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期間限定種族を選んだらショッ○ーにされそうなんだけど? 嫌だから悪の組織乗っ取りますね  作者: 夕立
あたしとお貴族様と魔女の贈りもの。余所様にとってはきっと天災
123/149

123 愛の形

 ティフォージュ城で見つけた神官さんを始まりの街の神殿まで連れ帰ったら、クエストはクリアになった。

 けど、クリア報酬がお金と経験値だけってなんかしょぼい。


「これ、ぜったい続きあるよね~」

「で、あろうな」

「続きにもぉ、あのお城にあったブツみたいなぁ、素敵なおもちゃがあるのかなぁ。うふっ。うふふふふっ」


 駄目だ。

 この、薄い本に頬ずりしてるトンガリ帽子の変態はいないことにしよう。


 非常に不完全燃焼したあたし達は、とりあえずギルドハウスに帰還することにしたよ。

 あたしは全く使わなかった回復薬をギルド倉庫に戻しておきたいし、腐ちゃんは戦利品を個人倉庫に保管したいらしいし。

 タマさんはついてきてるだけ。


 ジルさんがジャンヌさんに会いにきてないかなってちょっと期待してみたけど、帰りついたギルドハウスに彼の姿はない。


「ただいま~」

「ただいま戻ったでござる」

「たっだいまぁ」

「おかえりなさいませ」

「ニャー」

「今日、ジルさん遊びに来てないんだ?」

「本日はいらしていませんね」

「ニャー」(ジルがどうかしたのか?)

「う~ん。まぁ、どうかしているのかもしれないし、しないのかもしれないし」

「ニャー」(要領を得ないな)


 ジャンヌさんがあたしの頭の上に乗った。

 彼女を頭の上に乗せたまま、あたしはリビングのソファに移動。

 ジャンヌさんは机の上に飛び移った。


「ニャー」(5050801と珍宝銀銀丸が「クエストだ~!」と喜び勇んで出て行ったはずだが。こはるも同じクエストをしてきたのだろう? 浮かない感じだが、失敗したとか?)

「ううん。クエ自体はクリアできたんだけどさ~」


 あたしは、今日やったクエストのあらましをジャンヌさんに話した。

 ちょっと前に話した、街のおばさんが探していたと思われる子どもたちは殺されていたこと。

 変な儀式とか実験の跡があったこと。

 お城に誰も人がいなかったこと。


 あたしの話をジャンヌさんは黙って聞いている。

 話が終わっても彼女はしばらく何も言わないで、あたし、タマさん、腐ちゃん、誰からも表情が見えない方へと顔を向けた。


「ニャー」(西のティフォージュ城はジルの城だ。それは間違いない。昔はそうだったし、この前本人に会った時も、あそこが家のままだと言っていたからな)


 あ、そうなんだ?


「ニャー」(私が1度死んだ人間であることを主たちは知っているな?)

「うん。(こっちの世界での設定を)詳しくは知らないけど、初めてジャンヌさんと戦った時はアンデッドだったよね」

「ニャー」(そうだ。それで、アンデッドとしてさ迷っている時に小耳に挟んだ話の中に、ジルが信仰を捨て、非道な領主になり下がったというものがあった)


 え? そうなの?

 しかも、続いているジャンヌさんのお話によると、他にも噂が飛び交ってたんだって。

 ジルさんが信仰を捨てた理由が、ジャンヌさんが神殿に裏切られて無実の罪で殺されたからっていう噂。


「ジャンヌちゃんとジル・ド・レってぇ、戦場でずっと一緒に戦い続けてきた相棒だったらしいよぉ。ジル・ド・レってばぁ、ジャンヌちゃんが好きすぎてぇ、奥さんと離婚したとかいう話も残ってるくらいだもん~」


 腐ちゃん、横からこっそり情報提供ありがとうね!

 ふむふむ。

 めっちゃ好きな人を神殿に殺されたと。

 それはあたしでも信仰捨てるかもしれない。


「それにねぇ、ジル・ド・レってぇ、ジャンヌちゃんが神殿に捕らわれた時にぃ、助けようとして頑張ったらしいよぉ。助けられなくて終わったみたいだけどぉ」


 はぁ~ん。辛い。

 ひょっとして、お城にあった悪魔崇拝の現場っぽいのや、何かの実験跡も、ジャンヌさんを生き返らせようとした努力の跡だったりして。


「ニャー」(けれど、私がこのギルドに世話になるようになってから再会した彼は、昔の彼のままだった。だから私は、そんな話のことなど忘れていたのだ。いや、与太話だろうと忘れようとしていた)


 って。

 あたしが腐ちゃんから補講を受けている間にもジャンヌさんの話は続いている。

 今まであらぬ方を向いていたジャンヌさんが、悟ったような目であたし達の方を見た。


「ニャー」(しかし、噂話の方が正しかったのだな。彼は外道に堕ち、私の前でだけ善人面を装っていたわけだ)


 お、おう。

 何やら口調が厳しくなって、怪しい雲行きになってきましたね。


「ニャー」(私をティフォージュ城に連れて行って欲しい。もう城にジルはいないかもしれないが、彼の行き先のヒントくらいは見つけられるかもしれない。そうして、何が何でも彼を見つけ出して、引導を渡してやりたい)


 それが、彼を外道におとしめてしまった自分の責任だろうから。そう、ジャンヌさんは最後に小さくつぶやいた。



【特殊クエスト(ギルド)】愛の形

 無実の罪によってジャンヌを殺されたことでジル・ド・レは非道へ堕ちてしまった。

 そんな彼に引導を渡したいとジャンヌは言う。

 彼女の願いを聞き届けよう。


 討伐対象:ジル・ド・レ (0/1)

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i396991
― 新着の感想 ―
[一言] あ、そうか!生きてるんじゃなくて生き返ったというかなんというか。とにかく一度は死んでたんだ ジルさん、どこに行ったのか。討伐対象になっちゃったけど……
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