133 お疲れ様会
クエストクリアの告知がきた。
ジルさんとジャンヌさんの2人がすーっと消えて、その場からいなくなる。
まぁ、ギルドハウスにジルさんの部屋が増設されてそこに彼が住み着くってなってたし?
ギルドハウスに帰ったらしれっと出迎えてくれるんだろうね。2人で。
一般プレイヤーを始まりの街まで飛ばしてくれる機能は無いみたいだから、あたし達は徒歩で戻る。
ジルさんのお城での戦闘けっこう疲れたからね。
途中で寄り道なんてしないでまっすぐギルドハウスに向かう。
「そういえばね。今回のクエストの途中で、あたし、ついにレベルが150になりました!」
帰り道、あたしは衝撃の事実を発表した。
「は? こはるちゃん、マジで?」
「ほんとほんと、めっちゃほんと。ステータス見てよ」
ぜひあたしのステータスを確認してくれと、みんなに無い胸を張る。
「本当にカンストしてますわ」
「早いねぇ。カンストってこんなにすぐにできるものだったっけぇ?」
「こはるの場合は、しょっぱなから強い敵の群と戦いまくりだったからな。やっぱ凄いなパワーレベリング」
「なんにせよ、ギルドハウスに戻ったらお祝いでござるな。新たな住人も増えるようでござるから、歓迎会も兼ねて」
「あー。あのいけすかないおっさんか。ジャンヌちゃんを奪い合うライバルが増えるなんて、俺フクザツ」
「心配するな。そもそも空はジャンヌの眼中に入っていない。勝負は始まってすらいない」
「酷い! ナナが酷過ぎる! 傷ついた心を癒すために俺を抱きしめて温めて!」
いつも変わらず、うちのギルメンは仲がいいよねぇ。
騒いでいたらギルドハウスに帰りついたよ。
帰りついたハウスのリビングのテーブルには、すでに大量のご馳走と飲み物が並べられている。
この手際の良さはメイドさんの仕事だね。
今までは無かった大量の花で部屋のあちらこちらが飾られているのは、もしかしなくても、ギルドハウスの新たな住人さんのお仕事でしょうか。
「これから祝勝会を開くのだろう? ならば、それにふさわしく場を飾るのは当然だと思うのだよ。それに、花に囲まれている方がジャンヌが輝く」
セリフ後半部分こそジルさんがやりたかったことの主目的な気がしますが。
まぁ、ギルドハウスが華やかなのはいいことだよね。
「お帰りなさいませご主人様がた。大きなクエストをクリアした後はいつもお祝いをなさっていらっしゃったので、今回は私どもの方で先に用意させていただきました。ご迷惑になっていませんでしょうか?」
控えめな感じで出迎えてくれるメイドさん。
そんな彼女のもとに空さんがぶっとんでいって、彼女の両手をガッシリと掴んだ。
「迷惑なんてなってないよ! むしろ俺らの行動を学習してくれてありがとう! メイドちゃんへの愛が深まったよ!! このまま結婚して新婚旅行にでも行こうか」
「ふむ。それはいい。そこで結ばれてくれれば、ジャンヌに手を出そうとする不届き者が減るからな」
人型ジャンヌさんの肩に手を置いて、彼女をホールドした状態でジルさんがほくそ笑む。
いや空さん、あなた、たった今メイドさんに結婚しようって言ったのに、なんでそこでムムって顔するの。
そんな空さんの頭をお姉ちゃんが銃で殴った。
フラフラしてメイドさんから手を離した彼を姫様が縄で縛る。そうして床に転がした。
「ジル。ギルドハウスに住むのは何も言わないが、周囲の感情にくらい配慮しろ。今後、今回と同じような騒動を起こしたら、お前も転がすぞ」
「公序良俗の維持は大切ですわ」
お姉ちゃんと姫様がジルさんに圧をかける。
ジルさんの笑顔が固まって、ゆっくりとジャンヌさんの肩から手を離した。
「うむ。そうだな。領民の精神的健康をおもんぱかるのも、領主のつとめであるし」
微妙に空気が冷える。
そんなの無視してサン=ジェルマンさんが手をたたいた。
「ちょっと! 生活する上での取り決めをするのは後になさいよね! 料理が冷めるじゃない。アタシはお腹がすいてるの!」
「サン=ジェルマン殿の言うとおりでござる。今はひとまずクエストクリアを喜ぼう。ジル・ド・レ殿もようこそ。城に比べれば随分と狭い住処ではあろうが、快適に暮らせるように共に努力しよう」
タマさんが場をとりなしてくれる。
そうだねと、あたし達はご馳走が山盛りのテーブルの周りに移動した。
いつの間にやら縄抜けして、しれっと空さんもテーブルに来てる。
そんな彼が飲み物の満たされたコップの1つを取って、高く掲げた。
「ギルクエクリアお疲れさん! こはるちゃんはレベルカンストおめでとう! お貴族様はようこそ、でも俺の前でジャンヌちゃんやメイドちゃんといちゃつくのは許さん! ってわけで、かんぱーい!!」
「かんぱーい」
めいめい近くのコップを持って乾杯。
あとは好きな食べ物の取り合いが始まった。
みんな、いろいろお疲れ様でした。ぺこり。