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33 城@大広間

 大広間の隅っこでだらだらすることしばし。

 突然、豪華なオーケストラみたいなBGMが大広間に響きだした。

 広間には、何千個? って言っていいくらいたくさんの灯火がぽわって生まれて、その灯火で作られている道を綺麗なお姉さんが歩いていく。


 広間の真ん中まで行ったところで綺麗なお姉さんは止まって、優雅にスカートの裾をちょんと持って会釈した。


「ようこそお客人がた。いえ、お客人になれる可能性を秘めた方々、と、お呼びするのが正確でしょうか」


 綺麗なお姉さんの言葉に周囲の人たちがざわついた。

 うちのPTでは、お姉ちゃんと姫様の顔が少しだけ真面目になる。


「皆様には明日、結婚式に参列するにふさわしい人物であるかの審査を受けていただきます。審査内容は魂の計量」


 周囲のざわつきが大きくなる。

 なんでも、『信仰』『慈愛』『融和』『純潔』『忍耐』『謙虚』『節制』の心を持っているか量るんだって。


「心って見えなくない? どうやって量るの?」

「知らん。私にきくな」


 お姉ちゃん冷たいなぁ。


「王の結婚式に参列するにふさわしいと自信のある方だけが計量に参加してください。また、そうでない方々は、こちらの大広間にお残りください」


 それで話はおしまいなのか、綺麗なお姉さんが一礼した。

 そうしたら、周囲の人たちが一斉に計量への参加表明を始める。

 そりゃ、さっきまで自慢話ばっかりしてた人達だもんね。自信がないはずがないか。


 参加表明した人のそばには灯火がゆらゆらやってきて、お部屋に案内するかのように広間から出ていく。

 この演出、幻想的で綺麗~。


 って、それどころじゃなかった。


「あたし達はどうするの?」

「信仰心あるやつ挙手」


 お姉ちゃんが静かに訊ねた。

 漫画だったら「しーん」って効果音が書かれそうな沈黙が落ちる。


「慈愛があると自負できるやつ」


 しーん


「融和できるやつなんてうちにはいない」

「純潔ってさ~、空さん、ほど遠そうだよね?」

「あれだけ声掛けまくっていてチェリーでしたら逆にかわいそうですわ」

「しれっとディスるのやめてくれない?」

「忍耐、謙虚、節制。そんなものも私たちには無い!」


 お姉ちゃんが断言した。

 誰か少しくらい反論……しないんだね。あたしもできる気がしないし。トホホ。


「どうすんだこれ」

「あくまでイベント試験ならぁ、プレイヤーの質には左右されないはずぅ」

「なんともあてにならん判断だな」

「うぅ~」


 自信満々で臨むのが正解なのか、正直に自信ありませんっていうのが正解なのか。

 わからなさすぎて、みんなで頭をかかえた。


「とりあえず大広間に残ってみませんこと? 自信ない選択だと一発アウトだった場合は終了ですけれど、なんらかの救済手段が用意されている可能性もありますし」

「自信なければ城から去れじゃなくてぇ、広間に残れだもんねぇ」

「そいや。門のとこだっけ? ふさわしくない奴はとっとと帰れみたいな看板が下がってたの」

「そいやあったな。なら、城から出ない限りは脱落とみなされないのかもな。じゃ、姫の案でいってみっか」


 それでいい? みたいな感じでお姉ちゃんが視線を投げてきたから、あたしはうなずく。みんなもうなずいていた。


 あたし達が相談している間にも大広間から人はどんどんいなくなっていて、最終的に広間に残ったのはあたし達の他には8人。


 そんなあたし達の所に侍童じどうくん達がやってくる。

 で、あたし達をぐるぐるまきにした!


 え、ちょっと待って。

 そのうえ、灯火を回収して侍童くんがいなくなったんですけど! 広間、めっちゃ真っ暗!


「真っ暗怖いんだけど! 誰か何かお話してよー!!」


 騒いでみたんだけど、誰も何も反応してくれない。

 ひぇええええ!

 空さん、今こそ喋り時だよ!!!!


 暗くて怖くて、それを誤魔化したくて、あたしはじたばたする。

 そんなあたしの視界が急に明るくなった。

 周辺に広がるのは抜けるような青空。

 眼下には深い谷。


 えとー。

 あたし、お空に浮いてるのかな? 動けない状態で。

 それにみんなどこにいったの?

 あたし1人ってどういうことですかこれ。

 なにかのイベントですか。


 えとね、えとね。

 深い谷に、たくさんの人が糸でぐるぐる巻きにされて吊るされてるの。

 そこにおじいさんが飛んできたよ。

 ハサミを出したよ。

 糸を切ったよ。

 どんどん切っていってるよ。


 人、落下しまくりなんですけどーっっっ!!


 高く吊りあげられていた人は大惨事。

 低めの人は、まぁ、なんとかっていうくらいな被害。


 そんな光景がしばらく続いていたんだけど、急に画面が暗転した。

 明るくなってみたら、もといたお城の大広間にもといた状態で転がっているあたし。周囲にはみんなもいる。


「何今の」

「強制イベントの何かだろうな。このタイミングだし、後の審査を抜けるためのヒントか、抜けられなかった時に私たちもこうなるよっていう暗示か」


 ぽつりと出た疑問にお姉ちゃんが返事をくれる。

 ああ、そういうふうに解釈すればいいんだ。


 ……。

 でもさ、さっきのアレが審査を抜けるためのヒントだったとして、何をどうヒントにすればいいの?

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