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11 わーるどくえすと2

 神殿に足を踏み入れたら、クエストガイドの「尖兵が来る前に神殿にたどり着く」の欄にチェックがついた。

「第2クエストへの参加権を獲得」っていう文章がログウインドウに流れる。

 第2クエストってことは、やっぱりこの後も何か続くんだね。


 とりあえず、離ればなれになっていたお姉ちゃんや腐ちゃんと合流。

 そうこうしている間に残り時間がゼロになった。


「あれを見よ! あのおぞましき姿、悪魔の遣いに違いない!」


 神殿の奥から出てきた神官さんらしき人が外を指す。つられてそっちを見たら、突然大量のモンスターが湧き出てきた。


「あのモンスター急に出てきたよ! あと、街中って安全地帯じゃなかったっけ!?」

「まぁ、ゲームだし、ご都合が全てよ。戦闘もさ、神殿周辺だけ一時的に解放されたんじゃないか?」


 どうということなくお姉ちゃんが返してくる。

 空さんと腐ちゃんも同じ反応。

 周囲も別段不思議がってないから、こんなものなんだろうね。


「そうやってまた民を騙すのか。汚いな。神に仕える職業とはなんなのか本当にわからなくなる」


 大量のモンスターの中から、ガチャガチャ音をさせながら、1体? 1人? 出てきた。

 人間の大きさなんだけどね、汚れた全身鎧の継ぎ目から火がぼーぼー出てるから、これ絶対人じゃないよね。

 ジャンヌダルクって名前が表示されてるけど、設定ミスだよね?

 歴史の教科書に載ってたジャンヌダルクって聖女様だったよ?


「ジャンヌダルクぅ。百年戦争でフランスに勝利をもたらした立役者ぁ。戦争後期にぃ、イギリス側と内通していた司教に宗教裁判にかけられ火刑になるぅ」


 腐ちゃん横から説明ありがとううう!

 ってことは、あれ?

 目の前のジャンヌさんは燃やされちゃった後っていう設定なのかな?

 お供モンスターも彷徨う鎧(リビングデッド)怨霊レイスってなってるから、アンデッドモンスターのご一行様なんだろうね。


「聞け、冒険者達よ! 私は大天使の啓示を授かり戦いに参加した。それを、このもの達は己が保身と利益のために嘘と決めつけたのだ! なんたる腐敗!!」


 ジャンヌさんのセリフが続く。

 お供モンスターが一緒になって騒ぎ声を上げる。うーん、芸が細かいなぁ。


「神の祝福は天啓を受けた我にありっ! 偽りの聖職者よ、この世から消えるがいい!」

「偉大なる冒険者の方々よ、どうぞ非力な我らをお守りください!!」


 ジャンヌさんと神官さんが叫ぶ。そうしたらクエストガイドが更新された。

 なになに?



 第2クエスト

 概要:ついに尖兵が神殿に到着した。彼らの目的は神殿の破壊だ。敵将を撃破し、神殿を守れ!


 クリア条件:敵将撃破

 失敗条件:

 ・プレイヤーキャラ(PC)の全滅

 ・神殿に配置されている神官を10人殺される 神官残り (10/10)


 失敗時、クエスト消滅


 ※第2クエストへの参加権を持たないPCは敵モンスターにダメージを与えられない。

 ※参加PCに対して強化魔法(バフ)回復魔法(ヒール)を飛ばすことは可能。


 敵将:

 ジャンヌダルク 撃破 (0/1)



 うーん。


「ねぇねぇ」


 あたしはお姉ちゃんの背中をつついた。

 お姉ちゃんが振り向く。


「どうした?」

「見た目はアレなんだけどさ、話だけ聞いてたら、ジャンヌさんの方が正当なコト言ってない?」

「だなぁ。でもまぁ、ゲームシナリオなんてガバガバなもんだよ。気にしてたらキリがないからな」


 そう言ったお姉ちゃんはPTメンバーにバフ弾を撃っていく。


「こはるちゃん、初のきちんとしたPT、よろしくね!」


 空さんが笑顔で白い歯を輝かせる。


「こはるちゃんよろしくぅ」


 腐ちゃんも小声で挨拶してくれた。こちらこそよろしくね!

 えーと、腐ちゃんの職業は魔法使い(ソーサレス)ってなってる。

 魔法でどばーんってやる人だね!

 この子もレベルは150。

 カンストしてる人って結構多いんだね。


 と思ったんだけど、周囲のプレイヤーの皆さんを見てみるとそうでもないみたい。ここに集まっている人達だと、80〜120が多い感じ。

 うーん。

 気にしないどこ。


「よーし、バフokだ。とりあえず軽く突っ込んでみるか」

「うぃー」

「らじゃぁ〜」

「はーい」


 お姉ちゃんの号令で、空さんを先頭にあたし達は敵さん集団の方に向かう。

 そんなあたし達の横を何人もの人達が追い抜いていく。


「お前らにばっか美味しい思いさせねーぞ」


 とかなんとか、そんな事を言っている人が多いんだけど。

 このセリフってあたし達に言われてる?

 はて?


「美味しい思いって何かな?」

「狼獣人にこはるしかなれなかったから、それじゃね?」

「ケツの穴の小さい連中だよな〜」

「あんな連中が狼獣人になっても可愛くないからぁ、こはるちゃんがなれて良かったねぇ」

「ていうか、あいつら語彙ないな。どいつもこいつも似たような言葉言いやがって」


 お姉ちゃんが銃を構える。そうして、追い抜いていった皆さんに向けて思いっきり弾を撃ち始めた。


「お前ら罵るならもう少しセンスを見せろ! いつもいつも似たようなパターンでつまらんぞ!!」

「ひぃいいっ! ナナオ女王様が乱心したぞ!」

「味方を撃つんじゃねぇ!」

「馬鹿が! PK(プレイヤーキル)不可フィールドだ! 命拾いしたな!!」

「だからって撃つんじゃねぇ!!」


 バリバリ、ギャー、バリバリ。

 銃声と悲鳴がこだまする。


 ていうか、いつもいつもってお姉ちゃん言ってたよね。てことは、このギルド、何か起こす常習犯だったり?


「あ、いけね」


 お姉ちゃんが気まずそうな声を出した。

 ん? どうしたの?


「しでかしたな」

「やっちゃったねぇ」


 あたしと違って、空さんと腐ちゃんは全てお見通しな空気。


「ゴメ。遊びで撃った弾が、PC素通りして雑魚敵(モブ)に当たっちゃった」


 てへっ。お姉ちゃんが舌を出しながら自分の頭を軽く小突く。

 そうかそうかー。雑魚敵さんに攻撃が当たっちゃったんだね。しかもお姉ちゃん、結構な弾数吐き出してたよね。


 うん、あたし達の方にすんごい数のモンスターが向かってきてるのも納得かな。

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