103 タコ殴りされそうな勢いです
掲げた目標の1つ、ミッション1位クリアを達成できたあたし達。
ギルドハウスに戻ったら、メイドさんと姫様に祝勝会の飲食物を作ってもらえた。
持ち込んだ食材と途中で入手した物しか使えないからたいした物は出せないんだけど、って2人とも言ってたんだけど。
普通に豪華です!
全員お茶と煎餅と饅頭と卵料理と葉っぱでお祝いって、いつもこうだと嫌だけど、たまにならいい感じ。味は美味しいし。
それに満足して、リビングに架かってるハンモックで寝るあたし達。
翌朝からはギルド戦に本格参戦予定だから、しっかり休んでおかないとね!
「アンタ達は休めてるけど、アタシには休みゼロじゃないの! NPC使いが荒すぎるって運営に報告するわよ! 世のブラック企業もビックリなブラックっぷりなギルドだって!」
ギルドハウスの防衛に駆り出されてるサン=ジェルマンさんが騒いでる。
でも聞こえないふり。
だいたい、サン=ジェルマンさんってNPCなんだから、休憩があってもなくても変わらないじゃん。
元気じゃん。
ジャンヌさんは何も文句言わないっていうか、むしろ、襲ってくる奴が少なくて暇って言ってるくらいじゃん。
おっさんが我儘で文句が多すぎるんだと思います。はい。
若くて美人なジャンヌさんを見習って、オカマなおっさんもきちんと仕事しろ。
そんな、イベント中ながらも、普段と同じようにのんきな時間を過ごしていたあたし達。
ドーンという大きな音がしたかと思ったらハンモックが揺れて、あたしの目が覚めた。
「ィー?」(ほえぇ?)
寝ぼけた頭で周囲を見回してみたところ、他のみんなも今の音と揺れで起きたって感じ。
空さんはそのまままた寝ようとしてるし。
図太いな~。
んまぁ、あたしもまた寝るつもりなんだけど。
外でサン=ジェルマンさんとジャンヌさんが他のギルドと戦ってる音と振動でしょ?
あの2人に任せとけば大丈夫。
人の仕事を奪うのはよくないって偉い誰かが言ってた気がするし。
おぉ、また揺れた。
音もずっと続いてる。
けどまぁ、うちには鉄壁の守りがいるからあたしは寝ても大丈夫大丈夫。
「ちょっと! こんだけドンパチやってるのに誰一人として起きてこないってどういうコトよ!? アンタら図太いを通り越しておかしいんじゃない!?」
大声でがなりながらサン=ジェルマンさんがハウスの中に飛び込んできた。
玄関扉は即閉じられる。
「ィー」(んな言ったって、ジャンヌちゃんとお前といれば問題なしだろっぺ?)
「ある程度まではそうだけど! それでも、外の戦闘が激しそうだったら様子見に出てくるもんデショ!?」
「ィー」(拙者たちはお2人を信頼しているでござる。なので寝るでござる)
「ィー」(変な起こされ方したせいでぇ、いいところだった夢がブチ切れたんだけどぉ)
「ィー」(睡眠不足はお肌の大敵ですわ)
「いいから起きろやクソボケどもが! 他のギルドの連中が徒党を組んで攻めてきてんのよ! アタシ達だけじゃ防衛しきれないのよ! とっとと逃げろっつってんのよ!!」
サン=ジェルマンさんがあたし達の寝ているハンモックを下から蹴りあげる。
ィーとうめきながら、あたし達はリビングに投げ出された。
「ィー」(んあ~? なんだったっけか? よそのギルドが攻めてきたって?)
「徒党を組んでよ! 3つ4つどころの話じゃないわよ!」
「ィー」(なんでよそのギルドがうちみたいな弱小に徒党を組んで向かってきてますの?)
「んなの知らないわよ! アンタ達が外で何かしでかしたんじゃないの!?」
えー?
何かしでかしたって、しでかした記憶しかないんですが。
「ィー」(って、たくさんのギルドから襲撃受けてるの? やばくない?)
「だからヤバイっつってんだろーが! とっとと逃げなさいよこのオバカ達っ!!」
わ、わ。
わかったよ! ようやく頭が起きて事態がのみこめてきたよ。だからお尻蹴らないでよサン=ジェルマンさん!!
そんなやり取りをしている間にも、サン=ジェルマンさんの周囲を飛んでいる水晶が砕けていく。
これあれか、昔戦った大天使さん達が倒されていってるってことだよね?
「ィー」(ふむ。事態は把握した。今はとりあえず逃げるのが最善のようでござるな)
「ィー」(逃げるにしても、出入り口は1カ所ですわよ。バレないように逃げようがありませんわ)
「ィー」(サン=ジェルマンがハウス出る時に、俺達は魔法で姿消して脱出ってのどうだっぺ?)
「ィー」(サン=ジェルマンが外に出て、そのまま玄関扉開けたままにしとくのか? 明らかに不自然だろ。今だって、入ったら即閉めてたのに)
じゃぁどうするんだって、案はいくつか出てくるんだけど、コレだ! っていうのに辿りつかない。
「ィー」(よし、ではこうしよう)
そんな中、タマさんが手を叩いた。
「ィー」(サン=ジェルマン殿が外に出る時に拙者も普通に外に出る。それで、玄関扉を開いたままで扉の前に余裕風を吹かせながら立っていよう。その間に、他の者は姿を消して脱出。時間を見て拙者も扉を閉めて離脱)
「ィー」(ハウス出るだけならそれで出れそうだけどぉ、レッドの危険度高くないぃ?)
「ィー」(このまま手をこまねいているよりはマシであろう。なに、拙者には祈祷師どのから貰った加護もある。なんとかなるであろうよ)