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4 省略の辿りついた先は空

 悪の組織乗っ取り、もとい、制圧に走り出したあたし達の前に黒い軍団が立ち塞がる。


「ィー」(この騒ぎの元はお前達か!?)


 集団さん。覆面黒タイツの上からトラ柄パンツをはいてるって、そのセンスどうなの?


「Lv10か。こはるの餌にちょうどいいくらいだな」


 お姉ちゃんがあたしに銃を向けた。

 え、もしや、それであたし撃たれるの?

 4話目にして信頼している仲間に殺され完?


「違うわっ! 機工師ガンナーのスキルで味方の強化も出来るんだよ。力と物理防御と素早さ上げてやるから暴れてこい」


 言っている間に銃から弾が撃たれる。

 おぉ、強くなった感覚が全くない!

 けど、ログウィンドウにドーピングされたよって出てるから、何か変わったんだろうね。うん。

 ひと仕事終えたお姉ちゃんがトラ柄パンツ集団をピシッと指す。


「さぁ、喰らいつくすがいい、こはる!」

「アオーン」


 あたしは集団に飛び込んだ。

 ドーピングの効果か、トラ柄パンツショッ◯ーがパンチ1発、もしくはひと噛みで溶ける。レベルがガンガン上がる〜。わっしょーい。


 夢中で突撃、齧るってしている間に集団を撃破。

 ちょっと進んだら、虎のマスクを被った全身黒タイツ集団と遭遇した。今度はLv30だって。


 あ、さっきのトラ柄パンツショッ◯ーとちょっと動きが違う。

 冒険初心者のあたしには、このレベルの敵でも強敵!

 それでも、お姉ちゃんの補助もあって、危なげなく撃破。

 通路を先に進む。


 その先に現れたのは、兎のマスクを被った全身黒タイツ集団。

 数をこなしてきたのもあって、ちょっと戦闘に慣れてきたよ!


「次は(たつ)頭!」

「アオーン」

「蛇!」

「アオーン」

「馬、羊、猿、……」

「アオーン」(飽きてきたよぉ〜)


 レベルの上がりが鈍くなってきたら、繰り返される作業に飽きてきた。

 だって、脳死でワンパンしてれば勝てるんだもん。

 お姉ちゃんなんて、ちょっと前からあたしの強化すらしていない。動き的に、あたしに追尾設定して放置してるでしょ、あんた。


「アオーン」(追尾設定があるんなら、自動戦闘って設定もあってくれていいのに)

「ヤル気が感じられんぞ〜」


 お姉ちゃんに言われたくないし。


「アオーン」(はいはい。倒せばいいんでしょ、倒せば)


 愚痴っててもしかたないから無心で敵に噛みつく。

 脳死で作業していたら、いつの間にか最後のショッ○ーに噛みついていた。

 その噛みつきでHPがゼロになったショッ◯ーは光の泡になって消える。ドロップアイテムは無い。


「こいつもドロップ無しか。こんだけ回ったのに金目の物ほとんどなかったし、こりゃ貧乏所帯かね」


 光の泡をぼんやりと見ていたお姉ちゃんがつぶやいた。


「アオーン」(そんな! あたしのあたし愛ランド建設計画は!?)

「力ずくでひれ伏せさせて、ショッ◯ーどもを強制労働させるしかないな」

「アオーン」


 従業員がイケメンからショッ◯ーになるんだ。

 テンションが落ちて、あたしの尻尾と耳が垂れる。


「ま。そうしょげるなって。この部屋に何かあるかもしれないし」


 しょげたあたしの首元を撫でてくれたお姉ちゃんが目の前の扉を開けた。

 途端に部屋からあふれ出てくる清浄な空気とコーラスの声。

 ちょっと広めの公演場みたいな部屋の、天井梁の上に天使みたいなのが並んで歌っていた。


「アオーン」(ナニコレ)

「私に聞くな」


 そんなやり取りになっちゃったのも仕方ないと思うんだよね。

 だって、観客席にはビッシリとショッ◯ーが座っていて、舞台には見覚えのある人物がいたから。


「ィー」(ついにここまで来てしまったか、混沌をもたらす者達よ。だっぺ)


 いつの間にやら拘束から逃れたらしいカムバックGTRさんが、舞台の上から厳かに言う。ていうか、あれ、カムバックGTRさんなのかな?


挿絵(By みてみん)


 だってね、覆面に全身黒タイツと喋り方はそのままなんだけど、背中からしょぼい翼が生えてる上に、頭上にも金色の輪っかが浮いてるんだよ。あ、こっちは、頭と繋がってる針金っぽいのが見えちゃった。……見なかったことにしてあげよう。うん。

 水色のマントも最初会った時は無かった気がする。

 全体的に、服が豪華になってない?


「おいそら。お前、ショッ◯ーの次は天使にでも職替えか?」


 言いながらお姉ちゃんが銃を撃った。

 狙いはカムバックGTRさんだったようで、頭の安っぽい天使の輪っかが飛んでいく。


「ち。あいつ固すぎて面倒だな。防具がちょっと削れただけっぽいし。毒と防御ダウンの状態異常デバフから入れないと駄目だな」

「ィー」(もはや俺はただのカムバックGTRではない。混沌をもたらす者達からこの土地と仲間達を守る力を与えられたグレースカムバ――)

「お前なんて今も昔もポンコツカムバックGTRだろ」


 お姉ちゃんの銃が弾を吐きだす。

 直立の姿勢で名乗りを上げていたカムバックGTRさんが紫の煙に包まれた。

 煙が消える前にいくつか弾が吸い込まれていく。


「ィー!」(おいぃい! 格好良く自己紹介している途中で邪魔すんなし! だっぺ)

「アオーン?」(お姉ちゃん、さっきそらとか言ってたじゃん? あれってカムバックGTRさんのこと?)

「ああ。そっか、知らないと分からないよな。あいつの名前にGTRって部分があるだろ? そこの正式名称skylineGTRっていうんだよ」


 で、skylineGTR → skyline → sky → 空。こういう順を辿って略されて空に至ったんだって。


「ィー」(あの。こっちの存在忘れないでもらえないだっぺか?)


 寂しそうな空さんのぼやきが流れてきた。

 あ、ごめんね。危険を感じなさすぎて、ナチュラルに存在忘れてた。

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i396991
― 新着の感想 ―
[一言] 兎は戦闘員のバニーコスじゃないのか? 見たくないが。
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