29 重量制限は守りましょう
それじゃ、出口を目指してレッツゴー!
新鮮な空気が流れてくる方を目指せばいいんだよね?
薄ぼんやりとした視界だけど、歩くのに問題ない程度には見えてる。
狼獣人って便利。
たださ、あんまり見えて欲しくないものも見えるのが、ちょっと困りものかな~。
あたしの進んでいる道のところどころ、人骨が転がってるんだよね。
ぽつんぽつんって、1体だったり複数体だったり。中には動物のものっぽいものもある。
それにさ。
進むにしたがってさ。
お伴してくれる幽霊さんが増えてきてるんだよね。それも無害。敵判定されない子たち。
うわーい。
大人数で探検楽しいな。
「この洞窟骨転がってるし幽霊漂ってるんだけど! あたし達も出れなかったらこの骨&幽霊の仲間入りなんじゃないのぉおお!?」
幽霊のお伴なんて嬉しいわけないじゃん!
あ、誰かの頭蓋骨っぽいの蹴っちゃった。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。謝るから呪わないで。
もー!
どこなの出口。
空気の新鮮さ、最初に水ぽちゃした地点よりは数段上がってるんだけど、出口はまだ見えないのかなぁ。
この調子だと、出口にたどりつくまでに骨を踏みつぶしちゃう事件まで起こしそうで嫌だよう。
そうこう進んでいくと少し開けた空間に出たよ。
その空間の上の方から、弱いけど光が入ってきてる。
新鮮な空気も上から落ちてきてる感じ。
ひょっとしなくても、出口はたぶんこの上。
もうちょっと狭い空間なら、壁を三角飛びして上まで登るって手が取れたと思うんだけど、それをやるにはここは広すぎるんだよね~。無念。
「出口、この上か」
いつの間にかあたしの横に来ていたお姉ちゃんが上を見上げている。
「上方向の移動手段なんて持っておりませんわ。困りましたわね」
あ、姫様も来たんだ。って、腐ちゃんも暗がりから出てきた。
「ナナの錬金アイテムにさぁ、高く飛べるやつとかないのぉ?」
「多少飛ぶ程度ならできるのもあるけど、それじゃ無理な高度っぽいんだよなぁ。それに持ってきてないし」
「その上がゴールっていうんだったらさ、いっそさ、周辺の岩をくりぬいて階段作るってどうよ」
おぉ、空さんまで到着。
さすがレベルカンスト冒険者たち。この程度のダンジョンじゃ全く動じていない。それなりに枝分かれが多い道だったと思うんだけど、みんな同じくらいの時間でここまでたどり着くんだね。
「みんなどうやってここまで来たの?」
感覚頼りだけだと後で困ることもあるかもしれないから、後学のために聞いてみよう。
「ダンジョン出口まで案内してくれるアイテムがあるからな」
「周囲を漂っている幽霊さんとお話したら、ここまで案内してくれましたの」
「ダウジングゥ」
「勘」
勘と言い放ったのはもちろん空さん。
つまり、あたしの今のレベルは空さんと同じ、と。
精進しないといけない気になった。
「階段作るってのは悪くないと思うが、ここのフィールド、岩盤掘れるのか?」
お姉ちゃんがツルハシを出して壁に打ち込む。
何回かは鉱石素材みたいなものが転がり出てきた。
でも、フィールドの壁自体には大きな変化無し。
場所をちょっと動いては掘るをお姉ちゃんが繰り返しているけど、どこも同じみたい。
たまにレア素材が取れているのか、お姉ちゃんのテンションがちょっとおかしい。見なかったことにしておこう。
あれだよね~。
こういう場所で「助けてよ!」って手を伸ばしたら、糸やロープが垂らされてくるのがお話の定番だと思うんだけど。
あたしは手を伸ばしてみる。
その手元にロープが触れた。
え? ロープ? いつの間にか垂れてきてた?
「これで上に登れってこと?」
触れたのなら活用しない手はないでしょう!
あたしはロープを掴んでぴょんと飛び付いた。
これ、自力で登らないといけないのかな。それとも誰か引き上げてくれる系?
「こはるちゃんもうちょっと上に動いてぇ。私も登るぅ」
腐ちゃんが下で手を振っている。
腐ちゃんじゃ自力でロープを掴めないみたいで、空さんによいしょと持ち上げてもらってロープまでこんにちは。
ん?
なんかロープがミシって言ったような。
「あとはそうだな、姫、私、空の順で登るか」
姫様、お姉ちゃんまでロープに掴まると、いよいよロープのヤバソウな音が強くなる。
いやいやこれ絶対やばいって。重量オーバーな予感がプンプンするよ!
「ストップストップー! 重量オーバーしてるよこれ!!」
「あはは。そんなこと言っちゃって~。あれだろ? 俺からスカートの中見られたくなくて、一緒に登るのが恥ずかしいっていう口だろ? ははっ。全員のスカートの中身、舐めつくす勢いで見てやるわ!!」
軽口を叩きながら空さんまでロープに掴まる。
違う、違うから! ほんとに重量オーバーなんだって! てか、覗きやめろ煩悩魔人。
ぶちぃいいっ!!
嫌な音をたてて、ずいぶんと上の方でロープが切れたみたい。
ロープに掴まっていたあたし達はもちろん仲良く落下。
「空ぁあああ!」
とりあえず、みんなして空さんの上に蹴りを入れながら着地しておいた。