106 戦隊の盾回収
『というか、実は俺はすでにお前たちの近くまで来ているっぺ』
『え? そうなの?』
『お前たちを挟んでるギルド、〈フジワラノカタマリ〉と〈滝川ムリシテル〉だろっぺ? 見えてる見えてる。てか、喋ってる間にピンクちゃんの隣まで来たっぺ』
「ィー!?」(ってちょっと、今誰かあたしの尻尾触ったでしょ!?)
『あわわ。体が見えないから、ギリギリまで近づくつもりだったのが触ってしまったっぺ。事故だっぺ』
『お前かーーーーっ! ドドメちゃん、この変態の姿見えるようにしてっ!!』
『って、おい! 私も何かに触られたぞ!』
『ちょっと、今、胸触りましたわよね?』
『ストーカー気質持ちを見えなくするの危険だねぇ』
空さんの姿が現れる。
まさに腐ちゃんに触ろうとしているところで、触れる直前に腐ちゃんに薄い本で殴られていた。
残念。
その本が厚ければ素敵な鈍器になれたのに。
薄い本で殴られただけだから空さんは元気ピンピン。
むしろもっと殴ってくれと催促している始末。
ひとしきり遊んで満足したのか、他のギルドの人達がドン引きしてるのに気付いて正気に戻ったのか、空さんが急にシャキッとなった。
「ィー!」(ンジャメナEXの守護神、スカイが合流したからには心配はいらないっぺ! さぁ、攻撃してくればいいっぺよ! どんな攻撃も俺が受け止めてやるっぺ!)
格好よく空さんが宣言したんだけどさ。
周囲の誰も反応しないっていうか。
反応できないっていうか。
流れの変更が急すぎてついていけないんだろうなって思う。
いち早く状況に適応したらしきお姉ちゃんが、新たに遭遇したギルドのヒーラーさんを消し飛ばした。
腐ちゃんは攻撃魔法をバラまくでしょ。
あたしは魔術師さんめがけて攻撃にレッツゴー。
被害を受けて〈フジワラノカタマリ〉の皆さんも正気に戻ったのか、戦闘態勢になる。
騎士さんに〈タウント〉を使われて、あたしの攻撃対象が騎士さんに。
でも、〈フジワラノカタマリ〉のヒーラーさんは倒しておいたから、魔術師さんは虫の息。アイテムで回復しようとしていたけど――。
回復しきる前に腐ちゃんの全体魔法でとどめを刺されていた。
「ィー」(そこそこ良い感じなんじゃね? さすが俺様。PTが一気に安定なんじゃねっぺか?)
「ィー」(確かにそうなんだが)
お姉ちゃんの顔が後方を向く。
それから広範囲に視線をめぐらせて、かと思ったらあらぬ方に走りだした。
『後ろからもう1ギルド来る。あそこ、遭遇した時は6人だったが、全部で50人くらいいるギルドだったと思うんだよな。応援呼ばれてるだろうから、追い付かれてまともにやり合うと対応できん。逃げるぞ』
ひええ、それは大惨事。逃げるが勝ちだね! あたしもお姉ちゃんに続く。
『ピンク、お前が先頭だ。次がドドメ、ホワイト、私。スカイがしんがりな!』
『はぁ~い』
『了解っぺよ~』
『逃げ道は私とピンクちゃんで開くねぇ~』
お姉ちゃんの指示どおりの隊列になって荒野を走る。
『何やらごたついているようでござるが、合流場所は遺跡跡のままでよいのでござるか?』
『そっちの様子どうよ?』
『ギリギリ付いてきてるのは1人でござるな。遺跡跡まで連れていくか振りきれるのかは微妙なところでござる』
『それなら問題無い。さっさと合流しよう。つーか、私らが先についてしまうと問題しかないから、同着か、レッドが少しだけ先に着くくらいが理想だな』
あたし達が合流場所に先に着いちゃった時の問題って、そこで待機してると後続の敵さん達に追い付かれちゃって危険が危ないってことだよね?
しかし。しかしだよ?
合流場所に辿りつくタイミングまで合わせるって難しくない?
えとえと、地図地図。
同じPTメンバどうしなら、誰がどこにいるのかマップに表示されるから。
それであたし達とタマさんの今の居場所を探してっと。
それによると、遺跡跡までのあたし達とタマさんの距離は同じくらい。
お互いにこのままのペースで走れば同着くらいになるのかな~。
ていうか、マップを視界の隅に出したまんまで走って、遺跡跡を目指しつつもじわじわタマさんの方に寄っていけば、合流早められたりしないのかな?
ん~。
タマさん方の後続ひき離しとかの問題もあるからやめとこ。
あたし達だって何人も後ろに連れてる状態なわけだし。
ギルドのブレーン的存在のお姉ちゃんの計画には従っておいた方が安全そう。
今のあたしにできることは、腐ちゃんが倒しそこねたモンスターを倒しつつ、道を先導するくらい。
それくらしかできないからこそ、それだけは一所懸命頑張ります!