14 わーるどくえすと5
「聖女ジャンヌダルク。Lv150。闇、聖属性無効。スキル〈大天使の加護〉の効果により、全ステータスが7分間大幅に上昇……」
神々しくなったジャンヌさんを見ながらお姉ちゃんがつぶやく。
その後は無言でMP回復薬を取り出して、瓶を握り潰していた。
青い液体が消えてお姉ちゃんのMPが回復する。
空さんと腐ちゃんもMPを回復していた。
気を利かせてくれたらしきお姉ちゃんがエーテルをくれたから、あたしはそれを使わせてもらう。
HPは周りのヒーラーさんが回復してくれてるから満タン!
すっかり全快になったあたしの首根っこをお姉ちゃんが掴んだ。
「ふざけんなよ運営! クエスト参加条件がシビアな癖に、ボス強すぎだろうがぁああ!!」
「うきゃぁああああっ!?」
怒号と共に空中に投げられたあたし。
進行方向にジャンヌさんが飛んでいたものだから、彼女の足にしがみついた。
これこそ天の助け。高所から落ちずに済んだ。
「何をするのです!? 離れなさい!」
ジャンヌさんに睨まれる。
うわーん、全然良くなかったよ。絶賛危険のど真ん中だよ。でも落ちたら痛そうだよ。
あたしを振り落とそうとしたのか、ジャンヌさんが殴りかかってくる。
あたしは掴まり場所を変えることでどうにか回避。
そんなことをしていると、銃弾と魔法が飛んでくる。
お姉ちゃんと腐ちゃんの攻撃だからあたしにダメージは無いんだけど、気分が怖いっ!
って油断していたらジャンヌさんの肘打ちが飛んでくるし。
落ちるのは嫌なんだって!
彼女の体の周囲をゴソゴソ動きながら攻撃を避け続ける。
気が付いたら2本の翼に掴まっていた。
「あ、やめなさいあなた。そんな事をしたら飛べない」
焦った声と共にジャンヌさん落下。もれなくあたしも落下。
「ナイスこはるちゃん! そのままそいつの翼おさえといて!」
ジャンヌさんが地上に落ちたことで攻撃が届くようになった空さんが攻撃を開始した。
仲間の攻撃でダメージ受けないのは分かってるけど……怖いよぉおおお!
「おのれ卑怯な! 天の使徒達よ、援護を!」
うわ、ジャンヌさん、あたしを背負った状態で戦いだしたよ。
それにね、周辺にいたお供モンスターが、アンデッドの軍団から天使さん達に変わってる。空中に浮かんで剣やら槍やら弓やら持っていらっしゃる。
ん、弓?
嫌な予感的中。
空から矢が降ってきた。
うぇえ、翼おさえとけって言われてるから避けられないよぅ。一応回復が入ってるから死にはしないけど、凄い嫌な感じ。
で、そんな矢の雨の中、剣と槍の天使さんが突っ込んでくる。こっちは降りてきてくれるから、直接攻撃しか出来ない人でも相手できてるんだけどね。
なんていうか、絵面がカオス。
「ジャスティスゼロ、本気でさっさと倒して! さっきからMP垂れ流しで、そう長くは回復続けられないわよ!」
お助けヒーラーさん達からも悲鳴が上がる。
よく見たら、かなり早いスパンでエーテルの瓶が割られていた。
戦闘組のダメージの食らい方が全員に持続ダメージみたいになってるから、範囲持続回復を使ってくれてるみたい。
便利そうな魔法だよね。
でもそういうのって、やっぱり消耗が大きいんだろうね。
ほんとありがとうございます。
「とっくに最大火力打ち込んでるわ! 実質火力2人状態なのに無理言うな!!」
「燃費悪いスキルばっかり使ってるから大赤字だよねぇ」
こちらも結構な勢いでエーテルを垂れ流しながらお姉ちゃんと腐ちゃん。
火力貢献できなくてごめんね。ジャンヌさんをおさえとくのだけは頑張るから許して!
それにしても、この矢の雨どうにかならないかなぁ。
翼の下に入ったら避けられたりして。翼を傘みたいにできる、いい場所に。
ごそごそ。ごそごそ。ベリッ。
ベリッ?
あ、ジャンヌさんの翼もいじゃった。両方とも。
おぉ!?
しかもこの翼、ドロップアイテム扱いになってるですと!?
「よくやったこはる!」
「こはるちゃんかわゆ格好いい! 愛してる!」
「こはるちゃん~、goodぉ。でもぉ、愛し合うならナナとにして欲しいぃ」
あんたら発言かなり余裕ですね?
まぁいいや。
もう翼おさえとかなくていいなら、あたしも頑張って攻撃するね。
形態変化でジャンヌさんに聖属性が通らなくなってたはずだから、ヒーラーさんに掛けてもらった聖属性付与魔法を解除してっと。
さぁ、攻撃するよ!
バンバン、どかーんどかーん、ザシュッザシュッ、ペチペチ。
飛べなくなったジャンヌさんに総攻撃。
お供が天使になった以外は、地に落ちたジャンヌさんの攻撃パターンって変わらないみたい。
使ってくる魔法が聖属性にはなってるけど、避け方とか同じだし。
もくもくとHPを削ることしばし、ついに悪夢の残りHP1割まで戻ってきた。
「今度は全快なんてしないでね!」
祈りながらペチペチ。
ペチペチ。
ペチペチ。
あ、倒した。
カランと、ジャンヌさんの手から剣が落ちる。
「ここまでか。無念だ」
身につけていた鎧もパラパラと剥がれ落ちていって、最後には薄いチュニックみたいな服1枚だけが残る。そんな彼女が地に膝をついた。
がっくりとうなだれる彼女を、わらわらと出てきた神官さん達が囲む。そして縄で縛っていた。
「ありがとう冒険者達よ。あなた達の働きのおかげで神殿は守られた。この魔女は後日火あぶりにする。そうすれば平和な日々が戻ってくるだろう」
神官さんのお話が続く。
その間に、第2クエストの「ジャンヌダルクを撃破」って項目にチェックがついてる。その上で、「3日後にジャンヌダルクを処刑する」って新しい項目が出てきた。
ゲームとしては正しい流れなんだろうけどさ〜。
ちょびっとだけど、実際の歴史なんて聞いちゃったせいで、なんかもにょる。