105 いついかなる時も煩悩は消えません
『綺麗な御仁を見かけたら追いかけたくなる気持ち、拙者もわかるでござるよ』
『だろっぺ?』
そこ、変な共感しないでよ。
『ていうか、レッドさん無事なんだ?』
『うむ。祈祷師殿に貰った加護は失ったが、なんとか』
『合流できそうな感じぃ? あぁ、スカイは合流してこなくていいよぉ』
『酷いっぺ!』
酷いもなにも身から出た錆じゃんね。
『すぐにでも合流したいところでござるが、まだ20人ほど引きつれている。レベルがそこそこ高いようでござるから、まともにぶつかると拙者たちが苦しかろう。もう少し走って数を減らしてからの方が良いと思うでござる』
『合流場所を変える方がいいかもな。スカイ、お前今どこにいるんだ?』
『遺跡跡近くっぺね~』
『それじゃ遺跡跡で合流な。レッドもそれでいいか?』
『ふむ。悪くないと思うでござる』
『じゃ、そういうことで』
お姉ちゃんが壁から背を離した。
あたしと腐ちゃん、姫様も立ちあがる。
「ィー」(また姿消しとくぅ?)
「ィー」(いやもうこのままでいいんじゃないか? 幸いこの近辺にプレイヤーキャラあんまりいないし。団体行動するってなると、お互いの姿が見えないと動きにくいわ)
「ィー」(わかったぁ。それじゃぁピンクちゃん~、先頭よろしくねぇ)
腐ちゃんに背をぽんと叩かれたあたし。
先頭がなんのことやらよくわからなかった。
って、あ!
移動する時の先頭か!
確かに、今いるメンバー後衛ばっかりで、前衛があたししかいない。
後衛=防御力紙だから、敵さんと遭遇した時に攻撃対象にされやすい先頭にはなりたくないよねぇ。っていうかできないよね。
よーし、あたし、先頭ポジション頑張ります!
だけど、モンスターも他のギルドの人達もあたし達に遭遇しにこないでね!
お祈りだけしてあたしは走りだした。
後ろにみんなもついてくる。
フィールドモンスターはね、遭遇しても大丈夫みたい。
ここら辺ってイベント初期エリアだから、レベル低いモンスターしか配置されてないし。
けど、たまに遭遇する他のギルドの人達が怖いよおおお!
お1人様を見つけたら問答無用で抹殺。
2人以上を見つけたら、その人達に見つからないように遠回りで移動。
遠回りしてても見つかっちゃう時は見つかるだろうから、気が気じゃないんだよね。
「って、おい。あれ、討伐依頼のあったジャスティスゼロの連中なんじゃないのか? 怪人の格好だし」
なんて心配してたら、ついに見つかったぁあああ!?
しかもあちらさん6人もいるんですけど!
ひあああ、銃弾が飛んできた!
姫様に攻撃が当たってHP3割持っていかれてるんですけど!
『ピンクはともかく遺跡跡に向かって走れ! 余裕があれば、攻撃くらってる奴にHP回復薬を投げつつな! ホワイトは走りながらできる範囲で回復を! ドドメ、走りながら使える魔法であっちに嫌がらせ。私は逃げ撃ちする。スカイ! こっちに移動してこい! 遺跡跡から4時の方向な!』
『わかったっぺよ~』
『はああい!』
あたしはとりあえず姫様にHP回復薬を投げた。
姫様いろんな回復魔法使えるけど、動きながら使える魔法ってそんなになかったはずなんだよね。
今だって、単体持続回復を自分にかけた後はアイテムでダメージを癒してる。
ひぃ、また横から攻撃飛んできた!
今度の被害者は腐ちゃん。
せめてあたしを狙ってくれれば、回避率高いし、防御力やHPも姫様や腐ちゃんよりマシなのに!
ヘイトコントロール系のスキルを持っていないのが、こういう時には悔しい。
「ィー」(くっそ、こんな、フルPTなら余裕な奴ら相手にアイテムを使わにゃならんとは!)
わめきながらお姉ちゃんが球状のアイテムを投げた。
敵ギルドさんの方に飛んで行った球は、あたし達と敵ギルドさんの間の空間で爆発。周囲の空間が霞んだ。
「ィー?」(あれ何?)
「ィー」(あの靄の中を移動する間は鈍足のデバフが付く。定期的にこのアイテムを投げれば、どこかで振り払えるはずだ)
そんな便利アイテムあるんだ?
〈はやぶさの靴〉で移動速度をドーピングしてるあたし達だけど、相手さんの移動速度が遅くなってくれると尚良いよね。
「おいあの怪人、お尋ね者の連中じゃね?」
ひゃああ、違うギルドと遭遇しました!
『というか。先ほどのギルドは討伐依頼、今度はお尋ね者ですの? ギルド連合でギルドハウスを攻められたり、わたくし達集中的に狙われてるみたいですけど』
『なんかそんな感じだよな~。人数少ないけど残すと面倒なギルドから潰していってるとかなのかね?』
『攻められるのは仕方ないとして、せめてフルPTの時に来てよぉおお』
『むっふっふ。ピンクちゃん、俺の偉大さを実感してるっぺか? 盾のいない戦闘は辛かろうっぺ?』
ぐ。
空さんのアピールがなんかムカツク。けど言ってることは間違っていない。
『合流したらみんなを守り抜くから、守りぬけたあかつきには、女性陣からアツい抱擁とチッスを――』
こんな時くらい煩悩捨てろやエロがっぱぁあああ!