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REトモコパラドクス  作者: 大橋むつお
63/88

63『お隣の中野さん・1』

RE・友子パラドクス


63『お隣の中野さん・1』 





 後ろから音もなくやってくるワゴン車には、とっくに気づいていた。




 車は友子を追い越し、電柱一つ分前のところで止まった。ナンバープレートは偽装してある。


 友子は、女子高生らしく、少し怯えた風で車の横をすり抜けようとした。チラ見した車の中に人影はない。


「静かにしろ、黙って車に乗るんだ……!」


 ひしゃげた声がした。男は友子の背中に鋭いものを当て、左手で抱きかかえるようにして口を塞いで車内に押し込んだ。男は、友子の胸を握るように押さえ、押し込むときにお尻を同じように掴むようにした。正直キモかった。意外な器用さで目隠しをされ腕も縛られたが、友子は我慢した。


「さ、騒ぐと、こ、殺すからな!」


「は、はひ……」


 車は発進し、男は震える手でボタンを押した。ナンバープレートが切り替わった。なかなかのスグレモノである。むかしマジックに凝っていたときの技術が生きたことに、男は、これから先の計画も成功するのではないかと、期待に胸を膨らませた。


 男は、ルート上の防犯カメラをチェックし、なるべく写りこまない街はずれの道を選んで、目的地に着いた。


 住宅地を少し離れた廃工場のシャッターが男のリモコンで開いた。瞬間、男は周囲を見渡す、手順が僅かに狂ったのである。本来なら、暗視スコープで周囲の安全を確認してから、シャッターを開けるはずだった。やはり、根は小心者、僅かなミスに気が動転するが、周囲の安全が確認できると、深呼吸して、ゆっくりと車をバックで工場に入れ、シャッターを閉めた。


 ウグ(;>∀<)


 友子は、全身でショックを感じたふりをした。シートのリクライニングがいっぱいまでまで倒されたのだ。胸には制服越しに鋭利なものが当てられ、男が全身で覆い被さってくるのを感じた。男の荒い息が聞こえる。友子が後ずさりすると、後部の座席は倒され、畳二畳近くの平たい空間になっていることが分かった。


「いい子だ、大人しくしていたら命までは取らないからな……!」


 胸に当てられた鋭利なものが、制服にくいこんでくる……よし、予定通りだ。


 男の頭には、もう次の自分の成功した様子が、シミュレーション通りに頭を駆けめぐった。


 セーラー服は、女の服で一番脱がせやすい。ファスナー一つと、上下のホックを外せば、バナナの皮を剥くよりもたやすい。そして、その次は……。




「そこまでよ、中野のおじさん」




 それまで恐怖におののき、身を震わせていた女子高生が、ガラリと落ち着き払った声で、まるで、試験時間の終了を告げる教師のように落ち着いた声で、なんと正体まであばいて言ったのである。


「ウ、ウワー!」


 パニックに落ち込んだ中野は、大声をあげ、車から這い出ようとした。


――もう、これじゃ、逆じゃんかよ!――


 友子は、中野の足を掴まえると、後部の二畳足らずのスペースに、引きずりもどした。


「さあ、そろそろヘリウムガスの効き目もなくなったでしょう。あれで声変えられると、笑い堪えるの大変なのよ」


 いよいよ、ジイサンといってもいい隣人・中野のオッサンへの友子の説教が始まった……。




☆彡 主な登場人物


鈴木 友子        30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女

鈴木 一郎        友子の弟で父親

鈴木 春奈        一郎の妻

鈴木  栞        未来からやってきて友子の命を狙う友子の娘

白井 紀香        2年B組 演劇部部長 友子の宿敵

大佛  聡        クラスの委員長

王  梨香        クラスメート

長峰 純子        クラスメート

麻子           クラスメート

妙子           クラスメート 演劇部

水島 昭二        談話室の幽霊 水島結衣との二重人格 バニラエッセンズボーカル

滝川 修         城南大の学生を名乗る退役義体兵士

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