31 どの道選びます?
――短いが非常に危険な道。
――安全だが長い道。
――1000人に1人も行くことのできない幸運者のための王道。
――人間には不可能な道。
先の道、この4つなんだって。
「選べということですわよね?」
「たぶんな。各道に1人ずつしか行けない仕組みだと道の数が足りないから、全員同じ道になるんだろうけど。で、どうする?」
意見を求めるように、お姉ちゃんがあたし達に視線を向けてきた。
ん~。
――短いが非常に危険な道。
うちの非常識なメンバー達、多少の危険は余裕でクリアしてきそう。この道でも問題はない気がする。
ただ、非常な危険がどの程度のものかが気になるところ。
――安全だが長い道。
長いっていう距離がどの程度なのかが気になるところ。
普通に選ぶならこの道が第一候補だよね。
――1000人に1人も行くことのできない幸運者のための王道。
空さんなら通り抜けられそう。
あたしも大丈夫なんじゃね? って意見もぼちぼち貰っちゃった。
でも、この道はないかな~。
――人間には不可能な道。
獣化したこはる専用じゃねーかと突っ込みをいただきました。
みんな一緒にいけないんじゃ駄目だよね。
「短い道か長い道のどっちかだねぇ」
「だなぁ」
話し合い中の空さんの頭に白いハトさんがとまる。なんか平和~。
って、え?
ハトさん、みるみる間に大きくなっていってるんだけど?
「おい空、お前の頭のハトなんかやばいぞ。さっさと追い払え……って、えぇえ?」
喋っている間にもハトさんはぶくぶく大きくなって、空さんよりも大きくなって、ぽかんとしている空さんを爪で掴んで飛んでった。
「これって助けなきゃ駄目な感じだよね?」
「でしょうね。おあつらえむきに、カラスが巨大化しながら飛んできてますわよ。あれに乗って追えということではなくて?」
「道の選択は、ハトに誰かさらわせるための時間稼ぎか。せこいマネしてくれるな」
カラスさん、あたし達4人が背中に乗っても余裕そうな大きさにまでなってる。
それが、どしーんって地響きをたてながら着地した。乗りなさいっていうかのように頭をさげてくれる。
「乗る一択って感じだねぇ」
「急がないと空をさらったハトを見失ってしまいそうですし、今は流されるしかありませんわね」
「こいつ、目視できない距離まで離れてても、自動でハトまで追い付いてくれる機能ついてないのかね」
「ありそ~」
わいのわいの言いながら、カラスさんに乗車ならぬ乗鳥。
飛び立つ合図かのようにカラスさんが一声鳴いたから、あたし達は近くの羽に掴まった。
カラスさんはどんどん高くあがる。
4本の道、どんな感じなんだろうって下を覗き込んでみたんだけど、濃い霧みたいなので荒野はおおわれていて、ぜんぜん見えなかった。残念。
「とりあえずハトを撃ち落として空を落下させる。あいつが落ちた所に私たちも降りて、その道を攻略するって方向でいいか?」
片手に銃を持ちながらお姉ちゃんが訊いてくる。
「鳥さん達があたし達を道の先まで運んでくれる可能性は?」
2羽に分かれたのは、重量制限的にきつかったからっていうオチで。
「運んでくれる可能性は低いと思いますわよ」
「この鳥たちぃ、ちょっと前から飛ぶ軌道が円状になってるからぁ、おんなじ所をぐるぐるしてるだけだと思うぅ」
「ある程度の距離、上空から一気にいってくれたのは間違いないんだろうけどな。この先に進むには、何かアクションが必要って感じがするんだよな~」
「こはるちゃんがいいならぁ、私もぉ、空撃ち落としするよぉ」
撃ち落とすのは空さんじゃなくてハトさんな気がするんだけど。
ま、空さんなら死なないだろうからいっか。
「落下ダメージで空が死んでもわたくしが蘇生するので、彼の高度は気にしなくてよろしくてよ」
なんて万全のサポート体制。
いっちゃってくださいませ、オネーサマ方。
「よし、じゃ、いくか! ファイアッッッッ!!!!」
号令と同時にお姉ちゃんの銃撃と腐ちゃんの攻撃魔法がハトさんを襲う。
おぉ、ハトさんの周囲がなんか火事だ。
あれ、最後、大きな焼き鳥串とか、クリスマスに出てくる詰め物した鳥とか、ペキンダックみたいな感じの食糧アイテムになってくれたりしないのかなぁ。
美味しそうなのに。
「クルッポォオーーー!」
「おいこはる。お前あのハト美味そうだなとか思っただろ。なんか急におびえだしたぞ」
「だって鳥料理美味しいのは確かじゃん? 明日は唐揚げでもいい気がしてきたよ」
「飯テロ反たぁいぃ。でも唐揚げはちょっと美味しそうぅ」
「あれだけの大きさのモンスターでしたら、そこそこ大量の鶏肉か貴重なお肉が採れそうですわね。入手できれば、ギルドハウスに戻った後でわたくしが調理してさしあげてよ」
え? 調理、出来るの? ゲーム内で?
あたしは姫様の方を見た。
「生産スキルの中に料理があるのはご存じなくて? わたくし、料理スキルカンストしてますの。大概のものは調理できましてよ」
おぉぉおおお!
なんて神スキル持ちが!
毎日美味しいご飯を提供していただけるのなら、姫様、あたしはあなたの犬になってもいい。
あ、ブラッシングとかもしてお世話してくれるとなお嬉しいです。
「それぇ、今の扱いとあんまり変わらないよねぇ」
あれ? そうだっけ?