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期間限定種族を選んだらショッ○ーにされそうなんだけど? 嫌だから悪の組織乗っ取りますね  作者: 夕立
あたしとお貴族様と魔女の贈りもの。余所様にとってはきっと天災
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132 ジルさん討伐しました

「よし、いいぞこはる! ジャンヌを自由にしろ!」


 あたしがジャンヌさんにすがりついていたらお姉ちゃんが言ってきた。

 ちぇー。

 昼ドラドロドロ遊びもこれでお終いか~。

 遊びと思ってやる分には面白かったのに。面白さに目覚めてきた感じだったのに。


 あたしから解放されたジャンヌさんはほっとため息をついて、すぐに真剣な表情になって、ジルさんの方に走っていった。

 ああ、恋のライバルに恋人が奪われるのを見送る負け犬みたいな気分。


「ジィルぅうううう!!」


 気合いの入ったジャンヌさんの剣がジルさんの胸をとらえる。

 ジルさんが口から血を吐いた。


「ああジャンヌ。ようやく私のもとに戻ってきてくれたんだね」


 それなのに、彼は笑って、ジャンヌさんに剣を突きだす。

 ジルさんの剣がジャンヌさんのお腹を貫いて、彼女の腰からジルさんの剣先が覗いた。

 うぅ、痛そう。

 なのにジャンヌさんは叫び声ひとつあげずに、自らの剣を更に深く押し込んでいっている。


「ジル。眠ろう。もういい。もういいんだ。私のことは忘れて、穏やかに眠ってくれ。私もいつかはそちらにいく」

「君のために怒らなくていいと? でも、それが今の君の望みか。ふふ、ならば、君の新しい望みを叶えてやるのが良い男というやつだろう」


 お互いの剣が体を貫いているけど、ほぼ抱き合っているような格好の2人。

 ジャンヌさんの目からは涙が流れている。


「先に逝く。必ず来てくれたまえ。まぁ、君は約束は守る女だから、いつまでも放置されるということはないだろうが」


 ジルさんは笑って、口から盛大に血を吐いてうなだれた。

 彼のHPゲージはゼロ。

 これまでみたいに、黒い靄が彼に集まってくるっていう現象は起きていない。

 ジャンヌさんがトドメをさすこと。

 これが、ジルさんを倒す条件だっていう予想は当たっていたみたい。


 普段だったら倒した敵さんは泡になって消えるんだけど、ジルさんは消えない。

 ただ、ジャンヌさんに刺さっていた剣だけが消えた。

 ジャンヌさんの剣が胸に刺さったままジルさんの体が倒れる。

 ジルさんの体から、ジャンヌさんは静かに剣を引きぬいた。


 剣を鞘に戻した彼女は、ジルさんの横に座りこんで静かに泣いている。

 うぅ。

 そんなに泣かれると、あたしの涙腺にダメージが。

 ジルさん、やったことは一線を越えまくった酷い人だったけど、ジャンヌさんとの関係だけは本物だったんだね。


 さめざめ泣いているジャンヌさんの肩にタマさんがそっと手を置く。


「ジャンヌ殿。昔の仲間を失って辛いのはわかるでござるが、彼の安寧を祈ってやることこそ騎士の最後の勤めであると思うでござるよ」


 騎士の空さんではなく、武士のタマさんが騎士の勤めを説く不具合。

 泣いていたジャンヌさんがタマさんを見上げて、困ったように笑った。


「そう。そうだな。言ってくれてありがとう珍宝銀銀丸。私が祈らねばジルも浮かばれまい。一度は魔に堕ちた私の祈りでも、主が聞き届けてくれればいいが」


 ジャンヌさんが姿勢を正してひざまずく。

 目を閉じて体の前で手を合わせた。

 それから、祈りの言葉っぽいのをぶつぶつと呟いている。


 その姿は清楚で神々しくて、さすが神の乙女って感じ。

 何かの宗教の従事者っぽい職業の姫様より本物っぽい神聖さがある。


「わんこ。何か失礼なこと考えてませんこと?」

「なにもー?」


 なんでみんな、自分に対する脳内悪口には即座に反応するんだろう。不思議。


 あたし達が小声で喋っている前で、ジルさんの上に光の粒が降ってくる。

 それは薄くジルさんの上に積もって、やがて彼を覆い尽くした。


 そんな状態がしばらく続いていて。

 光の粒の山がピクリと動いた。

 動きはだんだん大きくなってきて、ついには山が動く。

 というか、ジルさんが何事もなかったかのように起き上った。


「ジル?」


 ジャンヌさんにも予想外だったのか、目が丸くなってる。

 対象的に、ジルさんはいい顔色。で、笑顔。


「やぁジャンヌ。驚いているね。いやぁ、私も驚いているよ。なにせ、おとなしく死のうと思っていたら、お前はこっちの世界に戻りなさいと謎の声に言われてしまってね。あれが神の声というやつなのだろうか」


 ははっとジルさんが笑う。

 そんな彼の胸をジャンヌさんがどんと殴った。


「ふざけるな! 私がっ、どれだけの覚悟を持ってあなたを倒したと!?」

「わかってるさ。君が私の生を終わらせて、その上で祈ってくれたから、私はこうして心穏やかな状態で蘇られたのだろう。感謝している。ありがとう、私の永遠の乙女よ」


 ジルさんはジャンヌさんの左手をとって手の甲にキスをする。

 ああ、空さんが嫉妬でうるさい。

 俺もジャンヌちゃんにちゅーしたい! じゃなーい!


 ジャンヌさんのお顔を真っ赤にさせたらジルさんの気が済んだらしく、今度の彼は空さんの方を向いた。


「ありがとう、正義の心持つギルドの者たちよ。これから私も君たちのギルドハウスに住んで、君らの役にたてるように頑張ろう。よろしく頼む」


 え? え? ギルドハウスの住人増えるの?

 しかも、あたし達からの許可必要なし?



【特殊クエスト(ギルド)】愛の形 クリア

 ギルドハウスにジル・ド・レの部屋が増設され、彼が常駐するようになる。

 ギルド恩寵〈青髭の祝福〉獲得。

 〈青髭の祝福〉の効果

 ・オークションで物を買う時、買値が1割引きされる。

 ・オークションで物を売る時、売値より1割多い金額が入金される。

 ・ギルドハウスのジル・ド・レを通してオークションを利用できる。(マーケット広場までいかなくてよくなる)。

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i396991
― 新着の感想 ―
[良い点] ええシーンやのに……。 タマさん、改めてその名前えええ!!(笑) [一言] 〈青髭の祝福〉 ……字ヅラからして、『恩寵』に見えないどころか……。 むしろ何かの呪いっぽいような。(笑)
[一言] こはるが新しい扉を開けてしまったwww ギルドハウスにまた新たな住人が。オカマ、聖女、ヤンデレ紳士。全部の性別が揃った!
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