クエスト受注した。
しかもこれwikiに載ってないやつ。
狼って言葉が出てきてるから、狼獣人限定クエストかも。
猫獣人さんが変身スキル取れるクエストがLv5だったし、このクエも受注条件がLv5だし。
探してたクエストが見つかった予感!
「狼獣人用に新しく実装されたクエストでござろうな。新しいクエストは心が弾むでござる」
「銀さんみたいなベテランさんでもそうなんだ?」
「うむ。まだ見ぬ世界を手軽に楽しめるのが、ネトゲの楽しみの1つであろうと思うでござるよ。さて、拙者はこはる殿に自動追尾するゆえ、いつでも走ってもらって大丈夫でござる」
「は~い」
言われてあたしは走りだした。
っていっても、あたしも目的地までシステム側で勝手に走ってもらうんだけどさ。クエストナビっていうかオートラン、便利だよね。
「目的地、近くの森でござったか? 拙者の記憶では、あそこに人が住んでいるような場所は無かったと思うのでござるが」
「悪の組織の秘密基地みたいに、新しく実装されたんじゃないのかな~?」
「なるほど。実際、少しくらい街の風景が変わっていても、自分に関係なければ気付かぬものであるしな」
だよね~。
通学途中の建物が建て直しするって取り壊されたら、前がどんな建物だったのか思い出せないっていうの多いし。
喋っている間にあたし達の居場所は近くの森に。
懐かしいなぁ。
この森の入口あたりでショッ○ー姿の空さんに拉致られたの何カ月前の話だっけ?
そんな場所をさっさと抜けて、森のちょっと内部へ到着。
そこには小さくて質素な小屋があった。
小屋のまん前でオートランが止まる。
ってことは、魔女さんのいる小屋ってここなんだね。
「こんにちは~。クエスト受注して来ました。魔女さんはいらっしゃいますか~?」
あたしは小屋のドアを叩いた。
ドアがぎぃぃって開いて、いかにも魔女って見た目のローブ姿の小さなお婆さんが出てくる。
あ、クエストクリアになった。
「クエストを受注したってのはこの鳩からかい?」
魔女さんの腕に鳩さんがとまる。
うーん?
鳩の個体差なんてわからないから、その鳩さんかはわかんないんだけど。
「その鳩さんかはわかりませんけど、鳩さんから手紙貰いましたよ」
言いながら、あたしは鳩さんから受け取った手紙を魔女さんに見せた。
魔女さんは目を細めてその手紙を見て、鳩さんをなでる。
「確かにわたしの手紙だね。この鳩には、狼の因子を持つ者に手紙を届けるように術を施してある。ならば、おんしは狼の因子を持った人間なのだろう。歓迎しよう。入りなさい」
ドアを開けっぱなしで魔女さんは小屋の中に引っ込む。
あたし達も続いて小屋に入ってドアを閉めた。