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15 ジャンヌさん救出大作戦

【特殊クエスト(世界)】狙われた神殿 の第2クエストをクリアして2日。


 ギルドハウスのリビングのソファで、膝を抱えたあたしはもやもやしていた。

 なんでかっていったら、ジャンヌさんのモデルになった現実のジャンヌダルクさんの人生を、細かく腐ちゃんから教えてもらったから。


 100年戦争って言われるほど長い長〜いイギリスとフランスの戦争。

 その中で、劣勢のフランス側として戦っていたジャンヌさん。

 戦中にイギリス側に寝返った司教さんに捕まって処刑されちゃうんだけど、彼女、何度も逃げようとしたみたいなんだよね。

 一緒に戦った人達だって、助けようとしてくれた人は何人もいた。


 でも、政治的なお話で、国は彼女を助けてくれなくて、運命の日が来る。


「そりゃ恨んでお化けにもなっちゃうよぉ〜。可哀想すぎるよぉ〜」


 えぐっ。涙が止まらない。耳と尻尾も垂れたまましょぼん。ああ、鼻水が。空さんがティッシュを出してきてくれたから、ぶひーんと鼻をかむ。


「たかがゲームのキャラにこはるちゃんは優しいね。俺のこはるちゃんへの愛メーターがギュンギュン上がってるよ」


 不意打ちで抱きつかれそうだったけど、華麗に回避。

 職業がモンクだからか、危なそうな攻撃には自動で回避が発動するっぽいんだよね〜。いいことだ。


「決めた! あたしジャンヌさんをさらってくる!!」


 ぐちゃぐちゃになったティッシュを握り潰しながらあたしは立ち上がった。

 あ、ゴミは捨てないとね。デリートデリート。

 薄い本を閉じた腐ちゃんがあたしの横に来た。


「さらうのぉ?」

「うん! で、ここでかくまう! 空さんいいよね!?」


 空さんをじっと見ながら了承を求める。

 なんで空さんかっていうと、空さんがギルドマスターだから。マスターがいいよって言えばきっといいはず。


「いいよ〜。美人さんが増える分にはいくらでも歓迎。目の保養目の保養」


 ちょろく許可が貰えた。

 よーし、言質は取れた。お店でポーションとエーテルも買っておいたから、もし戦闘になっても大丈夫。

 神殿にレッツゴーだよ!


 意気揚々と出かけたら腐ちゃんと空さんもついてきたのは、面白そうだからだって。

 今INしてるギルメンは3人だから、ギルド総出だね。


「ジャンヌさんってどこにいるのかな?」

「牢屋とかなんじゃね? 犯罪者っぽく」

「地下牢とか隠し牢とかが定番な気がするからよぅ」

「それじゃぁそこかなぁ」


 なんとなく見当をつけて堂々と神殿に行く。

 だってまだ何もしてないからね。コソコソした方が怪しまれそうだし。


 ん〜。

 やっぱりまずは地下牢を探すべき? 地下ってどっちだろ?


「こっちぃ」


 腐ちゃんがあたしの服を引っ張る。

 さすがゲームの先輩。色々知ってるよね。


 とくに警戒もせず地下を探索して、牢に入ったジャンヌさんをサックリ発見。

 見張りが1人もいないってザルすぎない? コレ。

 データの世界だから大丈夫なのかもしれないけど。


 牢の中のジャンヌさんはとても静かで清楚で、汚れた全身鎧を着て火を噴いてた感じは皆無だった。

 牢の前にあたし達3人が立つと顔を向けてくる。


「どうした? 処刑の前に差し入れでも持ってきてくれたのか?」


 その顔は色々悟ったように澄みきっていて、でも、とっても悲しそうだった。

 あたしが男子だったら1発で胸キュンしちゃうんだろうなって感じ。

 ちなみに隣で空さんが愛の言葉を吐きまくっているけど、いつもの事だからスルー。


 でもやっぱりうるさいから蹴り飛ばして黙らせて、あたしは牢の柵を掴んだ。


「ね、ジャンヌさん。あなた何も悪くないんでしょ? こんな所出ようよ。うちのギルドハウスでかくまうからさ」

「私を助けてくれるというのか?」

「うん」

「けれど出来るのか? 昔も何人もの仲間が私を助けようとしてくれたが、皆失敗した。その先に待つのは厳しい処罰だぞ」


 お前にその覚悟があるのかと、ちょっと厳しい目で見られた。


「そんなの今更ぁ。それに私達強いからぁ、最悪力技で全部押し切るから大丈夫ぅ。ってわけで〈解錠〉」


 腐ちゃんの薄い本が牢の鍵に触れると扉が開いた。

 今まで明るかった通路が急に暗くなって、所々ある蝋燭だけがぼんやりと灯る。

 なんかヤバイ空気なんじゃない? コレ。


 ――隠しクエストを発掘しました。


 ログウィンドウに表示された1文。

 うん、なんかフラグ踏んだなって気がした。わかってた。

 さてさて、見つけちゃったクエストは何かな?



【特殊クエスト(ギルド)】乙女の祈り

 神殿からジャンヌを助け出し、安全な場所まで連れて行け!



 おぉ、なんかフツー。とても簡単そう。そんなことを考える行為自体がフラグっぽいけど。


「なんか見回りの兵っぽいユニットが配置されたなぁ」


 出口の方を眺める空さんがそんなことを言う。

 フラグの回収、とっても早かったわ。


「これって、なるべく見張りから隠れながら、見つかったらボコって逃げればいいのかな?」

「っぽく見えるよなぁ」

「でもぉ、馬鹿正直に従う必要は無いと思うのぉ」

「ほえ?」


 何やら意味深なセリフを放った腐ちゃんに、あたしと空さんが注目。


「私とこはるちゃんとジャンヌちゃんは姿隠して動くからぁ、その前に空が走って見張り全部トレインすれば楽勝ぉ」


 ビシッとブイマークをきめる腐ちゃん。

 そんな彼女と空さんの間に冷たい風が吹いた気がした。

 腐ちゃんはそんな空気なんて感じていないのか、あたし達の方を振り向いて、片手ずつあたしとジャンヌさんと手をつなぐ。


「姿消す魔法かけちゃったら自分達も姿が見えなくなるからぁ、手ぇつないで移動しようねぇ。行くよぉ、〈視認妨害〉」


 腐ちゃんが魔法を唱えると、女子3人の姿が消えていく。ジト目の空さんを残したままで。


「じゃぁ、空よろしくぅ」

「空さん頼りにしてる!」

「クエクリアしたら、それぞれからのチッスを1回ずつ所望する!」


 欲望に塗れた言葉を吐いて空さんは出口へと走っていった。

 侵入者だとかなんとか、たくさんの足音も遠のいていっている。

 ありがとう空さん。あなたの犠牲は忘れない。


「多分すぐに忘れるよぉ。あれが空の仕事だしぃ」


 心を読んだかのような腐ちゃんの突っ込み。このギルドエスパー多くない?

 まぁいいや。通路安全になったっぽいし、あたし達も行こうか〜。

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