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34 見つけちゃった心

「ていうかさ。審査をパスできる自信がないから、あたし達はここに残ったわけだし。審査を受けない可能性もあるわけで?」

「それだと、おそらくだけどクエ詰みだろ。審査パスは必要だと思う」

「といっても、あの抽象的すぎるイベントでは、ヒントをくみ取れませんわ」


 あーでもないこーでもないと、あたし達の話し合いは同じ内容でぐるぐる回っちゃう。

 その間に周囲の様子は移り変わっていってる。


 なんかね、大広間に、人が余裕で乗れる大きさの巨大天秤が出現してる。

 灯火に導かれてどっかに行っていた人達も続々と戻ってきてて、大広間の人口密度が上がってきてる。


 あたし達の所には綺麗なお姉さんがやってきた。審査に通る自信が無い人は大広間に残れって言った人だね。


「おはようございます自信無き方々。あなた方には特別席を用意してありますから、測定の様子をそちらでご覧くださいませ」


 綺麗なお姉さんが指ぱちんすると、あたし達を縛っていたロープが消える。

 拒否権なんてないだろうから大人しくお姉さんについていって、ゆったりとした椅子の並ぶ場所についた。

 なんか、いろんな料理が盛られた皿が、すぐそこの机に並べられているんですけど。


「他の参加者の方々には、昨夜各自のお部屋でお料理を提供させていただいたのですが、あなた方には食事の提供ができておりませんでしたので。計量の様子をご覧になられながら、お食事を楽しんでいただければ、と」


 にこりと優しい笑みを残して綺麗なお姉さんは椅子に座った。

 大広間では魂の計量が始まったみたい。

 広間の中央にある巨大天秤の片方の皿にお客さんが乗って、もう片方に分銅が置かれる。

 この分銅がね、1つじゃないみたいなの。

 お客さんの方の皿が下がったままだったらその分銅はどけられて、別の分銅が置かれてる。分銅の大きさはあたしには同じに見える。

 見えるんだけど、分銅の方のお皿に傾く時があるんだよね。


 そうしたらそのお客さんは天秤から降ろされて、「不合格!」の声と同時に縄でしばられたよ!?

 しかも、兵士さんに、ひっ捕らえられたみたいな感じで連れていかれてるんだけど。


「不合格の人ぉ、扱いが罪人みたいだねぇ」


 取り皿に料理を取りながらも計量の様子だけはチラチラ見ていた腐ちゃんがつぶやいた。


「正解です。彼らは資格もないのに王の結婚式に参加しようとしていた不届き者。その上、自らの不徳を認識している程度のつつしみもありません。罪人として労役に従事してもらうのが妥当でしょう」


 笑顔のままで綺麗なお姉さんが怖いことを言った。


「不合格になると労役行きなの? なんか、それはそれで正解ルートな気がしない?」


 あたしも料理に手を伸ばす。

 目標物は原始人肉。漫画でよく出てくる骨付きのお肉ね。

 お上品な料理より、パンチのきいたものが食べたい気分なんです。

 お高そうな料理ばっかり並んでる中で、なんでこれが置かれているのか謎だけど。

 見た目のインパクトがあるから、飾りがてら置いてあるのかな?

 まぁともかく原始人肉ゲット。


「労働ってある意味俺らの得意分野だしな。あ、こはるちゃんのその肉いいね。でも1個しかないのか。それ食べるとお口の周り汚れそうだから、オニーサンのローストビーフと交換しない? お口周り汚れないよ?」

「大丈夫ー。汚れれば拭くだけだから~」


 いつまでも原始人肉を持っていると空さんに奪われそうだから、被害にあう前にガブリ! ガブガブガブ! 完食! ゲプッ。


 ぴろりろりん。

『謙虚』な心を入手しました。


 は?


「は?」


 あたしがぽかんとしている周囲で、空さん達もぽかんとした声をあげている。

 はっと、我に返ったらしきみんなはあたしの周りにきて、あたしが手に持っている透き通った珠を凝視した。


「こはる、それ何よ」

「そこにあったお肉食べたら出てきたっていいますか」

「は?」


 そんなにガン飛ばされてもわからないものはわからないよー。


「原始人肉みたいなの食べたら出てきたんだもん。それ以上わかんないよ」

「なんでお肉に『謙虚』なんだろぉ?」

「あれじゃありませんの? 手間暇かけた高級料理でなく低級料理を選んだから、その姿勢が『謙虚』だとか……」


 姫様の指摘でみんなが黙る。

 なんて安直。でも、言われてみるとそうとしか考えられないこの事態。


「ひょっとして、他の心もどっかに転がってるんじゃね?」


 お姉ちゃんがぽつりとつぶやいた。


「ありそうですわね」

「ていうかぁ、あるよねぇ」

「解散! 各自探せ!」


 お姉ちゃんの一声でみんな一斉に散る。

 特別席を離れて好き勝手しようとしてるんだけど、綺麗なお姉さんから制止の声はかからない。ってことは、ある程度は好きに動いていいのかな?


 大広間では、自慢話ばっかりしていた人達がどんどん弾かれていっている。あの人たちが全員審査終わるまでがタイムリミットかなぁ。


 それにしても、集める心ってなんだったっけ?

 ログログ。こういう時のログ確認。

 えーと、あと、『信仰』『慈愛』『融和』『純潔』『忍耐』『節制』。


 うへぇ。何と関連してるのかわからないものがあるんですけど。

 お姉ちゃんとかに任せればいっか。

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i396991
― 新着の感想 ―
[良い点] 原始人肉を分け与えない心に微塵も謙虚さが感じられないところに笑っちゃいましたが、特定の行動がキーになるゲームらしさもあって面白味を感じました(笑)
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