148 これがタマさんの力!
「ィー」(レッドを忘れ気味なのはいつものこととして。わんこ、あなた、さっきからギルチャに反応しませんわね)
「ガオーン」(あたしさ、この姿の時ギルチャに使用制限入ってるんだ~。だから、オープンチャットでお話お願い~)
内緒話ができなくなるけど仕方ない。
大きな力の代償ってやつで諦めます。
「ガオーン」(ギルチャの話が出てきたってことは、何か伝達事項がある感じ?)
「ィー」(あるのですけれど。少しお待ちになって)
それっきり頭の上が静かになる。
きっとギルチャで何か相談してるんだろうね。
ギルチャで伝達したかったってことは、他人に聞かれるとよろしくない類の内容だと容易に想像できる。
ぜったい悪だくみだよね、それ。
まぁいいや。
みんなの相談が終わるまで、あたしは街のみんなと戯れてよ。
ほーら、爆弾の雨だよ~。
ぽいぽいぽいぽいぽーい。
あたしの周辺で爆発が起こりまくって人も建物も吹き飛ばす。
「ゴジ○も真っ青!」
あ、そうなんだ?
あたしあのシリーズ見たことないから、どんなのか知らないんだよね。
「ィー」(待たせたでござるなこはる殿。結論が出たでござるよ)
そんなあたしにタマさんが言ってきた。
「ィー」(拙者たちンジャメナEXは、巨大怪獣こはる殿に搭乗した状態で始まりの街を制圧。その後、この地をこはる殿のドッグランとすることとしたでござる!)
「勝手に決めんな!」
「てかドッグランって何!?」
「ィー」(これで、前にこはるちゃんがちらっと言っていた、戦隊に巨大ロボか怪獣が欲しいっていう希望も叶ったっぺね。お願いが叶った記念に、いつもの口上名乗りいっとくっぺ)
「ィー!」(1つ! 拙者だけ特殊スキルを忘れられている気がするけれど、泣かず!)
「ィー!」(2つ! 実は女の子の格好の方が好きなんて思ってないっぺよ!)
「ィー!」(3つ! この街制圧したら、上納金とかとれるもんかね?)
「ィー!」(4つ! 統治は生かさず殺さずが良いらしいですわよ)
「ィー!」(5つぅ! とりあえず同性でひっつこうぅ?)
「ガオーン!」
「ィー」(怪人戦隊! ンジャメナEX!)
シャキーン!
「戦隊じゃなくて完全に悪の組織じゃねーか!!」
「ィー」(怪人戦隊でござるからな。世間から悪と言われることをやるのが拙者たちの正義でござる。なに、心配はいらぬでござるよ。壊した街は拙者が新しく作り直すでござるからして)
「ィー」(レッドに建物再建させたら、工賃徴収するけどな)
「お前らが壊しときながら修理費請求してくるって何事!? むしろこっちに迷惑料払うべきじゃないの!?」
「ィー」(さぁ行こうっぺこはるちゃん! 街をぶっ壊して、こはるちゃん愛ランドを建設しようっぺ!)
「お願い聞いて。あたしらの人権も守って」
行こうと言われたあたしは、爆弾をばら撒きながら前進を開始。
巨大な手足で建物は踏みつぶす。
壊してもタマさんが建て直してくれるなら、後処理を考えなくてよくて楽だよね!
「ィー」(こはる殿。この爆弾、こはる殿の毛が元になっているようであるが……。使いすぎるとハゲるのではなかろうか?)
景気良く爆弾をばら撒きまくるあたしにタマさんが言ってきた。
むむっ。
毛が元になってるっていっても演出だろうから、実際にハゲることはないだろうけど……。
本当にハゲたら嫌かなぁ。
どうなのジェヴォさん? あたしハゲるの?
(知らぬ)
はぁん。酷い。
とりあえず、攻撃を爆弾からドドメ色の雨に切り替えかな。
さぁ、雨よ降れ降れ~~。
「ぐぇえええええ。爆弾の雨の方がまだましだった」
爆音がなくなった代わりに、周囲からの悲鳴が凄い。
「頼む。こんな映像をずっと見せられ続けるくらいなら、いっそ殺してくれ」
あ、はい。
姫様からいただいた裁きの光でもろもろ消滅させるね。
ズガガガガガ。
厚い雲を切り裂いて光線が降り注ぐ。
「ィー」(こはるちゃん~、もう食べないのぉ? 殺すだけだったらぁ、食べるのでも殺せたよねぇ?)
「ガオーン」(そうなんだけど。なんかもう食べ飽きたっていうか? お腹一杯なのかな? 食べたいって感じがあんまりないんだよね)
「ィー」(そうなんだぁ? 〈捕食〉ってぇ、思ったより癖のあるスキルなんだねぇ)
「ガオーン」(だねぇ)
あ、1人、あたしの横を抜けていった。
後ろから攻撃する気かな? 逃げたいのかな?
とりあえず尻尾でぺちんしとこ。
ぺちん。
あたし的にはぺちんだったんだけど、実際尻尾を地面に叩きつけてみると、どぉおおおんって音がする。
近くの建物もいくつか巻き添えで壊しちゃった。
大丈夫大丈夫、タマさんが修理してくれるから。
そういえば、タマさんを〈捕食〉した時に入手したスキルってどんなのなんだろう?
えとー。
なんかよくわからないスキルアイコンのマークしてるんだけど。
ぽちっとな。
使ってみたら、周囲のがれきがふよふよ空中に浮き上がった。
それがふよふよしてみたり集まってみたりごそごそしてゴリゴリしている。
あたし達が見守っている前で、意味不明のオブジェが出来上がった。
「ィー」(芸術作品が完成したようでござるな)
「ィー」(意味不明すぎてオーパーツ扱いだろ)