表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
REトモコパラドクス  作者: 大橋むつお
86/88

86『追い詰める』

RE・友子パラドクス


86『追い詰める』 





 念のためにバリアを張って広場に向かう。ポチとハナには「離れるんじゃないよ」と念を押し、二人で一つのバリアに包まれている。


 奥の岩の広場では、大勢のT町の住人が亡くなっていた。遺体のそばにはいろんな杯が転がっている。


 そうだ……ここは聖杯の広間なんだ。


――聖遺物……によって神はその御業を示され……光が満ちるであろう――


 聖骸布の切れはしからは聖遺物の言葉が読み取れたが、それが何を指すのかまでは読み取れなかった。だいたい、聖骸布そのものも聖遺物――光が満ちる――も比喩に過ぎて何を指すのかは分からなかった。


 千に余る聖杯が並んでいたのだろう。その中に本物はただ一つ。他の聖杯はフェイクで、それに満たされた水を飲んだものは……ことごとく血反吐を吐いて死んでいたのだ。


「お、お前達は天使か……二千年にわたり、世の人々を苦しみの底に追いやった、禍々しき神のしもべどもか!」


――天使?――


――バリアでそう見えるんだろう――


――混乱しているのね――


――このままでいこう――


 聖ガブリエル  聖ヨハネ  聖ラファエル


 司教は、その知識と恐怖心から勝手に思い込んでいる。よく見ればラファエルは上半身と下半身にズレがあるのだが(ポチの背中にハナが乗っている)思い込んだ司教には分からないようだ。


 司教の傍らには、まだ十数人の人間が残っていた。


 一人は、あのモーテルのオヤジ。他は町の最後の生き残りの人たち。マインドコントロールされているのだろう、みんな目には生気が無かった。そしてその手には、それぞれ聖杯が……。


 そして、二人と司教の間には車椅子に乗った少女と、その母親がいた。この三人は聖杯を手にしてはいなかった。


「みなさん、その聖杯は、捨てなさい。いずれもニセモノです」


 ミカエルが言うと、町の人たちは動きを止めた。しかし目の光は、まだ戻ってこない。


「司教、その子が、あなたの娘ですね。そして横の女性が、あなたの妻だ」


「違う! この子は神の子だ。この女は、その神の子の母。新しきマリアだ。この神の子は病んでいる。放っておくと、あと一月と肉体はもたない。この子は、この現世で肉体を成長させ、永遠の若さと命を授かり、本当の神の御教えを、人々に伝えなければならない。その為には真の聖杯に満たされた聖水を飲まねばならない」


「そのために、町の人たちに試させたのですね……」


「聖骸布の全てが手に入っていれば、こんな手間はいらなかった。手に入らなかった聖骸布を取り戻すのには時間がない。そこで、こんなに大勢の信者が犠牲にならなければならなかった」


「司教、あなたは聖職の身でありながら子をもうけた。それを罪と感じ、その子を神の子と思いこんでしまった」


「違う。この御子こそが神の子なのだ。わたしは神の子が生まれる手助けをしたにすぎない。この神の子を護持するしもべにすぎない」


「ならば、残った人々と共に盃をあおるがいい、神の恩寵があれば、その願い聞き遂げられ、御子一人だけが無事であろう。さあ、司教、迷うことはない、どうぞ飲みなさい」


「グヌヌ……」


「ならば、このヨハネが音頭をとってやろう」


 ヨハネの友子も調子に乗ってきた。


「ガブリエルもラファエルもいっしょに……」


「「「ワン……ツー……スリー……」」」



「ええい! 聖水は後だ、みな、あの天使どもを贄にせよ!」



 司教が目を血走らせて叫ぶ!


 住人たちは盃を台に戻し、光に包まれたかと思うと一斉にクリーチャーに変身し、死んだ住人たちはどす黒い血反吐を垂らしたままアンデッドとして蘇った!


 


☆彡 主な登場人物


鈴木 友子        30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女

鈴木 一郎        友子の弟で父親

鈴木 春奈        一郎の妻

鈴木  栞        未来からやってきて友子の命を狙う友子の娘

白井 紀香        2年B組 演劇部部長 友子の宿敵

大佛  聡        クラスの委員長

王  梨香        クラスメート

長峰 純子        クラスメート

麻子           クラスメート

妙子           クラスメート 演劇部

水島 昭二        談話室の幽霊 水島結衣との二重人格 バニラエッセンズボーカル

滝川 修         城南大の学生を名乗る退役義体兵士

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ