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47 蛇のお口が目の前に

「ゆ、茹狼になるかと思った」


 どうにかこうにか、茹であがる前にプールサイドにたどりついたあたし。

 その場でぺたりとへたれこんだ。


 目の前ではシュウシュウと音を立てながらプールの水が蒸発していっている。

 あのさ。

 これさ。

 リアルだったら普通に死ぬよね。

 お風呂だって45℃くらいで「あっつー!」って言っちゃうし。肌も赤くなるし。

 ゲームの中だからって無茶しすぎだと思うんだ。


 バトルの疲れを癒しつつ、みんなで様子を見守る。

 途中から早送りみたいに水が減るスピードが早くなって、そんなに待たずにプールは空になった。

 その、水の無くなったプールの底に、水色の宝石みたいな石が1つ残されている。


「あの石、プールの中に最初からあったのかな?」

「戦闘中にちょっと覗いてみたけど、何もなかったと思うぞ」

「不死鳥の羽が溶けた水だしぃ、成分が濃縮した宝石とかいう設定なんじゃないかなぁ」

「白のような赤のような色の羽が溶けた水なのに、出来上がってきた石は水色ってこれいかに」


 ぶつぶつ言いながら空さんがプールの底に降りていく。

 ひょいっと宝石を回収して帰ってきた。

 そこに綺麗なお姉さんもやってくる。


「この階の作業はまだ終わりではありません。その宝石、今度は砕いて砂状にしてください。それを、羽毛を失った鳥の首から下に塗るところまでやって終了です」


 なんだって。

 抜け落ちた羽の代わりに宝石っぽい石の粉を塗るって、なんかお金持ちっぽいね。


 そういうことだから、「塗るときにおとなしくしててね」って願いを込めてあたしは鳥さんを見つめる。

 言いたいことが伝わったのか、鳥さんがこくりとうなずいた。

 お姉ちゃんが石をすり鉢でゴリゴリしている間もおとなしくしていてくれる。

 むしろあたしと一緒にうたた寝しちゃってた。てへ。


「こはるちゃん起きてぇ。粉塗るからぁ、鳥さんが暴れないように抑えててってナナが言ってるよぉ」


 腐ちゃんに肩をぽんぽんと叩かれてあたしの目が覚めた。

 あ、よだれが垂れてる。

 いけないいけない。失礼しました。

 手の甲でごしごしして証拠隠滅終了。


 あたしの膝の上で気持ちよさそうに寝てる鳥さんを後ろから捕まえて、お姉ちゃんの方に出した。

 鳥さんの首辺りから下に向けて、お姉ちゃんが刷毛で青い液をペタペタ塗っていく。


「粉末のわりには液体みたいだね?」

「さすがに粉末を塗れってのは無理だわ。希釈液を案内役の姉さんがくれたから、それで調整してある」

「なるほど」


 ぺたぺたぺたぺた。

 鳥さんの首から下が満遍なく青くなっていく。

 全体を塗ってもちょっと余った液は、塗り終わった所の上から強引に塗り重ねて消費していた。


「塗り終わりましたね。では、その鳥を連れて上の階へ」


 綺麗なお姉さんが毎回の調子で動き出す。

 首から下だけ青くなった鳥さんはあたしの頭の上がお気に召したらしくて、そこに乗った状態で次の階へ。

 次で6階だっけ?

 外から見えた塔の階数って7階建てだった気がするから、もうちょっとで終わりだね。

 ぶっちゃけ長いと思ってすみません。


 ていうか、この鳥さん、何の役割があるんだろうね?

 王様達の体から作られた命だから、この子が大きくなって卵を産んだら王様が生まれてくるとか?

 胎生とか卵生とか生物の授業で習った気がするけど、細かいことは無視で大丈夫なはず。


「次の階では、再生の象徴である蛇の血をその鳥に飲ませます。あなた方にまずしていただく作業は、蛇からの採血です」


 階段を登りながら綺麗なお姉さんが言ってくる。

 蛇かぁ。

 それも採血。うん、バトルな予感。


 そうして辿りついた6階。

 階段を登りきる前からさ、なんだか大きなものが見えたんだ。


「おっきいね」

「丸のみされそうな勢いぃ」

「最悪空を腹の中に送り込んで、内部から攻撃させよう」


 わいのわいの言いながらあたし達は武器を構えた。

 鳥さんは綺麗なお姉さんに預けたよ。

 あたし達が全員階段を登りきると、登ってすぐの空間にとぐろを巻いていた巨大蛇さんが首をもたげる。

 綺麗なお姉さんは階段の途中でストップしていた。

 うん。6階、危ないからね。


「血を採るだっけ? 生かしておけって言われなかったし、倒し切ってから血ぃ抜く方が安全よな」


 空さんの〈タウント〉で開戦。

 巨大蛇が空さんに向けて大口を開けて飛びかかってきた。

 それを空さんは華麗にかわす。

 いつもは不動で殴られてるのに、今回はかわすんだ?


「こいつはさすがに真正面から受けると危ない気がするわ。下手したら丸のみされるわ」


 ああ、なるほど。

 いくらドMな空さんでも、戦術的判断はしっかりするんだね。

 まぁ、蛇さんが空さんに夢中になっている間に、あたしは攻撃っと。


 って。

 あいたぁあああ!

 攻撃したあたしの手が痛かった!

 しかも蛇さんにダメージ入ってないし!


「こはるちゃん~。蛇ぃ、鱗が硬いのかもぉ。頭を殴って脳震盪狙うかぁ、目や腹側の柔らかいトコ狙うといいかもぉ。もしくは口の中ぁ」

「口の中は嫌かな~」


 だってあれでしょ? 口の中って言いながら、実際は食べられて胃袋に直行コースでしょ?

 武器があるなら内側から斬れるだろうけど、素手のあたしじゃダメージ通りにくそう。

 口の中案却下。

 無難にお腹の下とか狙お。


 あ、そういえば。

 世の中には三角跳びっていう技があるんだっけ?

 壁を蹴って蹴りの威力を増すとかなんとか。モン○ンでも導入されてたし。

 ここ戦いやすいフィールドだし、的も大きいから試してみようかな。


 まずは壁を蹴ってー、そこで反動を付けて、標的に向けてレッツゴー! あたしは壁を蹴った。

 って、なんでこのタイミングで蛇さんこっち向くし?

 あ、止めて、大口開けないで。

 この距離だと軌道修正できないんだけどおおおお!?

 空さんにタゲいってたはずなのにっていうか、空さんが動いたせいでこっち向いたのかぁあああ!

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